高輝度光源計画の新しい動き

VUV・SX高輝度光源利用者懇談会・会長
太田俊明(東大大理)

 皆さんには長くご報告していませんでしたが、高輝度光源計画に関係したこ の1年の経過と現状についてお知らせします。
 平成9年度には調査費的経費が認められ、高輝度光源計画に弾みがついて一 気にいけるかという望みがありました。しかし,残念ながら、その後情勢は大 きく変わってしまいました。
 まず第1は東京大学内の動向です。柏キャンパスに新研究科(新領域創成科学 研究科)を作る動きが全学的に急ピッチで進められ、これが大学の最優先課題に なったことです。
 第2は、我が国の加速器科学の情勢の変化です。平成9年4月に東大核研の 大部分と高エネルギー物理学研究所とが合併して高エネルギー加速器研究機構 を発足させ、ハドロン計画を強力に推進することになりました。これは総予算 860億円,5カ年計画の巨大プロジェクトですが、高エネルギー加速器研究機構 を中心に高エネルギー物理、中性子、中間子物理のグループが精力的に推し進 めています。
 本高輝度光源計画も総予算380億円、土地4ha,総定員38名という巨大 な計画です。これを全学の付置センターとして概算要求するために学内の協力 をとりまとめることは大変なことでしたが、物性研安岡所長,神谷施設長の粘 り強い努力、そして大学首脳部のご尽力で本計画の平成10年度概算要求を東京 大学からだすところまでこぎつけました。しかし、残念ながら文部省で認めら れるまでは到りませんでした。これには、文部省が財政構造改革によりこれか ら3年間ビッグプロジェクトを凍結するという決断も大きく影響していたこと と思います。
 以上のような状況の変化の中で果たして本計画をそのまま推進することが得 策かどうか学内の主だったメンバーで何度も検討を行いました。本計画は必然 的にハドロン計画との競合を余儀なくされます。そして、もし後回しにされる と8年から10年、高輝度光源を待たねばならないという非常に悲惨な状態にな ってしまいます。そこで、大学首脳部から規模縮小の提案もあり,神谷施設長 の発案で,本計画を第I期と第II期に分けて、第I期に比較的低いエネルギー 領域の高輝度放射光施設の建設計画を進めようということになりました。もち ろん,これまでの計画に比べれば、規模は小さく,必ずしも全ての利用者にと って満足のいくものにはなりません。しかし、これによって少しでも早い実現 の見通しがたつならば、VUV・SX高輝度光源の利用を期待していたメンバー の為に、さらには我が国の放射光科学の発展の為にも良いことのように思われ ます。どうぞ,このような計画変更に対してご理解を頂き,今後ともご支援ご 協力をお願い致します。


index | forward =>