東京大学高輝度光源計画
加速器の概要

挿入光源の影響と補正

IDの影響の定式化

以下は神谷幸秀先生講義録、および田中均先生講義録のほとんど丸写しに過ぎません。

水平偏光

  水平偏光アンジュレーターの磁場は、y 方向の磁場が進行方向 z に対して と変化するとおくと、自動的に

となる。この磁場を運動方程式
に代入して解く。
  ここで、アンジュレーターを偏向磁石の連続だと考えると、であり、磁場は矩形、中心軌道は円弧の連続となる。(この場合、運動方程式も厳密に解ける。) このことを参考にして、粒子の運動を中心軌道(早い正弦状の運動)とその回りの微小振動(遅い振動、ベータトロン振動)に分けて解くことを考える。すなわち、とする。中心軌道として考えるものは、運動方程式の中でに依存する部分のみを取り出した項
を考えればよい。数学的には、逐次近似法であり、試行解が中心軌道、残渣が微小振動である。これを z に露わに依存している部分のみ積分し、中心軌道は

となる。また、中心軌道から発生する分散関数は、より、中心軌道と逆向きの正弦状に存在する。これを運動方程式に代入し、z 方向に対して平均化を行う。垂直方向の運動方程式は、

となり、を用い、1次まで取ることにすれば、結局、以下のベータトロン振動の方程式が得られる。

  線形化するとベータトロン振動の式も分散関数の式も等しくなり、
という式になる。これは、x 方向にはドリフトスペースであり、y 方向には集束力が存在することを示している。従って、転送行列は、
となる。実際の計算においては、偏向磁石のエッジフォーカスを使ってこの効果を出している。すなわち、曲率半径の矩形の磁石を考えると、磁極の内側では、x 方向にの集束力が加わり、両端では x 方向にの発散力が、y 方向にの集束力が加わって、差し引きすると、y 方向のみに集束力が加わり、欲しい効果が得られる。


円偏光

  円偏光アンジュレーターの取り扱いも、同様である。x 方向の磁場を、y 方向の磁場をとおくと、磁場は

となる。同様に運動を中心軌道とベータトロン振動に分けて、
とおく。ただし、ベータトロン振動の部分をとした。また、この場合、中心軌道は螺旋状であり、x、y 両方向に逆向き螺旋の分散関数が存在している。(すなわち、y 方向のエミッタンスがここで生じる。) これらを運動方程式に代入して解くと、ベータトロン振動の部分は、
となる。記号を置き換えて、線形化すると、
となる。これは、とおいて、減衰振動と同じ形の方程式に帰着させて解いて、結局、転送行列は
と書ける。ただし、であり、である。

  また、トラッキングの際はsymplectic条件より、右辺の運動量として転送前後の平均を取る必要があり、

で行うこととなる。ただし、を蹴りの間隔として、である。これを解いて、
となる。


Updated on Wednesday,17,Jan.,2001

SOR施設加速器部門


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