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Theory Seminar: Feature extraction of complex materials: findings from computer simulation and expectation for experiments

Date : Friday, December 4th, 2015 4:00 PM - 5:00 PM Place : Seminar Room 5 (A615), 6th Floor, ISSP Lecturer : Prof. Kazuto Akagi Affiliation : AIMR, Tohoku University Committee Chair : Osamu Sugino (63290)
e-mail: sugino@issp.u-tokyo.ac.jp
Language in Speech : Japanese

分子シミュレーション技術の向上は目覚ましく、密度汎関数法のような第一原理的手法と力場法などの経験的手法とを適宜組み合わせて問題にアプローチすることも珍しくなくなってきた。これにより、系の持っている普遍的な性質の発見、階層を横断した問題の追跡、実験と計算との連携の深化といった、従来手の届きにくかった領域に挑戦する基盤ができつつある。本セミナーでは、このような観点から3つの話題を取り上げて最近の展開を紹介しつつ、これからの材料科学で期待される取り組み方を考えてみたい。
(1)水溶液系の構造とダイナミクスについて
 水溶液は水素結合ネットワークとしての顔を持つが、溶質の種類はもとより、バルク液中や固液界面といった環境に応じてその構造やダイナミクスが大きく変化する。これらは具体系としての個性から来る多様性を示す一方、不均一性の有無や水素イオン分布の偏りなど一般性の高い知見も含んでいることが分かってきた。今回はその根拠となる概念を紹介し、実験的に検証する上での手がかりを議論する。
(2)リチウム空気電池の現状と課題について
 リチウム空気電池は正極として空気中の酸素を、負極として金属リチウムを用いる充電可能な電池であり、Li+O2→Li2O2 という反応式で記述される。トヨタ自動車でもリチウムイオン電池の次の世代の候補として研究が進められているが、充放電回数の向上、エネルギー密度とパワー密度の高度なバランス、水や二酸化炭素といった阻害因子の排除など、実用化に向けて解決すべき課題は多い。第一原理計算と古典分子動力学法を組み合わせた我々の取り組みも含めながら簡単な反応式の裏にある素過程を俯瞰し、困難の所在と物性実験に期待される事柄を議論する。
(3)トポロジカル・データ解析の材料科学への応用について
 このように、一見無秩序で複雑な系から隠れた秩序や素過程を発掘して機能物性と関連付ける作業がこれからの材料科学に求められており、機械学習など情報科学や数理統計によるアプローチはそのような動きを反映したものである。東北大・AIMRでは、同じ文脈で「数学的手法」の応用が探られており、平岡らが構築した「パーシステント・ホモロジー」は原子や画像ピクセルのような離散系に対して埋もれた構造的特徴を抽出できる手法として期待が持たれている。私自身の習熟を兼ねた解析例を示しつつその特長を紹介し、材料科学における実験と分子シミュレーションの連携を深化させるために必要とされる要素を議論する。


(Published on: Tuesday November 24th, 2015)