東京大学高輝度光源計画
加速器の概要

条件付固有値法

  当施設の神谷幸秀施設長、中村典雄助教授と佐藤政則博士(予定)が開発した条件付固有値法を紹介する。

<前置>

  リングには BPM (Beam Position Monitor) と補正磁石 (Steering Magnet : STR) が入っている。BPM はビームの走っている場所が管の中央からどれだけずれているか、すなわち、COD を測定する装置であり、STR は小型の偏向磁石である。
  理想的で一切誤差のないリングにおいて、1箇所の STR でビームをちょっと蹴ってやると、リング1周にわたって COD が発生する。その COD は以下のように書ける。

すなわち、周回チューンと STR、BPM の場所の位相差とベータ関数が分かれば、ある STR によってその場所にどれだけ COD が発生するか求まる。従って、実際の場合、BPM の場所の COD をうち消すような COD を発生するように、STR の蹴り角を求めてやればよい。すなわち、
 として、
を解けばよい。

<問題>

  COD 補正とは、を応答行列、を蹴り角ベクトル、をCODベクトルとして、を解くことである。これに束縛条件を付けてみる。なると同じ次元の行列として、束縛条件をと書く。例えば、1番目と3番目の BPM で COD をゼロにしたい場合、

である。

  すなわち、問題は、条件  の下で、 の最小値を求める、ということになる。

<解法>

  ラグランジュの未定常数法を用いる。

とおく。例えば、

であるので、結局、問題は

となる。なお、は"補正磁石の数"次の正方行列である。
 
ここで、とおき、の固有値を、固有ベクトルをとおく。


である。なので、結局、となる。ここで、固有値の大きい順に、利用したい数だけ固有ベクトルを用いて逆行列を作ることとする。

はじめの問題は、を使うと、と書ける。
を束縛条件式に代入して、
とおくと、となり、従って、求める蹴り角は、

となる。これが条件付き固有値法である。


Updated on Friday,19,Jan,2001

SOR施設加速器部門


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