誤差の影響と補正
低エミッタンスモードに対しては、四極と六極の磁場がもともと弱い為、誤差の影響もとても小さく、従来通りCODのみ補正すればダイナミックアパーチャーは理想的な場合と同程度まで回復する。
極低エミッタンスモードにおいては、補正磁石を用いてCOD、分散関数の歪みを補正し、その後、四極磁石を用いてベータ関数の歪みと周回チューンのずれを補正すれば、ダイナミックアパーチャーは理想的な場合と同程度まで回復する。これは、CODと分散関数の補正によりリングのオプティックスの疑似24回対称性が回復し、ベータ関数を補正することで、長直線部の非線形力に対する透明性が回復した為である。(ベータ関数の測定誤差が1%あっただけでも透明性が十分に回復しない為、現実にベータ関数や透明性そのものを測定する方法が今後の課題である。)
<具体的な補正方法と値の目安>
低エミッタンスモードに関しては特になし。CODのみ普通に補正すれば十分である。(ほとんどの例で最初から六極を入れた状態での補正が可能。)
極低エミッタンスモードに関して
1、最初は六極を切らないと、周期解が求まらない。CODをざっと補正してから六極を入れて、補正を繰り返す。六極を切った状態での補正前のrmsは、CODおよそ数ミリ、数十cmである。
はCODをざっと補正すると一気に小さくなり、すぐに1cm以下になる。六極を入れると数cmまで増加するが、CODを100mm程度まで補正すれば、1〜2cmになる。なお、CODをどう補正しようとも、
はおよそ水平方向1mm、垂直方向1cm以下にはならない。
2、とCODは共に補正磁石を用いて補正を行う。
を補正するとCODが悪化する為、両者を繰り返しながら数回(計算では4回ずつ)行う。CODを50mm程度まで抑えると、
はおよそ水平方向1mm、垂直方向5mmと、ほとんど良くなったように見えない。ところが、
の補正によってOPTICSは劇的な変化を遂げており、
、
ともに完全に1回対称(がちゃがちゃ)だったのが、およそ周期構造(+包絡線)が見えるまで整った状態になる。ダイナミックアパーチャーもおよそ誤差の入れ方に依らないはっきりした形を持つようになる。この段階まででダイナミックアパーチャーは理想的な場合の2/3まで回復する。残り1/3はスリットによって落とされるが、dP/Pの値に対するスリットの有無や広さが誤差に依存する。
3、の測定、補正はともに四極磁石を用いて行う。
を補正してもCOD、
は変化しない。OPTICSの傾向も変化せず、例えば透明チューンのdP/P応答曲線などは平行移動されるだけである。なお、
を補正せずに
だけ補正しようとしても、必ず周期解が失われてうまくいかない。また、
の測定に1%エラーがあっただけでも、透明チューンは十分に回復せず、dP/Pの大きな場所でスリットが残るので、
補正による改善は見られない。さらに、CODと
の補正には条件付き固有値法を用いており、
に対しては、リングの周回チューンを理想的な場合に戻すという束縛を加えている。下の表は以上3ステップの補正後の10種の平均値である。
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X | 5.29801E-05 | 186.48924 | 4.32824 | 51.93043 | 1.13490 |
Y | 1.28427E-04 | 112.53870 | 17.64356 | 38.16364 | 6.46372 |
SOR施設加速器部門