日本から発見された新鉱物たち(一覧) » 電子顕微鏡室/Electron Microscope Section

日本から発見された新鉱物たち(一覧)

 

IMA No./year: オフィシャルリストに掲載されている年に準拠。改訂があるものは「発見年(リストに記載の数字)」としてある。年の後についている「s.p.」は再定義・再命名・再承認などがあったことを意味している。st

IMA Status: 承認の状態。A = approved(IMAが設立された後に承認された鉱物),G = grandfathered(IMA設立以前に発見されており現在でも有効と見なせる鉱物),Rd = redefined(すでに存在していたが規約が改訂された鉱物),Rn = renamed(すでに存在していたが名前が変更された鉱物),Q = questionable(情報が少なくて存在が疑わしい鉱物)。

模式標本: 模式標本の所在および登録番号など。

名前は「和名 / 学名」で掲載。

文献はオフィシャルリストに引用されている論文で、最大二つまで掲載されている。関連論文はレビュー内で引用した。

未申請・未承認・取消しされたものや怪しいものはその他へ移動した。
学名はオフィシャルリストに準拠しているが,和名はなじみのあるものを採用している。
 
一覧表の鉱物をクリックすればそこへ,写真をクリックすれば保存先のFlickrからフルサイズが見られる。

2018/04/10現在139種が日本産の新種として登録されており、その内130種の写真を掲載中。
写真をまず掲載し、レビューを作成中。
ルテニイリドスミン / Rutheniridosmineまでレビュー。

写真の利用はhamane*へお問い合わせください(*@issp.u-tokyo.ac.jp)。
質問などもそこへ。

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1960s以前(27種)

  1. 石川石 / Ishikawaite (1922)
  2. 轟石 / Todorokite (1934)
  3. 阿武隈石 / Britholite-(Y) (1938)
  4. 手稲石 / Teineite (1939)
  5. イットリウム河辺石 / Kobeite-(Y) (1950)
  6. 湯河原沸石 / Yugawaralite (1952)
  7. 亜砒藍鉄鉱 / Parasymplesite (1954)
  8. 大隅石 / Osumilite (1956)
  9. 生野鉱 / Ikunolite (1959)
  10. 人形石 / Ningyoite (1959)
  11. 尾去沢石 / Osarizawaite (1961)
  12. 吉村石 / Yoshimuraite (1961)
  13. 芋子石 / Imogolite (1962)
  14. 赤金鉱 / Akaganeite (1962-004)
  15. 園石 / Sonolite (1963)
  16. 神保石 / Jimboite (1963-002)
  17. 原田石 / Haradaite (1963-011)
  18. 櫻井鉱 / Sakuraiite (1963-017)
  19. 萬次郎鉱 / Manjiroite (1966-009)
  20. 福地鉱 / Fukuchilite (1967-009)
  21. イットリウム飯盛石 / Iimoriite-(Y) (1967)
  22. 灰エリオン沸石 / Erionite-Ca (1967)
  23. 褐錫鉱 / Stannoidite (1968-004a)
  24. 河津鉱 / Kawazulite (1968-014)
  25. 神津閃石 / Mangano-ferri-eckermannite (1968-028)
  26. 阿仁鉱 / Anilite (1968-030)
  27. 若林鉱 / Wakabayashilite (1969-024)
1970s(25種)

  1. 高根鉱 / Takanelite (1970-034)
  2. 南部石 / Nambulite (1971-032)
  3. ルテニイリドスミン / Rutheniridosmine (1973s.p.)
  4. 木下雲母 / Kinoshitalite (1973-011)
  5. 備中石 / Bicchulite (1973-066)
  6. ソーダレビ沸石 / Lévyne-Na (1974)
  7. 都茂鉱 / Tsumoite (1974-010a)
  8. 自然ルテニウム / Ruthenium (1974-013)
  9. 青海石 / Ohmilite (1974-031)
  10. 益富雲母 / Masutomilite (1974-046)
  11. 磐城鉱 / Iwakiite (1974-049)
  12. 杉石 / Sugilite (1974-060)
  13. 神岡鉱 / Kamiokite (1975-003)
  14. 布賀石 / Fukalite (1976-003)
  15. 三原鉱 / Miharaite (1976-012)
  16. 中宇利石 / Nakauriite (1976-016)
  17. ソーダフッ素魚眼石 / Fluorapophyllite-(Na) (1976-032)
  18. 上国石 / Jôkokuite (1976-045)
  19. 単斜灰プチロル沸石 / Clinoptilolite-Ca (1977)
  20. 加納輝石 / Kanoite (1977-020)
  21. 種山石 / Taneyamalite (1977-042)
  22. 長島石 / Nagashimalite (1977-045)
  23. 鈴木石 / Suzukiite (1978-005)
  24. 古遠部鉱 / Furutobeite (1978-040)
  25. 欽一石 / Kinichilite (1979-031)
  26. _

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1980s(20種)

  1. 奴奈川石 / Strontio-orthojoaquinite (1979-081a)
  2. マンガノパンペリー石 / Pumpellyite-(Mn) (1980-006)
  3. カリフェロ定永閃石 / Potassic-ferro-sadanagaite (1980-027)
  4. 釜石石 / Kamaishilite (1980-052)
  5. 大江石 / Oyelite (1980-103)
  6. 砥部雲母 / Tobelite (1981-021)
  7. ソーダ南部石 / Natoronambulite (1981-034)
  8. 逸見石 / Henmilite (1981-050)
  9. 片山石 / Katayamalite (1982-004)
  10. カリ定永閃石 / Potassic-sadanagaite (1982-102)
  11. ストロナルシス石 / Stronalsite (1983-016)
  12. アンモニオ白榴石 / Ammonioeucite (1984-015)
  13. 滋賀石 / Shigaite (1984-057)
  14. イットリウム木村石 / Kimuraite-(Y) (1984-073)
  15. オホーツク石 / Okhotskite (1985-010)
  16. ペトラック鉱 / Petrukite (1985-052)
  17. プロトフェロ直閃石 / Proto-ferro-anthophyllite (1986-006)
  18. プロトフェロ末野閃石 / Proto-ferro-suenoite (1986-007)
  19. 和田石 / Wadalite (1987-045)
  20. 豊羽鉱 / Toyohaite (1989-007)
1990s(16種)

  1. 単斜トベルモリ石 / Clinotobermorite (1990-005)
  2. 渡辺鉱 / Watanabeite (1991-025)
  3. 三笠石 / Mikasaite (1992-015)
  4. 森本石榴石 / Morimotoite (1992-017)
  5. 草地鉱 / Kusachiite (1992-024)
  6. 武田石 / Takedaite (1993-049)
  7. パラシベリア石 / Parasibirskite (1996-051)
  8. 岡山石 / Okayamalite (1997-002)
  9. 津軽鉱 / Tsugaruite (1997-010)
  10. 苦土フォイト電気石 / Magnesio-foitite (1998-037)
  11. 糸魚川石 / Itoigawaite (1998-039)
  12. 蓮華石 / Rengeite (1998-055)
  13. ネオジウム弘三石 / Kozoite-(Nd) (1998-063)
  14. 多摩石 / Tamaite (1999-011)
  15. 大峰石 / Ominelite (1999-025)
  16. パラ輝砒鉱 / Pararsenolamprite (1999-047)
  17. _
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2000s(25種)

  1. 松原石 / Matsubaraite (2000-027)
  2. わたつみ石 / Watatsumiite (2001-043)
  3. 白水雲母 / Shirozulite (2001-045)
  4. カリフェリリーク閃石 / Potassic-ferri-leakeite (2001-049)
  5. 新潟石 / Niigataite (2001-055)
  6. プロト直閃石 / Proto-anthophyllite (2001-065)
  7. 定永閃石 / Sadanagaite (2002-051)
  8. ランタン弘三石 / Kozoite-(La) (2002-054)
  9. 東京石 / Tokyoite (2003-036)
  10. イットリウム岩代石 / Iwashiroite-(Y) (2003-053)
  11. セリウムヒンガン石 / Hingganite-(Ce) (2004-004)
  12. ソーダ金雲母 / Aspidolite (2004-049)
  13. 苣木鉱 / Sugakiite (2005-033)
  14. 沼野石 / Numanoite (2005-050)
  15. セリウム上田石 / Uedaite-(Ce) (2006-022)
  16. 大阪石 / Osakaite (2006-049)
  17. ストロンチウム緑簾石 / Epidote-(Sr) (2006-055)
  18. 宗像石 / Munakataite (2007-012)
  19. 田野畑石 / Tanohataite (2007-019)
  20. 幌満鉱 / Horomanite (2007-037)
  21. 様似鉱 / Samaniite (2007-038)
  22. カリフェロパーガス閃石 / Potassic-ferro-pargasite (2007-053)
  23. ネオジムウェークフィールド石 / Wakefieldite-(Nd) (2008-031)
  24. 千葉石 / Chibaite (2008-067)
  25. 桃井石榴石 / Momoiite (2009-026)
2010s(26種)

  1. 島崎石 / Shimazakiite (2010-085a)
  2. 亜鉛ビーバー石 / Beaverite-(Zn) (2010-086)
  3. 愛媛閃石 / Chromio-pargasite (2011-023)
  4. イットリウム肥前石 / Hizenite-(Y) (2011-030)
  5. イットリウムラブドフェン / Rhabdophane-(Y) (2011-031)
  6. 宮久石 / Miyahisaite (2011-043)
  7. イットリウム高縄石 /Takanawaite-(Y) (2011-099)
  8. イットリウム苦土ローランド石 / Magnesiorowlandite-(Y) (2012-010)
  9. 伊勢鉱 / Iseite (2012-020)
  10. 箕面石 / Minohlite (2012-035)
  11. ランタンバナジウム褐簾石 / Vanadoallanite-(La) (2012-095)
  12. 足立電気石 / Adachiite (2012-101)
  13. 岩手石 / Iwateite (2013-034)
  14. 今吉石 / Imayoshiite (2013-069)
  15. ランタンフェリ赤坂石 / Ferriakasakaite-(La) (2013-126)
  16. ランタンフェリアンドロス石 / Ferriandorosite-(La) (2013-127)
  17. 伊予石 / Iyoite (2013-130)
  18. 三崎石 / Misakiite (2013-131)
  19. イットリウム三重石 / Mieite-(Y) (2014-020)
  20. 房総石 / Bosoite (2014-023)
  21. 豊石 / Bunnoite (2014-054)
  22. 阿武石 / Abuite (2014-084)
  23. 神南石 / Kannanite (2015-100)
  24. 村上石 / Murakamiite (2016-066)
  25. 金水銀鉱 / Aurihydrargyrumite (2017-003)
  26. ランタンピータース石 / Petersite-(La) (2017-089)
  27. _
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2020s

  1. xx
  2. xx

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IMA No./year: 1922
IMA Status: G(grandfathered)
模式標本:不明

石川石 / Ishikawaite

(U,Fe,Y)NbO4

模式地:磐城國(現:福島県) 石川郡 石川町 外牧 観音山・大橋川

第一文献:Shibata Y., Kimura K. (1922) Ishikawaite, a new mineral from Ishikawa, Iwaki province. Journal of the Chemical Society of Japan, 43, 648-649.

第二文献:Hanson S.L., Simmons W.B., Falster A.U., Foord E.E., Lichte F.E. (1999) Proposed nomenclature for samarskite-group minerals: new data on ishikawaite and calciosamarskite. Mineralogical Magazine, 63, 27-36.

石川石 Ishikawaite
福島県石川町和久

帝国大学(現:東京大学)の柴田雄次、木村健二郎によって1922年(大正11年)に磐城国(現:福島県)の石川町から報告された新鉱物で、模式地は石川町外牧観音山および大橋川。観音山のものはペグマタイト中から、大橋川のものは砂鉱から得られたとされる。当初は結晶外形が不定形で測角できるほどの標本では無かったため化学組成だけが先に報告されており[1]、ウランの含有量が顕著なことから新鉱物であることが期待されつつもそのときはあくまで予報にとどまっていた。その後に新たな標本を得てその結晶外形の新規性から新鉱物であることが明らかとなった[2]。原著論文には名前を決める際には神保小虎に相談し、小虎の勧めで産地の名前を取って「石川石」とすることが決まった。1923年にはAmerican Mineralogist誌に新鉱物として紹介されている[3]。

その一方で結晶構造に関するデータは長らく取得されないままで、既存のサマルスキー石と関連して独立性が議論されてきた。石川石のようにウランやトリウムを多量に含む初生の鉱物はメタミクト(非晶質)で産出しそのままでは構造データが取得できないことも議論が長引く一因となっている。そして1999年になって石川石の再記載の論文が登場する[4]。Hansonらは石川石とカルシオサマルスキー石を確たるものにしようと、タイプ標本を手に入れて近代的な手法(EPMA分析とXRD測定)で化学組成と格子定数(加熱後)の測定を行った。結果的に石川石はサマルスキー石族のウラン卓越体であることが再認識され、その結果を受けて改めてAmerican Mineralogistで新鉱物として紹介されている[5]。

ひとまずはこのように収まっているが、実はサマルスキー石族は結晶構造がまだ明らかとなっていない。石川石は結晶構造だけでなく化学組成式にも電荷バランスが整合していないという問題もはらんでおり、承認が変更される可能性も否定はできない。それでも現時点(2018年)のオフィシャルリストから判断して、ここでは石川石が日本産第一号の新鉱物として扱っている。また石川石論文の著者の一人・木村健二郎は後に「木村石 / Kimuraite」として鉱物にその名を残すことになる。

写真の標本は和久のペグマタイトから得られたとされる。分析では化学式にあるとおりウランが卓越するニオブ酸塩であることは確認できたが、メタミクトの影響から合計重量%は理想より低かった。また石川石の外形は板状であることが知られ、写真の標本も四角柱状から厚みのある板状となっている。

[1] 柴田・木村 (1922) 日本化学会誌,43, 306-312.
[2] 第一文献
[3] Wherry (1923) American Mineralogist, 8, 230-231.
[4] 第二文献
[5] Jambor & Roberts (1999) American Mineralogist, 84, 1464-1468.

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IMA No./year: 1934(1962s.p.)
IMA Status: A (approved)
模式標本:Harvard University, Cambridge, Massachusetts, 106214; National Museum of Natural History, Washington, D.C., USA (Hand book of Mineralogyから引用)

轟石 / Todorokite

(Na,Ca,K,Ba,Sr)1-x(Mn,Mg,Al)6O12·3-4H2O

模式地:北海道 轟鉱山

第一文献:Yoshimura T. (1934) “Todorokite”, a new manganese mineral from the Todoroki mine, Hokkaido, Japan. Journal of the Faculty of Science, Hokkaido Imperial University, Series IV, Geology and Mineralogy, 2, 289-297.

第二文献:Post J.E., Heaney P.J., Hanson J. (2003) Synchrotron X-ray diffraction study of the structure and dehydration behavior of todorokite. American Mineralogist, 88, 142-150.

轟石 Todorokite
青森県 丸山鉱山

北海道大学の吉村豊文によって1934年(昭和9年)に報告された新鉱物で、北海道轟鉱山が模式地となっている。学名は発見地にちなむ。轟石はマンガンを主成分とする新鉱物であるが、轟鉱山はマンガンを主体に採掘していた鉱山ではなく、金・銀を採掘していた。そして、秀逸と名付けられた石英脈に高品位のマンガン鉱が伴われ、その黒いマンガン鉱に興味を抱いた吉村豊文が轟鉱山を訪問し、試料を得て発見した新鉱物が轟石であった[1]。

電子線分析装置とX線回折装置が普及する以前、鉱物の分析はしばしば困難であった。そのため同定が不完全でありながらも論文が提出され、同じ鉱物ながらも別の名前を付けられるということがよくあった。轟石も例外ではない。1958年にキューバ産の新鉱物として報告されたDelatorreiteという鉱物があり[2]、それは後に轟石と同一であることが指摘されていた[3]。こういう場合はより早い方に名前の優先権が認められる。1958年にIMAが設立され、それまでの新鉱物として報告されていた鉱物の洗い直しが行われ、1962年にその結果が報告された[4]。その報告の中に有効な鉱物種として轟石が記され、轟石は日本産新鉱物の地位を改めて認識されることになった。そういった経緯によりオフィシャルリストでは発見年が(1962s.p.)として記録されている。轟石の結晶構造が解明されるのはずっと後年のことで、その論文が第二文献としてオフィシャルリストに挙げられている[5]。
 
写真は青森県丸山鉱山から得られた標本となる。轟石の標本は土状~繊維状の集合体となる場合が多い。また本鉱は海底の堆積物からも報告され、マンガンノジュールの主要構成鉱物であることが知られている。また本鉱を記載した吉村豊文は後に「吉村石 / Yohimuraite」として新鉱物にその名を残すことになる。

[1] 第一文献
[2] Simon&Straczek (1958) U.S. Geol. Surv. Bull. 1057.
[3] Frondel et al. (1960), American Mineralogist, 45, 1167.
[4] International Mineralogical Association (1962) Mineralogical Magazine, 33, 260-263.
[5] 第二文献

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IMA No./year: 1938(1966s.p.)
IMA Status: Rn (renamed)
模式標本:不明

阿武隈石 / Britholite-(Y)(原記載では阿武隈石/Abukumalite)

(Y,Ca)5(SiO4)3(OH)

模式地:福島県 石川村(当時)

第一文献:Hata S. (1938) Abukumalite, a new yttrium mineral. Scientific Papers of the Institute of Physical and Chemical Research, 34, 1018-1023.

第二文献:Noe D.C., Hughes J.M., Mariano A.N., Drexler J.W., Kato A. (1993) The crystal structure of monoclinic britholite-(Ce) and britholite-(Y). Zeitschrift für Kristallographie, 206, 233-246.

阿武隈石 Britholite-Y
福島県水晶山

理化学研究所の畑晋に福島県石川村(当時)のペグマタイト岩脈から発見された新鉱物で、名前と諸性質が記載された[1]。論文では化学組成分析によってイットリウム(Y)が主体のケイ酸塩であることが明かとなり、X線回折で得られた軸率なども総合した考察が行われている。結論としてBritholite(後にBritholite-Ceとなる)に似ているが阿武隈石はYに富むことが相違点となるという記述がある。この記載論文は単名で書かれているものの試料採集や分析には幾人かの協力があったようで、名前は理化学研究所の飯盛里安が提案したことが記されている。阿武隈地域からの産出を理由として、阿武隈石 / Abukumaliteと名付けられた。後年、畑晋は阿武隈石の発見の業績により櫻井賞の第6号メダルを受賞することになる。

 希土類元素を含む鉱物の名前については「ルートネーム-(REE)」としましょうというルールが1966年に制定された[2]。それを受けて阿武隈石の名前は再検討されることになる。阿武隈石はそれより先に発見されていたBritholite(Ceタイプ)と比べて、Yを主成分とする点のみが異なることから、ルートネームをBritholiteに譲ることになり「Britholite-(Y)」と改名される。そのため、Abukumaliteの名前はオフィシャルリストからは消えてしまい、その経緯はリストには載らない。ただ日本においては和名で教科書を作るという文化があるので、せめて和名としては阿武隈石を使い続ければ良いだろう。

1993年に阿武隈石は燐灰石族の一員であることが報告された[3]。その研究に使われた試料は福島県水晶山から産したもので、国立科学博物館から提供されている。ただしこの論文は別の問題をはらんでいた。この論文中で使用された試料の化学組成はいずれもフッ素(F)が卓越していた。ところが、そもそものbritholite-(Ce)および(Y)は水酸基(OH)が卓越している鉱物である。すなわち、この論文中で使用された試料は、フッ素卓越の新種として記載されるべきものである。そんな指摘がすでにあるのだが[4]、この問題はそのままになっている。

 写真は福島県水晶山から産出したもので恵与していただいた。FかOHかは不問にすると、分析でYが卓越する燐灰石族であることが確認できた。

[1] 第一文献
[2] Levinson (1966) American Mineralogist, 51, 152.
[3] 第二文献
[4] Jambor et al. (1994) American Mineralogist, 79, 570

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IMA No./year: 1939
IMA Status: G (grandfathered)
模式標本:北海道大学博物館; Harvard University, Cambridge, Massachusetts, USA, 94749.(Handbook of Mineralogyから引用)

手稲石 / Teineite

Cu2+Te4+O3·2H2O

模式地:北海道 手稲鉱山

第一文献:Yosimura T. (1939) Teineite, a new tellurate mineral from the Teine mine, Hokkaidō, Japan. Journal of the Faculty of Science, Hokkaido Imperial University, Series IV, Geology and Mineralogy, 465-470.

第二文献:Effenberger H. (1977) Verfeinerung der kristallstruktur von synthetischem teineit CuTeO3•2H2O. Tschermaks Mineralogische und Petrographische Mitteilungen, 24, 287-298.

手稲石 Teineite
手稲石 Teineite
和歌山県 岩出市 山崎

北海道大学の吉村豊文により報告された新鉱物で、北海道手稲鉱山から発見された[1]。最初の標本は北海道大学の原田準平により瀧之澤という鉱脈から得られた。後に手稲石となるその標本は、吉村がかつて宮崎県土呂久鉱山から報告したカレドニア石に似ていたことから、それと比定するために研究が開始された。そして早々にその光学的特徴はカレドニア石とは異なることが判明し、新鉱物の可能性が出てくる。後に量が確保できて組成分析を行えるようになると、やはりカレドニア石とは全く異なる新鉱物であることが明らかとなる。産地の名前を取って手稲石と命名された。論文は単名で発表されているが、試料採集に関しては北大の渡辺武男や手稲鉱山の技師たちの貢献が大きい。吉村豊文はこの手稲石の業績で櫻井賞の第4号メダルを受賞した。化学組成はその後に改訂されることになり、1977年に現在の化学組成になることおよび結晶構造の詳細が確定した[2]。

吉村は後に九州大学に移り、数々の新鉱物を発表することになる。しかしながら、吉村が筆頭で発表する新鉱物は轟石とこの手稲石を除き、残念ながらことごとくが現在は認められていない。当時は二成分系の中間にも名前を付ける慣習があり、吉村の名付けた新鉱物はそういったものであった。現在では二成分系の中間は種をまたぐ境界線として機能し、中間組成に名前がつく場合はそこで構造が変化する場合に限られる。例えばオンファス輝石は透輝石とヒスイ輝石の中間的な化学組成だが、結晶構造が異なるのでオンファス輝石は独立種の立場となっている。

 日本における手稲石の産地は他に静岡県河津鉱山と和歌山県岩出市山崎が知られる[3, 4]。写真は和歌山県岩出市山崎から産した標本となる。模式地や河津鉱山の標本と比べるとやや淡い色合いを示す。多くは皮膜状であるが一部に結晶が認められる。私も北大にいた頃に模式地標本を手に入れようと試みた。現地には手稲石かと思える青い鉱物が見いだされるものの、持ち帰り分析するとそれはすべてが胆礬であった。

[1] 第一文献
[2] 第二文献
[3] Kato and Sakurai (1968) Mineralogical Journal, 5, 285.
[4] 藤原ら (2002) 日本鉱物学会講演要旨,34.

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IMA No./year: 1950(1987s.p.)
IMA Status: A (approved)
模式標本:不明

イットリウム河辺石 / Kobeite-(Y)

(Y,U)(Ti,Nb)2(O,OH)6(?)

模式地:京都府 中郡 河邊村 白石

第一文献:田久保實太郎,鵜飼保郎,港種雄(1950)含稀元素鉱物の研究(其の11)京都府中郡河邊村白石産河邊石. 地質学雑誌, 56, 509-513.

第二文献:Masutomi K., Nagashima K., Kato A. (1961) Kobeite from the Ushio mine, Kyoto Prefecture, Japan and re-examination of kobeite. Mineralogical Journal, 3, 139-147.

イットリウム河辺石 Kobeite-(Y)
宮崎県 大崩山 高千穂珪石鉱山

京都大学の田久保實太郎らによって、京都府中郡河邊村白石のペグマタイトから見いだされた[1]。河辺石を伴うペグマタイトは昭和18年3月からおおよそ1年間でガラス原料として石英を目的に採掘された。河辺石はイットリウム(Y)やニオブ(Nb)、タンタル(Ta)に富むという特徴を持っている。論文からはXZ2O6型の化学組成に近似すると(Y,Ca,U)(Ti,Nb+Ta)2(O,OH)となることが読み取れる。ただし、この化学組成はオフィシャルリストにも「?」がつけられているなど、確定ではない。また、結晶構造としてはユークセン石との関連を示唆している。実体として河辺石はアモルファス状態で産出し、これは著量に含有するウラン(U)による放射線損傷で構造が破壊されていることに起因している(メタミクト)。このような場合は加熱により構造回復を試みることが通常となっており、彼らも試したようだが、900℃30分程度の加熱では顕著な結晶化が検出されなかった旨が記述されている。しかしながら、化学組成上の特徴により新鉱物として主張された。学名は発見地に因んでいる。

再検討は1961年に日本人の手によって行われる。著者全員が後に新鉱物に名前を残すことになる益富壽之助・長島乙吉・加藤昭によって、河辺石の加熱再結晶実験と粉末X線回折実験が行われた[2]。900℃1時間加熱で試料はX線回折ピークを示すようになり、得られた結果は等軸晶系と解釈されるものであった。ただ、この論文では河辺石の構造などについては明言されず、zirkeliteやzirconoliteとの関連が示唆されるにとどまる。
 Zirkeliteやzirconoliteは分類がやっかいな鉱物であり、命名規約は存在しているものの[3]、それらの分類は不完全である。これらの二種はほとんど結晶系だけの違いで分類され、同じ化学組成でも等軸晶系ならば前者、それ以外なら後者となる。そして後者のzirconoliteには多形が様々あり一筋縄ではない。また、zirkeliteの等軸晶系の対称性は試薬を混ぜて焼いた合成物では出現せず、鉱物を焼いて等軸晶系を示した(とされる)試料においても構造は解かれていない。

河辺石は化学組成・結晶構造ともに確たるものがない状態であると客観的に見なせる。しかし、これまで特にその存在を否定するような論文は出ておらず、1987年にはKobeite→Kobeite-(Y)としましょうというアナウンスがあった程度である[4]。最近になって河辺石についてzirconolite-3Oに近いX線回折パターンが得られたという報告があがってきた[5,6]。化学組成についてもzirconoliteと同様にO=7で構造式が書けるようだ。いずれにせよ河辺石の化学組成・結晶構造はいずれも更新されるべきであろう。研究が進展し河辺石のNew Dataが確立されることを期待する。

写真は宮崎県大崩山高千穂珪石鉱山から産したものとなる。この産地ではハロを持たない産状が特徴的ではあるが、ウランやトリウムの含有量は模式地のものと大差なかった。

[1] 第一文献
[2] 第二文献
[3] Bayliss et al.(1989) Mineralogical Magazine, 53, 565.
[4] Nickel&Mandarino (1987) American Mineralogist, 72, 1031.
[5] 藤井&上原 (2011) 日本鉱物科学会講演要旨集,R1-P13.
[6] 福本&皆川 (2012) 日本鉱物科学会講演要旨集,R1-06.

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IMA No./year: 1952(1997s.p.)
IMA Status: A (approved)
模式標本:国立科学博物館; National School of Mines, Paris, France; National Museum of Natural History, Washington, D.C., USA, 106164, 106931.(Handbook of Mineralogyから引用)

湯河原沸石 / Yugawaralite

Ca(Si6Al2)O16·4H2O

模式地:神奈川県 湯河原町 不動ノ滝

第一文献:Sakurai K., Hayashi A. (1952) “Yugawaralite”, a new zeolite, Science Reports of the Yokohama National University, 1, 69-77.

第二文献:Kvick Å., Artioli G., Smith J.V. (1986) Neutron diffraction study of the zeolite yugawaralite at 13 K. Zeitschrift für Kristallographie, 174, 265-281.

湯河原沸石 Yugawaralite
岩手県 雫石町 葛根田

櫻井欽一と林瑛により神奈川県の湯河原温泉、不動ノ滝から見いだされた[1]。櫻井が試料を採集したのは1930年(昭和5年)であり、産出した結晶は比較的大柄であった。そのため諸々の性質を測定できたことが論文からは覗える。そのときすでに既存の沸石種とはことなることに気づいていたようだが、研究が進展したのは戦後であった。戦後間もない1948年(昭和23年)になり横浜国立大の林瑛の協力を得てこの見慣れない沸石の研究が始まっている。鉱物名は産地の名前から採用された。和名では沸石族は名前+沸石とする慣習があり、本鉱の和名は湯河原沸石となる。湯河原沸石は現時点(2018年)で神奈川県産としては唯一の新鉱物である。

 湯河原沸石の結晶構造が完全に解かれるまでには何段階かのステップがあったが、最終的に構造がすべて解かれるのは1969年であり、化学組成の改訂も提案されて今の組成式に収まる[2]。また中性子回折実験によってシリコン(Si)とアルミニウム(Al)が構造中で完全に別の席に収まっていることが確かめられた[3]。これがオフィシャルリストに引用されている第二文献となっている。

オフィシャルリストに掲載されている年代は1997s.p.となっている。これは1997年の沸石族命名規約の改訂があったことに由来する[4]。沸石族はNa、K、Ca、Sr、Baなどアルカリ金属元素を含む場合が多いので、同じ結晶構造でこれらの元素が異なるだけの場合にはサフィックス(接尾辞)としましょう、という内容が改訂の趣旨である。たとえば束沸石だと、ナトリウムがもっとも多い種はナトリウム束沸石 / Stilbite-Na、 カルシウムだとカルシウム束沸石 / Stilbite-Caなどとなる。湯河原沸石の場合はどうかというと、Ca種ではあるがこれまでの研究からNaやKなどは構造中にほとんど入らないことが明らかとなっている。そのためにサフィックスは付けずに単にYugawaraliteが学名となっている。

櫻井欽一は家業(神田の老舗の鳥鍋屋「ぼたん」)を切り盛りするかたわらで鉱物学を修め、この湯河原沸石の業績で東京大学から理学博士を取得した。そして、櫻井欽一の還暦を記念して、新鉱物の発見に貢献した研究者をたたえる櫻井賞が1973年に設立された。櫻井欽一はこの湯河原沸石の業績で第一号の受賞者となった。

湯河原沸石は模式地での採集はもはや望めないが国内にはいくつか産地が知られており、大柄なものは静岡県の大洞林道から産したようだ。写真は岩手県雫石町葛根田からのものとなる。

[1] 第一文献
[2] Leimer and Slaughter (1969) The determination and refinement of the crystal structure of yugawaralite. Zeitschrift für Kristallographie, 130, 88-111
[3] 第二文献
[4] Coombs et al. (1997) Recommended nomenclature for zeolite minerals: report of the Subcommittee on Zeolites of the International Mineralogical Association, Commission on New Minerals and Mineral Names. The Canadian Mineralogist, 35, 1571-1606.

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IMA No./year: 1954
IMA Status: G (grandfathered)
模式標本:国立科学博物館 M24052(Handbook of Mineralogyから引用)

亜砒藍鉄鉱 / Parasymplesite

Fe2+3(AsO4)2·8H2O

模式地:大分県 木浦鉱山

第一文献:Ito T., Minato H., Sakurai K. (1954) Parasymplesite, a new mineral polymorphous with symplesite. Proceedings of the Japan Academy, 30, 318-324.

第二文献: Cesbron F., Sichère M.C., Vachey H. (1977) Propriétés cristallographiques et comportment thermique des termes de la série koettigite–parasymplésite. Bull. Minéral., 100, 310–314 (in French with English abs.).

亜砒藍鉄鉱 Parasymplesite
亜砒藍鉄鉱 Parasymplesite
模式地標本

東京大学の伊藤貞一らにより発見された大分県木浦鉱山からの新鉱物で、その記載論文は1954年(昭和29年)に公表された[1]。一方で亜砒藍鉄鉱は記載論文に先立ち、別の形で文献に登場している[2]。

東京大学の森と伊藤は、栃木県足尾銅山産の藍鉄鉱 / Vivianiteと大分県木浦鉱山からの砒藍鉄鉱 / Symplesiteの結晶構造を解くことに世界で初めて成功したと、1950年に報告した[2]。藍鉄鉱はリン(P)を主成分とし、砒藍鉄鉱はヒ素(As)を主成分としている。両者の違いはこのように化学組成的なものだけであり、結晶構造はどちらも共通という結果であった。ところがこの結果は以前の報告と相容れなかった。実は砒藍鉄鉱は三斜晶系であることがすでに知られていたのである[3]。すなわち、森と伊藤の分析した木浦鉱山の砒藍鉄鉱というのは、通常の砒藍鉄鉱とは結晶構造の異なる別の種ということを意味していた。

そして伊藤らは原産地の砒藍鉄鉱を取り寄せ、それと木浦鉱山産の砒藍鉄鉱と比較研究を行った[1]。そして原産地の砒藍鉄鉱は従来の報告通り三斜晶系で、木浦鉱山産の単斜晶系とやはり異なっていた。この比較研究により、木浦鉱山産の標本は砒藍鉄鉱と化学組成が同一ながらも結晶構造が異なる別種ということが明らかとなった。

伊藤らは木浦鉱山産の新鉱物に「para」の接頭語を当てた。それは日本語では「亜」に該当する。そして砒藍鉄鉱 / Symplesiteにそれを加えて、木浦鉱山産新鉱物は亜砒藍鉄鉱 / parasymplesiteという名前になった。

写真はいずれも模式地の木浦鉱山から産した亜砒藍鉄鉱の標本となる。この鉱物は時間が経過すると鉄分の酸化により色がくすむため新鮮な状態の保存が難しい。写真の標本は残念ながら本来の色ではないが、下の写真が比較的新鮮な時期に撮影した色となる。とある個人の所蔵標本では割り出してすぐの標本をほっかいろと共にパックしていた。ほっかいろが酸素を吸って試料の酸化が防がれる。その標本は本来の透き通った淡緑色が保たれていた。

[1] 第一文献
[2] Mori, Ito (1950) The structure of vivianite and symplesite. Acta Crystallographica, 3, 1-6.
[3] Wolf (1940) Classification of minerals of the type A3(XO4)2·nH2O. American Mineralogist, 25, 738.

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IMA No./year: 1956
IMA Status: G (grandfathered)
模式標本:Harvard University, Cambridge, Massachusetts, USA, 104744(Handbook of Mineralogyから引用)

大隅石 / Osumilite

KFe2+2(Al5Si10)O30

模式地:鹿児島県 垂水市 咲花平(さっかびら)

第一文献:Miyashiro A. (1956) Osumilite, a new silicate mineral, and its crystal structure. American Mineralogist, 41, 104-116.

第二文献: Armbruster T., Oberhänsli R. (1988) Crystal chemistry of double-ring silicates: structural, chemical, and optical variation in osumilites. American Mineralogist, 73, 585-594.

大隅石 Osumilite
大隅石 模式地標本

菫青石 Cordierite
菫青石 宮城県本砂金

 東京大学の都城秋穂によって発見された新鉱物で、American Mineralogist紙に記載論文が発表された[1]。大隅石が新種として発表されたのは1956年になるが、この鉱物そのものの発見と研究が始まったのは時を少しさかのぼる。

桜島と大隅半島が陸続きとなっているあたりは高台となっており、咲花平(さっかびら)と呼ばれる。大隅石はその高台に産出する。これを最初に見いだしたのは益富壽之助と伝わっており、その記述は1948年に公表された森本良平の論文中に見て取れる[2]。遅くとも1942年の11月には標本が益富から森本へ渡っていることが記されていた。森本は和文論文も残しているのだが[3]、いずれの論文においても「菫青石 / Cordierite」として発表している。論文は化学組成分析も行い菫青石には含まれることのないカリウム(K)が検出されており、さらには「ほとんど光学的一軸性の特徴を持つものがある」という記述が認められ、菫青石の光学的二軸性という特徴とは異なることにすでに気付いている。彼らがこれらを重視して研究を続けていたらこの新鉱物が生まれるのはもう少し早かったかもしれない。

東京大学の都城はこの一軸性光学特徴をもつ菫青石に注目し、1951年にはく新種ということが判明している[4]。この論文の謝辞には森本らから助言をもらったことや試料を受け取った旨の記述がある。続いて発表された記載論文[1]では構造解析に主眼が置かれ、産状は前述の森本らの研究を引用する形で記述されている。また都城は他産地のいわゆる菫青石のいくつかは大隅石であろうと予測している。名前は大隅地域からの産出をもとに東京大学の久野久が提案した。

後に結晶構造の再検討が行われ、結晶構造および化学式が現在のように改められる[5, 6]。このときの研究で使用された試料には鉄(Fe)側の端成分とマグネシウム(Mg)側の端成分の両方の試料があったが、それらは特に区別されていない。それでも彼らが分析した咲花平からの試料は鉄端成分であったため、大隅石とは鉄端成分の鉱物ということになった。ただし、都城の分析値だとマグネシウム端成分となることを注釈しておく。

いつしかマグネシウム端成分は苦土大隅石 / Osumilite-(Mg)と呼ばれることになった。その初出は1973年だろう。アイルランド産の大隅石がOsumilite-(K、Mg)と記述した例がある[7]。日本だと大分県万年山からの大隅石に対し、「マグネシウム大隅石と呼んだ方が合理的」と記述があったりもする[8]。そしていつのまにかIMAのオフィシャルリストにOsumilite-(Mg)が登場することとなる。ただし、それには明確な文献が提示されていなかった。

ロシアの研究チームはそこに注目した。彼らは苦土大隅石には正式な記載論文が無いことを理由にしてドイツ産のものを改めてOsumilite-(Mg)(IMA-No.2011-083)として申請を行い、承認を得た。これはしてやられたというべきだろう。苦土大隅石の記載論文は2012年に公表された[9]。

写真は模式地の大隅石(一枚目)および宮城県本砂金から産した菫青石(二枚目)となる。分析手段が発達していない時代にこれらの鉱物が混同されたのは致し方ない。それくらい両者は似ている。益富壽之助がだれよりも早くにこれらが同一ではないと気づいたという逸話が愛石家らに伝わっている。ただ標本を受け取った森本は菫青石として発表しているので、たどり得る学術文献ではその詳細はよくわからない。益富の貢献については地学研究にその記述があるということを聞いたことがあるがまだ探せてない。いずれにしても益富の産地発見がこの大隅石の誕生の端緒となっていることは確かで、益富は大隅石で櫻井賞の第3号メダルを受賞している。

[1] 第一文献
[2] Morimoto (1948) On the Modes of Occurrence of Cordierite from Sakkabira, Town Taru-mizu, Kimo-tsuki Province, Kagoshima Prefecture, Japan. Bulletin of the Earthquake Research Institute, 25, 33-35.
[3] 森本,湊 (1949) 鹿皃島縣肝屬郡垂水町早崎咲花平産菫青石の産出状態. 岩石鉱物鉱床学会誌, 33, 51-61.
[4] Miyashiro (1953) Osumilite, a new mineral, and cordierite in volcanic rocks. Proceedings of the Japan Academy, 29, 321-323.
[5] Brown, Gibbs (1969) Refinement of the crystal structure of osumilite. American Mineralogrst, 54, 101-116.
[6] 第二文献
[7] Chinner, Dixon (1973) Irish osumilite. Mineralogical Magazine, 39, 189-192.
[8] 横溝, 宮地 (1978) 万年山熔岩中の大隅石の化学組成. 73, 180-182.
[9] Chukanov, Pekov, Rastsvetaeva, Aksenov, Belakovskiy, Van, Schuller, Ternes (2012) Osumilite-(Mg): Validation as a mineral species and new data. Zapiski Rossiiskogo Mineralogicheskogo Obshchetstva, 141, 27-36.

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IMA No./year: 1959(1962s.p.)
IMA Status: A (approved)
模式標本:国立科学博物館 M15837; The Natural History Museum, London, England.(Handbook of Mineralogyから引用)

生野鉱 / Ikunolite

Bi4S3

模式地:兵庫県 朝来市 生野鉱山

第一文献:Kato A. (1959) Ikunolite, a new bismuth mineral from the Ikuno mine, Japan. Mineralogical Journal, 2, 397-407

生野鉱 Ikunolite
兵庫県 明延鉱山

生野鉱 Ikunolite
栃木県 足尾銅山

東京大学(当時)の加藤昭によって発見された新鉱物で、生野鉱の名前は産地の生野鉱山に由来する[1]。金香瀬(かながせ)鉱床群の千珠前「ひ」から産出した標本が、生野鉱山に勤務していた堀川国治を通じて加藤に渡たり、生野鉱が見出された。

生野鉱はBi4S3の化学組成をもち、硫テルル蒼鉛鉱 / Tetradymite(Bi2Te2S)の関連鉱物である。国産の新鉱物だと、都茂鉱 / Tsumoite (BiTe)や河津鉱 / Kawazilite(Bi2Te2S)も一連の仲間となる。これらの鉱物たちはBi-(S+Se)-Teを頂点にした三角形組成内にプロットされ、一連の鉱物は図内でいくつかの線上に位置する(下図1)。この組成系列の鉱物はひとまとめにして図で見た方がわかりやすい。生野鉱の化学組成はこの図の左上に位置しており、ホセ鉱A / Joséite-Aとは直線上の右隣となる。その差は微々たるもので、生野鉱がBi4S3であるのに対して、一つの硫黄(S)をテルル(Te)にしたものがホセ鉱A(Bi4TeS2)となる。加藤は論文中でホセ鉱AとのX線回折パターン、物理・光学特性の対比を行っているのだが、それらで両者は区別できない。ホセ鉱A(Bも)のIMA Statusは「Q」となっておりその存在を証明するデータに疑いがもたれている。ホセ鉱AはTeに富む生野鉱として分類されることで、いずれ消滅するかもしれない。

生野鉱は1960年にはAmerican Mineralogist誌上で新鉱物として紹介されている[2]。オフィシャルリストの1962s.p.は生野鉱が改めて承認されたことを意味しており[3]、このシリーズの鉱物の命名規約などに重要なアクションがあった訳ではない。加藤はこの生野鉱で櫻井賞の第5号メダルを受賞した。後に加藤は、櫻井鉱・飯盛石・褐錫鉱・河津鉱・若林鉱・マンガノパンペリー石を加えて、合計で7種の新鉱物を筆頭で記載することになる。

上の写真の標本は兵庫県明延鉱山からの産出品となる。化学組成は生野鉱山のものよりセレンがやや多く含まれていた。日本からはほかには栃木県足尾銅山(下の標本)や兵庫県明延鉱山からの産出が知られる。


図1.Bi-(S+Se)-Te系の産出鉱物(一部省略)。Cook et al., 2007, Can. Mineral., 45, 665を一部改訂。日本産新鉱物は太字。

[1] 第一文献
[2] Fleischer M. (1960) New mineral names. American Mineralogist, 45, 476-480.
[3] International Mineralogical Association (1962) International Mineralogical Association: Commission on new minerals and mineral names. Mineralogical Magazine, 33, 260-263.

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IMA No./year: 1959(1962s.p.)
IMA Status: A (approved)
模式標本:The Natural History Museum, London, England, 1960,92; National Museum of Natural History, Washington, D.C., USA, 113822, 115885.(Handbook of Mineralogyから引用)

人形石 / Ningyoite

(U,Ca,Ce)2(PO4)2·1-2H2O

模式地:鳥取県 人形峠鉱山

第一文献:Muto T., Meyrowitz R., Pommer A.M., Murano T. (1959) Ningyoite, a new uranous phosphate mineral from Japan. American Mineralogist, 44, 633-650.

第二文献:Boyle D R, Littlejohn A L, Roberts A C, Watson D M (1981) Ningyoite in uranium deposits of south–central British Columbia: first North American occurrence., The Canadian Mineralogist, 19, 325-331.

人形石 Ningyoite
模式地標本 黒色部が本鉱

原子力燃料公社の武藤正らにより鳥取県人形峠鉱山から発見された新鉱物[1]。この公社は1955年に鳥取県の人形峠に有望なウラン鉱床が発見されたことを受け1956年に発足している。当時、この鉱床は日本では最大級のウラン鉱床だった。当初はリン灰ウラン石が鉱石だったが、より放射能の強い黒色鉱石が発見されることになる。それが1957年のようで、武藤らはこの強い放射能をもつ鉱物の同定を試み、それは既知の鉱物とは一致しないことが判明する。1958年に武藤はアメリカの地質調査所に試料を送りそこで主要な分析が行われた。その結果、新鉱物であることが判明した。

人形石の化学組成は武藤らが報告した当初から改訂されている。第二文献による模式地標本のEPMA分析を受けてCeが検出されていることから、いまでは(U,Ca,Ce)2 (PO4)2•1-2H2Oのようになっている。結晶構造に関して、武藤らはP222の空間群を予想しているが、第二文献では対称性の高いC格子を予想している[2]。いずれにしても構造は未だに解かれていないが、ラブドフェンとの関連が予想されている。武藤は人形石で櫻井賞第9号メダルを受賞した。

写真は模式地の標本となる。人形石は黒色タール状の部分で結晶は非肉眼的である。文献では数ミクロンの針~板結晶と記載されているが、私の標本ではSEMで観察しても明瞭な結晶は観察されなかった。

[1] 第一文献
[2] 第二文献

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IMA No./year: 1961(1997s.p.)
IMA Status: Rd (redefined)
模式標本:国立科学博物館 M-15598(Handbook of Mineralogyから引用)

尾去沢石 / Osarizawaite

Pb(Al2Cu2+)(SO4)2(OH)6

模式地:秋田県 鹿角市 尾去沢鉱山

第一文献:Taguchi Y. (1961) On osarizawaite, a new mineral of the alunite group, from the Osarizawa mine, Japan. Mineralogical Journal, 3, 181-194.

第二文献:Giuseppetti G. & Tadini C. (1980) The crystal structure of osarizawaite. Neues Jahrbuch für Mineralogie, Monatshefte, 1980, 401-407.

尾去沢石 Osarizawaite
秋田県 亀山盛鉱山

尾去沢石 / Osarizawaite
新潟県三川鉱山

 三菱金属工業の田口靖郎によって秋田県尾去沢鉱山から発見された新鉱物。名前は産地の尾去沢鉱山に由来している。論文は(旧)鉱物学会が発行する国際誌のMineralogical Journalに掲載された[1]。尾去沢石を発見した田口には櫻井賞と第7号の記念メダルが授与されている。

尾去沢石は鉱山の正徳樋および卯酉樋の酸化帯から最初に発見され、硫酸鉛鉱 / Anglesiteを伴って緑黄色の被膜として産出する。ほかに青鉛鉱・藍銅鉱・ブロシャン銅鉱などが酸化帯に認められる。尾去沢石は明礬石超族に所属し[2,3]、その化学組成はCuPbAl2(SO4)2(OH)6となる。これは同じ明礬石超族の銅ビーバー石/ Beaverite-(Cu) [CuPbFe3+2(SO4)2(OH)6]の三価鉄(Fe3+)→アルミニウム(Al)置換体に相当する。銅ビーバー石の銅(Cu)→亜鉛(Zn)置換体には亜鉛ビーバー石/ Beaverite-(Zn)が知られており、これも日本発の新鉱物である。仮定の話になるが、もし尾去沢石の銅(Cu)→亜鉛(Zn)置換体が見つかればそれは亜鉛尾去沢石という名前の新鉱物になるだろう。亜鉛ビーバー石が存在しているのだから亜鉛尾去沢石も在っても良さそうなものである。尾去沢石は秋田県亀山盛鉱山や新潟県三川鉱山にも産出し、海外でも報告がある。

一枚目の写真は亀山盛鉱山から、二枚目は三川鉱山からの標本となる。尾去沢石は第一文献に記されているように鈍い緑黄色の被膜で産出するが、電子顕微鏡でみるとそれは数ミクロンの結晶の集合体であった。

[1] 第一文献
[2] 第二文献
[3] Jambor J.L. (1999) Nomenclature of the alunite supergroup. The Canadian Mineralogist, 37, 1323-1341.

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IMA No./year: 1961(1967s.p.)
IMA Status: A (approved)
模式標本:国立科学博物館 M15110; The Natural History Museum, London, England; Harvard University, Cambridge, Massachusetts, 106170; National
Museum of Natural History, Washington, D.C., USA, 107416.(Handbook of Mineralogyから引用)

吉村石 / Yoshimuraite

Ba2Mn2+2Ti(Si2O7)(PO4)O(OH)

模式地:岩手県 野田村 野田玉川鉱山

第一文献:Watanabe T., Takéuchi Y., Ito J. (1961) The minerals of the Noda-Tamagawa mine, Iwaté Prefecture, Japan. III. Yoshimuraite, a new barium-titanium-manganese silicate mineral. Mineralogical Journal, 3, 156-167

第二文献:Sokolova E., Cámara F. (2014) From structure topology to chemical composition. XVII. Fe3+ versus Ti4+: The topology of the HOH layer in ericssonite-2O, Ba2Fe3+2Mn4(Si2O7)2O2(OH)2, ferroericssonite, Ba2Fe3+2Fe2+4(Si2O7)2O2(OH)2, and yoshimuraite, Ba4Ti4+2Mn4(Si2O7)2(PO4)2O2(OH)2. The Canadian Mineralogist, 52, 569-576

吉村石 Yoshimuraite
模式地標本 褐色部

吉村石 Yoshimuraite
岩手県 田野畑鉱山

吉村石 Yoshimuraite
愛知県 田口鉱山

東京大学の渡辺武男らが1953年に岩手県野田玉川鉱山から未知の鉱物を見いだした。それが後に新鉱物と判明し、(当時)九州大学教授の吉村豊文(1905-1990)の名にちなんで「吉村石」と命名された。1959年にはその名前のみが渡辺武男の別の論文に見られる[1]。詳細な記載論文は(当時)日本鉱物学会が発行するMineralogical Journalで1961年に発表されている[2]。

IMAのオフィシャルリストでは1967s.p.となっているが、これはIMA側の事情である。このあたりの時代にIMAの新鉱物に関する委員会が設立され、それまでに報告された新鉱物を洗い直すということを当時やっていた。その行程で吉村石は改めて承認を受け、それが発表されたのが1967年[3]。このとき同じく承認済みとして紹介された日本産新鉱物として赤金鉱 / Akaganeite,神保石 / Jimboite,園石 / Sonoliteがある。この報告にはリジェクト(否定)された鉱物として芋子石 / Imogoliteや大和石 / Yamatoiteの名前が挙げられている(芋子石は後に復活する)。それから石金鉱 / Ishiganeiteが二種の混合物であることや、横須賀鉱 / Yokosukaiteがエンスート鉱 / Nsutiteと同一ということも報告されどちらも抹消となった。横須賀鉱については学会発表はあるものの記載論文がなかったためにエンスート鉱に優先権が認められたという事情がある。
 
 話を吉村石に戻そう。吉村石の化学組成は非常に複雑で、湿式分析しか手段のなかった時代に渡辺らは相当苦労したと思う。それでも彼らは理想化学組成式について最終的に二つの候補、(SiO4)2か(Si2O7)Oかまで絞り込んであった[2]。(Si2O7)Oが正解であったがこれがちゃんと決まったのは2000年になる[4]。この論文では愛知県田口鉱山の標本を用いた単結晶X線構造解析を行い理想端成分を導いた。オフィシャルリストに載っている第二文献はいくつかの鉱物と内部構造についての幾何学を議論している[5]。そのうち吉村石を含めた何らかのグループができあがるだろう。

吉村石は褐色でバラ輝石などと共に産出することからそのコントラストは明瞭で、また葉片状結晶という特徴からもわかりやすい新鉱物である。産地については模式地の野田玉川鉱山の他に愛知県田口鉱山と岩手県田野畑鉱山が知られる。田口鉱山の吉村石はかなり発見が早く、1958年には見いだされ論文も1963年には出版されている[6]。岩手県田野畑鉱山からは比較的多産すると思えるのだが、ここの標本が知られたのはいつ頃であろうか。ざっと文献を調べたがその初出がわからなかった。各産地の標本を撮影してみた。どこの産地でも面構えは同じである。

[1] Watanabe T. (1959) The minerals of the Noda-Tamagawa mine, Iwate Prefecture, Japan. Mineralogical Journal, 2, 408-421.
[2] 第一文献
[3] International Mineralogical Association (1967) Commission on new minerals and mineral names. Mineralogical Magazine, 36, 131-136
[4] McDonald A.M., Grice J.D., Chao G.Y. (2000) The crystal structure of yoshimuraite, a layered Ba–Mn–Ti silicophosphate, with comments on five–coordinated Ti4+. The Canadian Mineralogist, 38, 649-656.
[5] 第二文献
[6] 広渡文利,磯野清 (1963) 愛知県田口鉱山の吉村石について. 鉱物学雑誌, 6, 230-243.

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IMA No./year: 1962(1987s.p.)
IMA Status: Rd (redefined)
模式標本:不明

芋子石 / Imogolite

Al2SiO3(OH)4

模式地:熊本県 人吉市

第一文献:Yoshinaga N., Aomine S. (1962) Allophane in some Ando soils. Soil Science and Plant Nutrition, 8, 6-13.

第二文献:Bayliss P. (1987) Mineralogical notes: mineral nomenclature: imogolite, Mineralogical Magazine, 51, 327.

芋子石 Imogolite
熊本県 人吉市 東添田採土場

芋子石 Imogolite
上の試料の一部拡大

九州大学の吉永長則と青峰重範によって熊本県人吉地方の火山灰土壌から見出された新鉱物[1]。現在では有効な鉱物種であるが、過去にいったんリジェクト(否定)された後に復活したという経緯がある[2]。

 芋子石の名前は記載論文に先立って登場している[3]。吉永と青峰は熊本県上村・長陽村、東京都岡本および北海道河西群から得られた火山灰からアロフェン / Allophaneを分離しその諸性質を調べている過程で、熊本県の試料からアロフェンとは性質の異なるコロイド状物質を見出した。これが後の新鉱物・芋子石である。熊本県上村産の試料から最初に見出され、この試料はこの地方では「芋子(いもご)」と呼ばれている黄色い火山灰土壌の塊であったことから、この新鉱物は芋子石と名付けられた。芋子自体は芋子石のほかにアロフェン、石英、クリストバル石、ギブス石、バーミキュライトなどから構成されている。

 芋子石の記載論文では諸性質が報告されている[1]。一方でこの時点で得られた化学組成や結晶的性質はやや不完全であり、著者ら自身も「この鉱物を芋子石として暫定的に指名した」と弱めの表現を使っている。1963年になってAmerican Mineralogistの新鉱物レビューで芋子石が紹介されているが、同時に「データは新鉱物としては不適切」というコメントが付いている[4]。そしてIMAが設立してから始まった鉱物の洗い直しおいて、1967年にリジェクト(否定)が宣言されてしまった[5]。この時点で芋子石は公式には鉱物ではなくなっているので、論文では独立の鉱物のようにあつかってはいけないのだが、芋子石の名称は粘土関連雑誌では独立種のように引き続き使用された。

芋子石を含む粘土鉱物の記載については長らく問題になっていて、それをどうするかという委員会は1950年頃に立ち上がっていた。この委員会で粘土鉱物の命名規約などが議論され、1980年にその要旨が複数の関連雑誌で紹介されている[例えば6-8]。その中には芋子石の項があり、1969年に東京で会合が開かれた際に委員会レベルでは芋子石の名前が改めて承認されたことが記してある。1983年に「Glossary of Mineral Species」という鉱物名と出典をまとめた本にはアロフェンの亜種として芋子石が紹介されている[9]。IMAからの再承認は1986年であった旨が第二文献に紹介されており、この第二文献の出版された1987年がオフィシャルリストには掲載されている[2]。復活までに芋子石の諸性質の解明が進んでいたこともその一助になったと思う。芋子石の化学組成と構造は1972年には明らかとなっており[10]、この論文には吉永が参加している。
 写真は芋子石を含む土壌で、これがいわゆる「芋子」の標本。芋子石はカーボンナノチューブに似た特徴的な構造から様々な応用が期待され多くの分野で研究が進んでいる。トムソン・ロイター社の論文検索システムWeb of Scienceで芋子石を検索すると700件近くもヒットする。芋子石の学術的なインパクトは非常に大きいと言えるだろう。

[1] 第一文献
[2] 第二文献
[3] Yoshinaga Y. and Aomine S. (1962) Allophane in some Ando soils. Soil Science and Plant Nutrition, 8, 6-13.
[4] Fleischer M. (1963) New mineral names. American Mineralogist, 48, 433-437.
[5] International Mineralogical Association (1967) Commission on new minerals and mineral names. Mineralogical Magazine, 36, 131-136.
[6] Bailey S.W. (1980) Summary of recommendations of AIPEA nomenclature committee. Calys and Clay Minerals, 28, 73-78.
[7] Bailey S.W. (1980) Summary of recommendations of AIPEA nomenclature committee. Caly Minerals, 15, 85-93.
[8] Bailey S.W. (1980) Summary of recommendations of AIPEA nomenclature committee. American Mineralogist, 65, 1-7.
[9] Fleischer M. (1983) Glossary of Mineral Species. Mineralogical Record, Tucson, AZ.
[10] Cradwick P.D.G., Farmer V.C., Russell J.D., Masson C.R., Wada K., Yoshinaga N. (1972) Imogolite, a hydrated aluminium silicate of tubular structure. Nature Physical Science, 240, 187-189.

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IMA No./year: 1962-004
IMA Status: Rn (renamed)
模式標本:不明

赤金鉱 / Akaganeite

(Fe3+,Ni2+)8(OH,O)16Cl1.25·nH2O

模式地:岩手県 江刺市 赤金鉱山

第一文献: Mackay A.L. (1962) ß-ferric oxyhydroxide-akaganéite. Mineralogical Magazine, 33, 270-280.

第二文献: Post J.E., Heaney P.J., von Dreele R.B., Hanson J.C. (2003) Neutron and temperature-resolved synchrotron X-ray powder diffraction study of akaganéite. American Mineralogist, 88, 782-788.

赤金鉱 Akaganeite
模式地標本 

赤金鉱 Akaganeite
透過型電子顕微鏡写真 

東北大学の南部松夫により岩手県赤金鉱山から見いだされた新鉱物で、赤金鉱山の名称から命名された。南部はほかにも萬次郎鉱、神津閃石、高根鉱、上国石という国産の新鉱物について筆頭で研究をまとめている。赤金鉱は南部にとって最初の新鉱物になるが、論文の公表は次の萬次郎鉱より後であった。南部による赤金鉱の記載論文は1968年に岩石鉱物鉱床学会誌に掲載された[1]。この論文で謝辞に名を挙げられている谷田勝俊は分析を担当している。谷田には赤金鉱発見の貢献により1985年に櫻井賞と第25号メダルが授けられている。

まずは発見の経緯をまとめておこう。1956年に赤金鉱山松森磁硫鉄鉱鉱床の露頭から褐鉄鉱様の二次鉱物が採集され、それは合成実験で知られていたβ-FeOOH相に該当することが判明する[2]。それは天然では初めての産出、つまりは新種に相当することから南部はこの鉱物に赤金鉱 / Akaganeiteの名前を与え、それを1959年の三鉱学会連合学術講演会(仙台)で発表した[3]。1962年には新鉱物の承認が与えられている(IMA 1962-004)[4]。赤金鉱は国際鉱物学連合が新鉱物について審査・承認を行うようになって以降では最初の国産新鉱物ということになるだろう。一方でその模式標本は記載論文にも記述が無いため、その所在を追うことができない。

オフィシャルリストに掲載されている第一文献はBirkbeck大学のMackayの論文になっている[5]。Mackayは南部から模式地の赤金鉱の提供を受け電子線回折法によってβ-FeOOH相であることを再確認し、1962年にMineralogical Magazineで論文が公表されている。ところがこの論文はやっかいごとも内包していた。この論文はタイトルで赤金鉱をAkaganéiteとつづり、eにアキュート・アクセントがついている。これは明らかに誤ったつづりであるのだが、かなり長い間この誤ったほうがオフィシャルリスト上にあった。今となってはアキュート・アクセントのついたつづりが誤りであることはすでに宣言されているのだが[6]、いかんせん遅すぎる。もはや収拾がつかないほどこの誤ったスペリングは学術業界内に蔓延してしまい、正しいAkaganeiteよりもむしろ間違っているAkaganéiteほうが論文には多いという事態となっている。しかし改めて書いておく。学名の正しいつづりは「Akaganeite」であってアキュート・アクセントをつけてはいけないのだ。そういった経緯でIMA StatusはRn(renamed)である。

赤金鉱の化学組成はざっくり示せばFeOOHではあるのだが、それは正確ではなく実際には塩素が必須である。南部もそれは認識していたが試料が乏しいことから定量はできず、模式地の標本では塩素は0.5wt%以下であると推測するにとどまっている。一方でオフィシャルリストに掲載されている赤金鉱の化学組成ではニッケルも入っている。これについて違和感を覚えたので調べたところ、これは第二文献および同じ著者の先行論文が元になっているようだ[7、8]。赤金鉱は様々な場所や産状で産出が報告されており、鉄ニッケル隕石の酸化皮膜を成す産状も知られるようになる [7、8]。第二文献はその赤金鉱を分析したところ多量のニッケルを固溶していたことから、第二文献を元にしているオフィシャルリストの組成式にはニッケルが入っている。ただしニッケルは必須成分ではないだろう。模式地の赤金鉱についてはニッケルの固溶はない[1]。

赤金鉱もまた研究例の多い国産新鉱物の一つである。例によってWeb of ScienceでAkaganeite(Akaganéite)を検索すると600件近い結果が出てくる。赤金鉱はいわゆるβ-FeOOH相なのでこれも含めて検索すると1100件を越え、赤金鉱もまたインパクトのある国産新鉱物といえる。

写真の標本は模式地の赤金鉱山から産出した標本となる。初め桜井欽一が手に入れ、それが山田滋夫に渡り、その一部を恵与していただいた。見た目は褐鉄鉱の粉末で不定形結晶の集合かと思われたが、透過型電子顕微鏡で観察するとナノスケールの針~剣状結晶であった。電子線回折から全て赤金鉱であることが確認できた。

[1] 南部松夫 (1968) 岩手県赤金鉱山産新鉱物赤金鉱(β-FeOOH)について. 岩石鉱物鉱床学会誌, 59, 143-151.
[2] 南部松夫 (1957) 岩手県赤金鉱山における磁硫鉄鉱の酸化. 鉱山地質, 7, 290 (1957年度地下資源関係学協会合同秋期大会の要旨)
[3] 南部松夫 (1960) 新鉱物赤金鉱(β-Fe2O3・H2O)について. 岩石鉱物鉱床学会誌, 44, 62 (昭和34年度学術講演会講演要旨)
[4] Commission on New Minerals and Mineral Names = CNMMNは1959年に設立され,この委員会は主に新鉱物のデータと名前に関して審査と承認を行っている。鉱物の分類や命名規約を検討する委員会はCommission on Classification of Minerals = CCMというものがあって別で活動していたが,2006年に合併してCommission on New Minerals, Nomenclature and Classification = CNMNCとなり,そこでは新鉱物の審査だけでなく命名規約についても一括で取り扱うようになっている。
[5] 第一文献
[6] Burke E.A.J. (2008) Tidying up mineral names: An IMA scheme for suffixes, hyphens and diacritical marks. Mineralogical Record, 39, 131-135.
[7] Post J.E., Buchwald V.F. (1991) Crystal structure refinement of akaganeite. American Mineralogist, 76, 272-277.
[8] 第二文献

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IMA No./year: 1963(1967s.p.)
IMA Status: A (approved)
模式標本:Harvard University, Cambridge, Massachusetts, USA, 114576(Handbook of Mineralogyから引用)

園石 / Sonolite

Mn2+9(SiO4)4(OH)2

模式地:京都府 和束町 園鉱山 他

第一文献: Yoshinaga M. (1963) Sonolite, a new manganese silicate mineral. Memoirs of the Faculty of Science, Kyushu Imperial University, Series D, 14, 1-21.

第二文献: Kato T., Ito Y., Hashimoto N. (1989) The crystal structures of sonolite and jerrygibbsite. Neues Jahrbuch für Mineralogie, Monatshefte, 1989, 410-430.

園石 Sonolite
福井県藤井鉱山

園石 Sonolite
京都府和束町 ややピンク~紫がかった粒が本鉱で透明な部分にはテフロ石が混じる。アレガニー石やマンガンヒューム石とは分析しないと区別が出来ない。右上~左下に走る褐色は木下雲母。

園石は九州大学の吉永真弓により発見された新鉱物で、発見地の京都府和束町園鉱山の名称から命名されている。記載論文は1963年に九州大學理學部紀要で発表され[1]、同年の内にAmerican Mineralogistでも紹介されている[2]。オフィシャルリストに記してある年代は1967年で、これはIMAが設立後に改めて承認された年となる[3]。

吉永の記載論文によれば、アレガニー石 / Alleghanyiteや他の含マンガン珪酸塩鉱物を研究する過程で、1960年に園鉱山の鉱石中から最初に見出され、それに続いて多くの産地が見つかったようだ。論文で挙げられている園鉱山以外の産地は、岩手県花輪鉱山、茨城県鷹峰鉱山、栃木県加蘇鉱山、愛知県田口鉱山、滋賀県五百井鉱山、京都府向山鉱山、山口県和木鉱山、山口県高森鉱山、山口県久杉鉱山が挙げられており、国外の産地として台湾蘇澳鉱山も記されている。

園石はバラ輝石、パイロクロアイト、ガラクサイトなどを密接に伴い、それらは園石の結晶中にも包有される。こういった包有物の存在は湿式分析が主な分析手段だったこの時代ではたいへん悩ましいことで、不純物の少ない試料は常に望まれていた。園石は名前こそ園鉱山の名称から命名されているが、諸性質の解明に使用されたのは主に花輪鉱山と久杉鉱山からの試料であった。この二つの鉱山から産出する園石は不純物(包有物)が少ないことが記してある。

園石は単斜ヒューム石 / Clinohumiteのマグネシウムをマンガンに置き換えた鉱物であることが論文中には記されている[1]。ただ今となっては単斜ヒューム石の化学組成はMg9(SiO4)4F2という定義になっているので、現在では園石は単斜ヒューム石のマグネシウムをマンガンに、フッ素を水酸基に置き換えた鉱物と言った方が正確である。園石の結晶構造解析は山口大学の加藤敏郎らによって行われ、改めて単斜ヒューム石と同構造であることが確認された[4]。

写真は福井県藤井鉱山と京都府和束町からの標本となる。記載論文に挙げられた以外にも多くの産地が知られている。園石は国内の産地ではいずこでも肉眼的に鈍い赤褐色で、アレガニー石とはぱっと見で判別はできない。海外では数センチの単結晶が産出する。

[1] 第一文献
[2] Fleischer M. (1963) New mineral names. American Mineralogist, 48, 1413-1421.
[3] International Mineralogical Association (1967) Commission on new minerals and mineral names. Mineralogical Magazine, 36, 131-136
[4] 第二文献

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IMA No./year: 1963-002
IMA Status: A (approved)
模式標本:National Science Museum, Tokyo, Japan, M15-112; The Natural History Museum, London, England.(Handbook of Mineralogyから引用。ただし研究に使用された標本は東大博物館に現存している)

神保石 / Jimboite

Mn2+3(BO3)2

模式地:栃木県 鹿沼市 加蘇鉱山

第一文献: Watanabe T., Kato A., Matsumoto T., Ito J. (1963) Jimboite, Mn3(BO3)2, a new mineral from the Kaso mine, Tochigi Prefecture, Japan. Proceedings of the Japan Academy, Ser. B, 39, 170-175.

第二文献: Sadanaga R., Nishimura T., Watanabe T. (1965) The structure of jimboite, Mn3(BO3)2 and relationship with the structure kotoite. Mineralogical Journal, 4, 380-388.

神保石 Jimboite
模式地標本 東京大学総合博物館標本
黒い脈はヤコブス鉱で,それ以外はほぼ神保石。

神保石 Jimboite
上の標本の拡大写真
左下の脈はヤコブス鉱。

神保石のラベル 東京大学総合博物館標本
上の標本のラベル。

含神保石マンガン鉱石 Jimboite-bearing manganese ore
群馬県 利東鉱山 東小中鉱床
含神保石マンガン鉱石で中央の白い繊維状結晶はマンガン硼素酸塩鉱物のウイゼル石。

東京大学の渡辺武男らによって栃木県加蘇鉱山から見いだされた新鉱物で、東京帝国大学鉱物学教室の教授であった神保小虎の名にちなんで命名された。神保石の記載論文は日本学士院が発行するProceedings of the Japan Academy において1963年に発表された[1]。その一つ前の論文も渡辺によるもので、本邦初産となる小藤石[2]の記載論文となっている[3]。

神保小虎(1867-1924)は東京帝国大学地質学科を卒業し、北海道庁で勤務した後にベルリン大学に留学した。留学先では古生物学を専攻すると共に鉱物学・岩石学・地理学についても学んだとされる[4]。助教授で大学に着任した後に、新たに設置された鉱物学教室の初代教授となる。「日本鉱物誌 第二版」の著者の一人であり、第三版も企画していたとされる[5、6]。詳しい経歴や業績、人物についてのエピソードなど、詳しく知りたい方は引用先を当たってほしい[例えば7-9]。

神保石の発見や研究の経緯については渡辺自らが記した解説文が残っており[10]、内容を紹介しておこう。小藤石の研究を行っていた頃にスウェーデンのLångban鉱山からピナキオ石 / pinakioliteというマンガン硼酸塩鉱物が産出することを知り、小藤石 / Kotoite (Mg3 (BO3)2)のマンガン置換体の存在を期待するようになったという。もしそれが産出するなら第一候補は尾平・大崩山地方のマンガン鉱床、他の候補として北上産地のマンガン鉱床を想定していたようだ。そんな中で、鉱物学教室に所属していた加藤昭が鉱物研究家の櫻井欽一らと共に栃木県加蘇鉱山に赴き、珍しい鉱石を採集してきた。当初の観察で光学顕微鏡下での特徴が小藤石に似ていると半ば冗談で話し合っていたらしい。ところが分析をしてみると、それは長年探し求めていた小藤石のマンガン置換体であることが判明する。そこから新鉱物申請に向けてデータを集め、近代化された設備や周囲の助力もあって、ほんの4ヶ月で研究がまとまったと記してある。この年代には国際鉱物学連合の体系も固まって新鉱物の審査委員会もできあがっており、神保石は万票(満場一致)で承認された。1965年には模式地標本を用いた構造解析の結果が報告された[11]。

神保石は顕微鏡下ではほぼ無色だが、肉眼的な結晶だと紫赤褐色の鉱物である。東大博物館にある模式地標本をみると確かにそのとおりだ。そして今手に入る神保石と言われる標本もそんな色をしており、期待して調べてみたが神保石は入っていなかった。実は神保石不在の標本が神保石っぽく見えるのはテフロ石とガラクサイトによって醸し出されている。そしてそれは肉眼ではほとんど判別不能である。下に神保石不在の標本を掲載した。東大博物館のホンモノと見比べてみてもほとんど同じに見えるのにこれらには神保石は入っていない。神保石が見つかった唯一の石は利東鉱山の東小中鉱床から産出する鉱石で、ウイゼル石 / Wiserite を伴う標本にだけ神保石がわずかに確認できた。

マンガン鉱石 Manganese ore
神保石不在標本その1。手に入れた模式地の岩石標本。調べたところこれはテフロ石が主体で多量の微小ガラクサイトが含まれている。菱マンガン鉱もあるがこれは細脈で来ており肉眼的にはわからない。黒い帯はアラバンド鉱。どれだけ探しても神保石はみつからず,硼酸塩鉱物の気配すらなかった。

マンガン鉱石 Manganese ore
神保石不在標本その2。群馬県利東鉱山東小中鉱床の岩石標本。これもテフロ石,ガラクサイト,菱マンガン鉱の集合。やはり神保石はこういう標本にはいなかった。経験的にテフロ石がいるとあきらめざるを得ない。色が神保石のようであっても劈開がルーズな標本は軒並みダメ。

[1] 第一文献
[2] 小藤石(kotoite): Mg3(BO3)2。神保石から見てMn→Mg置換体に相当する。渡辺武男によって北朝鮮笏洞鉱山から見いだされた新鉱物で,神保石よりも前に発見されている。
[3] Watanabe T., Kato A., Katura T. (1963) Kotoite, Mg3(BO3)2 from the Neichi Mine, Iwate Prefecture, Japan. Proceedings of the Japan Academy, Ser. B, 39, 164-169.
[4] 佐藤傳藏 (1924) 神保理學博士を弔す. 地学雑誌, 36, 179-182.
[5] 和田維四郎, 神保小虎, 瀧本鐙三, 福地信世 (1916) 日本鉱物誌 第2版, pp.357.
[6] 和田維四郎, 伊藤貞一, 桜井欽一 (1947) 日本鉱物誌 第3版 上巻, pp.368.
[7] 浜崎健児 (2011) ユーラシア大陸を駆け抜けた神保小虎-その人物と神保をめぐる人たち. 地質学史談話会会報, 36, 27-28.
[8] 日本地質学会メールマガジン No250.
[9] 日本地質学会メールマガジン No254.
[10] 渡辺武男 (1963) 新鉱物を見いだすまで-小藤石と神保石の場合-. 科学, 33, 461-467.
[11] 第二文献

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IMA No./year: 1963-011
IMA Status: A (approved)
模式標本:国立科学博物館 M15111(Handbook of Mineralogyから引用。ただし研究に使用された標本は東大博物館に現存している。)

原田石 / Haradaite

SrV4+Si2O7

模式地:岩手県 野田村 野田玉川鉱山 & 鹿児島県 大和村 大和鉱山

第一文献:Takéuchi Y., Joswig W. (1967) The structure of haradaite and a note on the Si-O bond lengths in silicates. Mineralogical Journal, 5, 98-123.

第二文献:Watanabe T., Kato A., Ito J., Yoshimura T., Momoi H., Fukuda K. (1982) Haradaite, Sr2V4+2[O2 Si4O12], from the Noda Tamagawa mine, Iwate Prefecture and the Yamato mine, Kagoshima Prefecture, Japan. Proceedings of the Japan Academy 58 B, 21-24.

原田石 Haradaite
模式地標本 岩手県野田玉川鉱山

原田石 Haradaite
模式地標本 鹿児島県大和鉱山

原田石 Haradaite
高知県松尾鉱山

東京大学の渡辺武男らによって岩手県野田玉川鉱山と鹿児島県大和鉱山から発見された新鉱物で、北海道大学の原田準平の業績をたたえて命名された。承認を受けた時期は文献に記載がないが、通常なら申請した1963年内には承認を得ているだろう。記載論文に先立って構造解析の論文が1967年に発表され[1]、記載論文の公表は1982年であった[2]。

原田石は同じような時期に二つの鉱山で見いだされ、別々の研究グループにより研究が進められていた。1962年の地質学会において九州大学の吉村らが鹿児島県大和鉱山からの本鉱を報告したことが、記録上では初出になるだろう[3]。記載論文では野田玉川鉱山から福田皎二が1960年に標本を「採集した」ことが記されている。一方で記載論文に先立って公表された1967年の構造解析の論文では1960年に渡辺と加藤が「発見した」という記述になっており[1]、食い違いがある。優先権争いがあったという話を聞いているので、そういった事情が反映されたのだろう。それでも1974年には二つの研究グループは連名で国際学会において発表している[4]。このあたりにはわだかまりは解けたのかもしれない。二つの研究グループの筆頭であった渡辺武男と吉村豊文は北海道大学において原田と共に勤務しており、原田の還暦記念論文集にも二人の名前が見られる。

鉱物名の元になった原田準平(1898-1992)は1924年に東京帝国大学を卒業している。すぐさま理学部の助手となり、翌年には熊本高等工業学校および第五高等学校の教授を兼務し、熊本医科大学予科講師も務めている。1928年から文部省在外研究員としてヨーロッパ・アメリカに留学し、1931年に北海道帝国大学の助教授に着任する。翌年には地質学鉱物学第四講座の教授となる。そしてこの第四講座は今も存続しており、原田に続く第四講座の歴代教授は、八木健三、針谷有、藤野清志、永井隆哉となる。

原田石はストロンチウムと4価のバナジウムを主成分とするケイ酸塩鉱物で、翠緑色の非常に美しい鉱物である。天然で最初に見つかり、1965年には伊藤順によって合成された[5]。野田玉川鉱山の原田石は粗粒のバラ輝石に伴われる石英の集合中に5ミリに達する平板状結晶で産出したようだ。大和鉱山ではゴールドマン石榴石・バラ輝石・石英を伴って塊状のマンガン鉱石を切る脈として産出したという記述がある。その他、愛知県田口鉱山[6]と高知県松尾鉱山[7]からも産出が知られる。原田石が産出する鉱石はどいうわけかいずれも低品位鉱である。

写真は岩手県野田玉川鉱山、鹿児島県大和鉱山、高知県松尾鉱山から産した原田石で、いずれも特徴的な翠緑色が美しい。これらは何とか手に入った。だが愛知県田口鉱山の原田石はひときわ稀なのかその標本をみたことすらない。1ミリ以下でも良いから田口鉱山の原田石もほしい。

[1] 第一文献
[2] 第二文献
[3] Yoshimura T., Shirozu H., Momoi H. (1962) Jour. Geol. Soc. Japan, 68, 397 (abstr.) (in Japanese)
[4] Watanabe T., Kato A., Ito J., Yoshimora T., Momoi H., Fukuda K. (1974) Haradaite, Sr2V2(O2)(Si4O12), a new mineral from the Noda Tamagawa mine, Iwate Prefecture, and the Yamato mine, Kagoshima Prefecture, Japan. 9th General Meeting of the International Mineralogical Association, Berlin Germany, 9, 97-97.
[5] Ito J. (1965) Synthesis of vanadium silicates: haradaite, goldmanite and roscoelite. Mineralogical Journal, 4, 299-316.
[6] 松山文彦,小林暉子(1993) 愛知県田口鉱山産原田石. 地学研究,42,2-4
[7] 広渡文利,松枝太治,吉村豊文(1972) 高知県松尾鉱山の原田石. 三鉱学会要旨集,p12.

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IMA No./year: 1965-017
IMA Status: A (approved)
模式標本:国立科学博物館 M15843; National School of Mines, Paris, France; Harvard University, Cambridge, Massachusetts, 108788; National Museum of Natural History, Washington, D.C., USA, 120592.(Handbook of Mineralogyから引用); 国立科学博物館 MSN-M18000(門馬ら[4]はこれをタイプ標本と記述している)

櫻井鉱 / Sakuraiite

(Cu,Zn,Fe)3(In,Sn)S4

第一文献:加藤昭 (1965) 新鉱物「櫻井鉱」. 地学研究,桜井欽一博士紫綬褒章記念号,1-5.

第二文献:Shimizu M., Kato A., Shiozawa T. (1986) Sakuraiite: chemical composition and extent of (Zn,Fe)In-for-CuSn substitution. The Canadian Mineralogist, 24, 405-409.

櫻井鉱 Sakuraiite
模式地標本 上下に走る黄銅鉱脈の左右の銀黒色塊状集合が本鉱とペトラック鉱の集合。

国立科学博物館の加藤昭によって記載された新鉱物で、本邦鉱物学の発展に貢献したことで紫綬褒章を受章した櫻井欽一にちなんで命名された[1]。模式標本は国立科学博物館に収蔵されている。記載論文は地学研究の桜井欽一博士紫綬褒章記念号の巻頭に掲載され、その論文に続いて櫻井鉱が誕生するまでの経緯が述べられている[2]。

櫻井の紫綬褒章受章が決まった昭和39年11月、東京大学の渡辺武男は記念として新鉱物に献名したいと述べ、加藤も同様に考えた。一方で櫻井の業績にふさわしい立派な新鉱物になる候補はその時点では見いだせていなかった。そうした中、11月下旬に兵庫県生野鉱山から一つの同定依頼が舞い込んでくる。加藤は気乗りがしないながらも予備実験的に分析を行うとその試料には多量のインジウム(In)が認められた。その当時、インジウムを主成分とする鉱物は2つのみであった。期待と不安を交えながら行われたX線回折実験の結果はこれまでのインジウム鉱物とは異なるパターンを示した。櫻井鉱が確実に認識された瞬間である。

加藤は櫻井鉱の化学組成を(Cu,Fe)2Zn(In、Sn)S4とまとめるつもりであったが、研究の仕上げの段階になり渡辺は化学組成の作り方について次のように指摘した。櫻井鉱の結晶構造は解明されていないのだから、(Cu,Zn,Fe)3(In,Sn)S4という形にするべきだという提案である。加藤はその意見を入れ渡辺の提案した化学組成を採用した。これが今のオフィシャルリストに掲載されている。渡辺の意見はやや消極的な理由から来ているように思えるが、結果的に、渡辺が提案した化学組成は最新の研究結果と調和的である。例えば、清水らはCu-Zn-Fe置換に一定の傾向を確認し[3]、結晶構造解析からはCu-Zn-Feは完全固溶であることが報告されている[4]。

一方で、単結晶X線プリセッション写真と化学組成分析を根拠に、櫻井鉱は立方晶系で(Cu,Zn,Fe,In,Sn)Sとする鉱物だという論文は古くからある。これを受けてIMAはつい最近まで櫻井鉱の化学組成を (C,Zn,Fe,In,Sn)Sと表示していた。ところが2013年に石原鉱 / Ishiharaite (Cu,Ga,Fe,In,Zn)Sの採択を受けて、2014年から櫻井鉱の化学組成はまた元の通りとなった。結晶構造解析の研究[4]が論文として出版されることが望まれる。

写真は模式地の生野鉱山から産した標本を恵与していただいた。肉眼ではわからないが電子顕微鏡でみると櫻井鉱とペトラック鉱が複雑に混在している。豊羽鉱山やアルゼンチンからも見つかっているようである。

[1] 第一文献
[2] 加藤昭 (1965) 「櫻井鉱」誕生まで. 地学研究,桜井欽一博士紫綬褒章記念号,6-9.
[3] 第二文献
[4] 門馬綱一,宮脇律朗,松原聰,重岡昌子,加藤昭,清水正明,長瀬敏郎 (2015) 櫻井鉱の結晶化学的再検討. 日本鉱物科学会2015年年会講演要旨集,R1-09, p.43.
[5] Kissin S.A., Owens D.R. (1986) The crystallography of sakuraiite. The Canadian Mineralogist, 24, 679-683.

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IMA No./year: 1966-009
IMA Status: A (approved)
模式標本:国立科学博物館 M15748(Handbook of Mineralogyから引用)

萬次郎鉱 / Manjiroite

Na(Mn4+7Mn3+)O16

模式地:岩手県 軽米町 小晴鉱山

第一文献:南部松夫, 谷田勝俊 (1967) 岩手県小晴鉱山産新鉱物萬次郎鉱について. 岩石鉱物鉱床学会誌, 58, 39-54.

万次郎鉱 Manjiroite
万次郎鉱 Manjiroite
いずれも模式地:小晴鉱山の標本 

東北大学の南部松夫と谷田勝俊によって発見された新鉱物で、本邦の鉱物学および鉱床学の進歩発展に貢献した東北大学名誉教授の渡邉萬次郎にちなんで命名された[1]。論文は邦文で記載されており「萬」の漢字を使用しているためここではそれに従う。萬次郎鉱の化学組成は当初(Na,K)Mn4+8O16・nH2Oと設定されたが、ホランド鉱族の命名規約の作成に伴って2013年にNa(Mn4+7Mn3+)O16へ改訂されている[2]。萬次郎鉱発見の功績により南部へは櫻井賞(第8号メダル)が授けられた。

 南部らは東北地方のマンガン鉱山から採集した多数の二酸化マンガン鉱について、X線回折測定を行っていた。その中でクリプトメーレン鉱、K(Mn4+7Mn3+)O16、と同構造を示す50試料について化学組成分析を行ったところ、6産地(岩手県小晴、小玉川、舟小沢、立川、川井、滝ノ沢鉱山)の12試料については「ナトリウム>カリウム」となることが判明する。クリプトメーレン鉱のナトリウム置換体として、萬次郎鉱は新鉱物に認定された。最も端成分に近い小晴鉱山の試料を模式標本として、記載が行われている[1]。

渡邉萬次郎(1891-1980)は福島県出身の鉱床学者で、東北大学で教鞭を執った後に秋田大学学長となり、3期10年を勤めている。金属鉱床学が専門の研究者だが、火山の研究も行っている。また随筆、画集、歌集も執筆するなど幅広い分野で活躍している。渡邉萬次郎については島津による紹介文[3]がくわしいほか、自身の著作もある[4]。また日本鉱物科学会は、鉱物学関連分野で卓越した研究業績を有してかつ長年にわたり分野の発展に貢献した人物を表彰するために「渡邊萬次郎賞」を設けている。渡邊萬次郎からの寄付金が基金となっている。

写真はいずれも模式地の小晴鉱山から産した標本となる。上の方は国内の方から恵与していただいたが、下の方はロシアからの出戻り標本である。萬次郎鉱は見た目だけではクリプトメーレン鉱と区別が出来ないが、分析してみるといずれも萬次郎鉱であることが確認できた。

[1] 第一文献
[2] Biagioni C., Capalbo C., Pasero M. (2013) Nomenclature tunings in the hollandite supergroup. European Journal of Mineralogy, 25, 85-90.
[3] 島津光夫(2008)渡辺萬次郎-もの書きが好きだった金属鉱床学者. 地球科学, 62, 297-302.
[4] 渡辺萬次郎(著), 菊池ヒサ子(編)(1980) 思い出の記 : 一人の一生

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IMA No./year: 1967-009
IMA Status: A (approved)
模式標本:国立科学博物館 M15937; National Museum of Natural History, Washington, D.C., USA, 135971(Handbook of Mineralogyから引用)

福地鉱 / Fukuchilite

Cu3FeS8

模式地:秋田県 鹿角市 花輪鉱山

第一文献:Kajiwara Y. (1969) Fukuchilite, Cu3FeS8, a new mineral from the Hanawa mine, Akita Prefecture, Japan. Mineralogical Journal, 5, 399-416.

第二文献:Bayliss P. (1989) Crystal chemistry and crystallography of some minerals within the pyrite group. American Mineralogist 74, 1168-1176.

福地鉱 Fukuchilite
模式地標本 緑礬(ろうは)に埋もれた一見なんだかよくわからない黒色塊(中央やや左)に福地鉱は含まれる。黄色塊(ほぼ黄鉄鉱)には福地鉱は全く含まれていなかった。
 
福地鉱 Fukuchilite
SEM写真1 中央の複雑の組織を示す部分に福地鉱は含まれている。明るい灰色はコベリン。暗い灰色は黄鉄鉱。
 
福地鉱 Fukuchilite
さらに拡大してコントラストを強調したSEM写真。一番明るい灰色はコベリン。最も暗いところは黄鉄鉱。それらの中間色が福地鉱。基本的に数ミクロン程度であるため分析が困難だが、なんとか分析してみるとCu2.96-3.03Fe0.98-1.27S8という化学組成だった。

当時、東京大学の大学院生だった梶原良道によって岩手県花輪鉱山から発見され、鉱物学・地質学者の福地信世に因み命名された。記載論文は梶原が東京教育大学(筑波大学の前身)に就職した後の1969年に出版されている[1]。福地鉱の発見により梶原は櫻井賞(第12号)を受賞した。

福地信世(1877-1934)は東京帝国大学を卒業し大学院に進んだ。古河鉱業に入社し、のちに東京帝国大学の講師となる。神保小虎・滝本鐙三と共にとりまとめた日本鉱物誌第二版は1916年に出版されている。福地は多くの黒鉱型鉱床を研究しその成因について一つの考えを持つに至った。黒鉱型鉱床の起源について交代鉱床という考えの方が主流派だった中で、福地は「黒鉱型鉱床=沈殿鉱床」ということを初めて指摘している(明治37年・1904年)[2]。現代では海底へ噴出した熱水から沈殿した硫化物などが黒鉱型鉱床の起源ということが明らかになっており、福地の考えは正しかった。

福地鉱の発見地である花輪鉱山は秋田県鹿角市と岩手県安代町の県境に位置するが、岩手県側に事務所があった。そのため鉱山の所在地を示す際は一般的には岩手県とされるが、福地鉱が発見された本山鉱床は秋田県側に位置するため、福地鉱の産地は秋田県として記載されている[1]。花輪鉱山は主に黒鉱から構成される明通鉱床群+女平鉱床と、黄鉱から構成される元山鉱床群に区分され、福地鉱の産地である本山鉱床は元山鉱床群に属する[3]。福地鉱は石膏・硬石膏・重晶石が主体の鉱体中に、コベリンや黄鉄鉱に伴われて産出する。

福地鉱は複数の論文で検証が行われている[4-6]。模式地の福地鉱はCalgary大学(カナダ)に渡り、そこでの検証において福地鉱はCuS2-FeS2系の固溶体として報告された。その化学組成は(Cu,Fe)S2とされ[5]、CuS2は福地鉱に先だって知られていたヴィラマニン鉱(Villamanínite)という別の鉱物の端成分となるため、化学組成だけをみると福地鉱とは区別できない。そのため福地鉱は抹消すべきだという提案が新鉱物・鉱物・命名委員会へ提出されたことがある[6]。しかしながら福地鉱とヴィラマニン鉱が同一であるという十分な証拠が無かったためにその提案は否決され、福地鉱は現在まで日本産の新種として存続している.このような経緯からか記載論文のCu3FeS8が福地鉱の化学組成としてオフィシャルリストに掲載されている。

写真の標本は模式地から得られた標本となる。一枚目には福地鉱を含む塊を掲載した。標本は全体としては緑礬(ろうは)であり、その中に小さな黒色塊と黄色塊が埋もれている。黄色塊は黄鉄鉱ばかりだが、黒色塊には福地鉱が入っている。二枚目に示す黒色塊の断面SEM写真で、中央にある複雑な組織を示す300-400ミクロン程度の粒中に福地鉱が認められる。それ以外ののっぺりとした灰色の部分はコベリンになる。三枚目にさらに拡大したSEM写真を示した。相当わかりにくいと思うが、もっとも明るい灰色部はコベリンで、もっとも暗い部分が黄鉄鉱、そしてそれらの中間的な色合いを示す部分が福地鉱となる。サイズはせいぜい数ミクロンしかないが過去の文献も同様である。中間色の部分を分析するとCu2.96-3.03Fe0.98-1.27S8という化学組成になり、これは梶原の提案する組成:Cu3FeS8とおおむね一致した。

[1] 第一文献
[2] 大橋良一 (1962) 黒鉱型鉱床の形態および成因.鉱山地質, 53, 172-174.
[3] 斎藤憲 (1984) 花輪鉱山. 日本鉱業会誌, 100, 882-887.
[4] Shimazaki H., Clark L.A. (1970) Synthetic FeS2-CuS2 solid solution and fukuchilite-like minerals. The Canadian Mineralogist, 10, 648-664.
[5] Yui S. (1972) Quantitative electron-probe microanalysis of sulphide minerals. In G. Shinoda, K. Kohra, and T. Ichinokawa, Eds. Proceedings, Sixth International Conference on X-ray Optics and Microanalysis, p.749-753. University of Tokyo Press, Tokyo.
[6] 第二文献

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IMA No./year: 1967-033
IMA Status: A (approved)
模式標本:国立科学博物館 M16288, National Museum of Natural History; 120635, Washington, D.C., USA(Handbook of Mineralogyから引用)

イットリウム飯盛石 / Iimoriite-(Y)

Y2 (SiO4)(CO3)

模式地:福島県川俣町房又・水晶山

第一文献:Kato A., Nagashima K. (1970) Iimoriite (Y,Ca,Zr)15(Mg,Fe3+,Al)(Si,Al,P)9O34(OH)16. in Introduction to Japanese Minerals, Geological Survey of Japan, 39, 85-86.

第二文献:Hughes J.M., Foord E.E., Jai-Nhuknan J., Bell J.M. (1996) The atomic arrangement of iimoriite-(Y), Y2(SiO4)(CO3). The Canadian Mineralogist, 34, 817-820.

イットリウム飯盛石 Iimoriite-(Y)
福島県川俣町水晶山

国立科学博物館の加藤昭と筑波大学の長島弘三によって見いだされた新種の鉱物で、理化学研究所の飯盛里安(1885-1982)と飯盛武夫(1912-1943)親子にちなみ命名された。飯盛石の発見により、長島弘三は櫻井賞(第11号)を受賞している。

福島県川俣町房又および水晶山にある珪石採石所において巨大なペグマタイト鉱床が発見され、この鉱床から希元素を含む鉱物が数多く産出した。これらは飯盛親子と畑晋によって次々に記載されている[例えば1-3]。飯盛石が見いだされた石英-微斜長石ペグマタイトも房又地域にあり、この地域の希元素鉱物について先に研究業績を上げていた飯盛親子の名前を由来にして、飯盛石は命名された。

飯盛里安はかつて「長手石」という鉱物を記載している[4]。長手石は石川県羽咋市長手島の花崗閃緑岩ペグマタイトから産出した黒色柱状結晶で、リン成分を多く含む褐簾石族の鉱物である。リン成分を多く含む褐簾石は世界でもほとんど例がないのでその詳細が非常に気になるところであるが、戦災で模式標本は消失したために幻の鉱物となっている。

飯盛石の化学組成・格子定数の値は第一文献の発表の後に大きく改訂されている。1975年にアラスカから見つかった飯盛石を用いた研究によって化学組成と格子定数が現在のように改訂され、飯盛石の模式標本もラスカ産飯盛石と同じ化学組成・格子定数であったことが確認されている[6]。第一文献に記されている飯盛石の化学組成および格子定数は誤りであったが、それでも先に発見されているという一点において飯盛石は優先権があった。飯盛石の結晶構造が解明されるのは1996年のことで、アラスカ産の飯盛石が研究に用いられた[7]。

写真は水晶山からの標本になる。写真に写っている全体が飯盛石となるが、あまり特徴がないというか、質感は長石とかなり似通っている。入手できてはいないが飯盛石の結晶は透明~ピンク色をしており、水晶山やフランスのタルク鉱山から産出が知られる。

[1] Iimori S., Hata S. (1938) Japanese Thorogummite and Its Parent Mineral. Scientific Papers of the Institute of Physical and Chemical Research, 34, 447-454.
[2] Iimori T. (1938) Tengerite found in Iisaka, and Its Chemical Composition. Scientific Papers of the Institute of Physical and Chemical Research, 34, 832-834.
[3] Hata S. (1938) Abukumalite, a new yttrium mineral. Scientific Papers of the Institute of Physical and Chemical Research, 34, 1018-1023.
[4]  Iimori S., Yoshimura J., Hata S. (1931) A new radioactive mineral found in Japan. Sci. Papers Inst. Phys. Chem. Research, Tokyo, 15, 83-88.
[5] Fleischer M. (1973) New Mineral Names. American Mineralogist, 58, 139-141.
[6] Foord et al. (1984) New data for iimoriite. American Mineralogist, 69, 196-199.
[7] 第二文献

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IMA No./year: 1967(1997s.p.)
IMA Status: A (approved)
模式標本:不明

灰エリオン沸石 / Erionite-Ca

Ca5[Si26Al10O72]·30H2O

模式地:新潟県 新潟市 間瀬

第一文献:Harada K., Iwamoto S., Kihara K. (1967) Erionite, phillipsite and gonnardite in the amygdales of altered basalt from Mazé, Niigata Prefecture, Japan. American Mineralogist, 52, 1785-1794.

第二文献:Gualtieri A., Artioli G., Passaglia E., Bigi S., Viani A., Hanson J.C. (1998) Crystal structure-crystal chemistry relationships in the zeolites erionite and offretite. American Mineralogist, 83, 590-606.

灰エリオン沸石 / Erionite-Ca
新潟県新潟市間瀬

秩父自然科学博物館の原田一雄らにより、新潟県新潟市間瀬から見いだされた新種の鉱物。当時の発表では日本初産出のエリオン沸石の報告という立ち位置であったが[1]、1997年に沸石超族の命名規約の変更によってエリオン沸石としては初めてのカルシウム(Ca)タイプということが再認識され、間瀬産のエリオン沸石はErionite-Caという新種に昇格した[2]。和名ではカルシウムの和名:灰を頭につけて灰エリオン沸石と呼ぶ。

沸石の種類について、昔は構造の骨格を形成するシリコン(Si)とアルミニウム(Al)の比率に注目して分類されており、構造の隙間に入っている元素に基づいた分類は行われていなかった。しかし1998年になり沸石超族の命名規約が成立した際に、構造の骨格と隙間に入っているアルカリ土類金属でも分類するルールがきまった[2]。学名の前半は骨格の種類に対して命名されるルート名であり、後半は最も多いアルカリ土類金属を意味し、それはサフィックスで「-元素名」という形でくっつく。こうして沸石の学名は「ルート名-元素名」という形になっている。また、一つのアルカリ土類金属しか種類がないケースだとサフィックスは付かない。たとえば湯河原沸石はCaの種類だけが知られているので、今の学名は「Yugawaralite」だけとなっている。もし将来的にSrの種類が見つかったら、それは「ストロンチウム湯河原石 / Yugawaralite-Sr」という学名が自動的に決まり、また、もともとの湯河原沸石は「灰湯河原沸石 / Yugawaralite-Ca」とこれまた自動的に改名されることになる。

エリオン沸石の歴史を振り返ってみよう。1898年にアメリカオレゴン州のDurkee Fire Opal鉱山から羊の毛のような集合体の鉱物が発見され、ギリシャ語で羊毛を意味する「εριον」にちなんでエリオン沸石 / Erioniteと命名された [3]。そのエリオン沸石はナトリウム(Na)タイプであったので、沸石超族の命名規約でこれがErionite-Naとされる。ナトリウムの和名はソーダであり、和名ではErionite-Naのことをソーダエリオン沸石と呼ぶ。続いて1964年にアメリカオレゴン州のRomeから報告されていたエリオン沸石[4]がカリウム(K)タイプだったので、これを元にカリウムエリオン沸石 / Erionite-Kも確立される。カルシウム(Ca)タイプはエリオン沸石の中で最も新しく、1967年に原田らが報告した新潟県間瀬のエリオン沸石が灰エリオン沸石 / Erionite-Caという新種に再分類された。また、最初のエリオン沸石の産地、アメリカオレゴン州のDurkee Fire Opal鉱山からもカルシウムタイプが発見されたことも報告されている[5]。

写真は模式地である間瀬の灰エリオン沸石になる。全体が灰エリオン沸石と言われているが、実体は一つの集合の中でソーダやカリウムエリオン沸石と連続的に化学組成が変化する。手持ちの標本では放射状集合の根元(中心)付近にカルシウムが多く、その部分だけが灰エリオン沸石に該当していた。

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IMA No./year: 1968-004a
IMA Status: A (approved)
模式標本:国立科学博物館 M16183, National School of Mines, Paris, France; National Museum of Natural History, Washington, D.C., USA, 121005 (Handbook of Mineralogyから引用)

褐錫鉱 / Stannoidite

Cu8(Fe,Zn)3Sn2S12

模式地:岡山県 美作市 金生鉱山

第一文献:Kato A. (1969) Stannoidite, Cu5(Fe,Zn)2SnS8, a new stannite-like mineral from the Konjo mine, Okayama Prefecture, Japan. Bulletin National Science Museum, Tokyo, 12, 165-172.

第二文献:Kudoh Y., Takéuchi Y. (1976) The superstructure of stannoidite. Zeitschrift für Kristallographie, 144, 145-160.

褐錫鉱 Stannoidite
模式地標本
 
褐錫鉱 Stannoidite
上の標本の拡大写真。中央の大きめの割れ口を見せるものが褐錫鉱で,それを取り囲むやや金色が強めのものはモースン鉱。

国立科学博物館の加藤昭によって見いだされた新鉱物で、黄錫鉱 / Stannoiditeと物理・化学的性質が似ていることから、「類似」を表すギリシア語「eidos」(もしくはラテン語「oïda」)を併せてStannoiditeと命名された。その独特な色と化学成分から和名では褐錫鉱と呼ぶ。読みは「かっしゃくこう」である。

加藤が著した原著論文には発見の経緯が記されている[1]。それ補足する形で褐錫鉱が承認されるまでの流れを追ってみたい。まず黄錫鉱という鉱物があり、それはそうとう以前から知られていた。そして研究者らが黄錫鉱を調べている中で黄錫鉱としては変な光学性をもつ鉱物が見いだされていくようになる。それらは「Isostannite」や「Zinnkies?」などと呼ばれていたが、1960年に「Hexastannite」と呼ばれるようになる[2]。その一方でそれは新鉱物とするにはデータが不足しており、詳細なデータがそろうまで名前だけの存在であった[3]。そして日本からもこのHexastanniteが各地の鉱山から報告されるようになっていくが、微細なため光学的性質からの同定にとどまっていた[4-6]。

そのような状況であったが、単結晶X線回折にも使える大きなHexastanniteが岡山県金生(こんじょう)鉱山から見いだされた。加藤はこのHexastanniteからデータを集め、国際鉱物学連合の新鉱物・鉱物・命名委員会は加藤に対して新しい名前を付けることを許可し、褐錫鉱 / Stannoiditeが生まれることになった。一方のいわゆるHexastanniteは模式標本の研究が完了するまでその名前を残すことになった。後の研究でHexastanniteは褐錫鉱と同じ鉱物であることが判明したとされるが、その具体的な文献を見つけることができなかった。国産のHexastanniteについては加藤と藤木によって再検証が行われ、いずれも褐錫鉱であることが判明している[7]。また褐錫鉱の化学組成は当初はCu5(Fe,Zn)2SnS8と報告されたが、後の単結晶X線解析によってCu8(Fe,Zn)3Sn2S12へ改められた[8]。

写真は原産地の金生鉱山から産した標本となる。褐錫鉱は劈開を示さず貝殻状の割れ口を示す。褐錫鉱を取り囲むやや色が明るめの金属鉱物はモースン鉱 / Mawsoniteであり、褐錫鉱と似たような成分の鉱物である。褐錫鉱は金生鉱山の他に、明延鉱山、生野鉱山、多田鉱山、富国鉱山、足尾銅山などが産地として知られている。

[1] 第一文献
[2] Ramdohr P. (1960) Die Erzmineralien und ihre Verwachsungen, 3rd Ed. P514-515.
[3] Fleischer M. (1961) New Mineral Names, American Mineralogist, 46, 1204.
[4] Nakamura T. (1961) Mineralization and wall-rock alteration at the Ashio copper mine, Japan. Jounal Institute Polytechnics, Osaka City University, ser.G., v.5, 53-127.
[5] 清水照夫, 加藤昭, 松尾源一郎 (1966) 京都府富国鉱山産の鉱物 特にコサラ鉱・ブーランジェ鉱・六方黄錫鉱・次成砒素鉱物について. 地学研究, 17, 201-209.
[6] 今井秀喜, 藤木良規, 塚越重明 (1967) 近畿地方西部の中生代後期ないし新生代初期鉱床生成区. 鉱山地質, 17, 50 (第17回学術講演要旨).
[7] Kato A. and Fujiki Y. (1969) The occurrence of stannoidites from the xenothermal ore deposits of the Akenobe, Ikuno, and Tada mines, Hyogo Prefecture, and the Fukoku mine, Kyoto Prefecture, Japan. Mineralogical Journal, 5, 417-433.
[8] 第二文献

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IMA No./year: 1968-028(2012s.p.)
IMA Status: Rd (redefined)
模式標本:東北大学 (Handbook of Mineralogyから引用) → 産総研地質標本館GSJ M28255, GSJ M28842(坂野氏調べ)

神津閃石 / Mangano-ferri-eckermannite (原記載はKozulite)

NaNa2(Mn2+4Fe3+)Si8O22(OH)2

模式地:岩手県 田野畑村 田野畑鉱山

第一文献:南部松夫, 谷田勝俊, 北村強 (1969) 岩手県田野畑鉱山産新鉱物神津閃石について. 岩石鉱物鉱床学会誌, 62, 311-328.

第二文献:Barkley M.C., Yang H., Downs R.T. (2010) Kôzulite, an Mn-rich alkali amphibole. Acta Crystallographica. E66, i83.

神津閃石 / Mangano-ferri-eckermannite
模式地標本 愛石家ほど受け入れられないかもしれないが、分析してみるとこれが神津閃石だった。

東北大学の南部松夫らによって岩手県田野畑鉱山から見いだされた新種の角閃石で、鉱物名は東北大学で岩石鉱物鉱床学教室を設立した鉱物学者・岩石学者の神津俶祐(こうづしゅくすけ)(1880-1955)にちなむ。南部は神津閃石の発見により櫻井賞第8号メダルを受賞している。

神津閃石は角閃石超族の一員である。角閃石超族はAB2C5T8O22W1-2を一般式としており、Oを除くアルファベットの部分に様々な元素が多様な置換様式で入る。その多様性により角閃石超族を構成する種は100を軽く越えており、時代を経るごとに一定の規約で種を分別することが困難になってきている。そのため角閃石の命名規約はこれまでに何度も改訂されており、現時点は2012年のものが最新である[1]。一方でこの命名規約は一律的では無い。多くの例外をもうけており、その内容は大変ややこしくなっている。いずれにしても角閃石の論文を読む際はいつの命名規約の時に書かれたものかを意識する必要がある。

神津閃石に関して言うとこれまでは神津閃石 / Kozuliteという種名であったものが、2012年の改訂で化学組成の定義はそのままに名前が変更されてしまった。そのためIMA StatusはRd(redefined)となっている。この命名規約の肝を簡潔に記すと「マグネシウム(Mg)とアルミニウム(Al)を主成分とする種についてのみルート名を認める」である。つまりMgとAlを主成分とするエッケルマン閃石からみて、神津閃石はマンガン(Mn2+)と三価鉄(Fe3+)を置換した種に当たる。そして、マンガン優位を意味する「マンガノ / mangano-」と三価鉄優位を意味する「フェリ / ferri-」がエッケルマン閃石 / eckermanniteの接頭語となり、結果、マンガノフェリエッケルマン閃石 / Mangano-ferri-eckermanniteが現時点での正式な学名となっている。ただし日本では慣例的に和名で記すので、そこで神津閃石とすることには問題は無い。

南部らは神津閃石の産状や化学組成、X線回折パターンなど新鉱物記載には十分な鉱物学的情報を記載したが[2]、結晶構造の解析までは行っていない。2010年になりBarkleyら[3]は神津閃石の結晶構造解析を行ったことを主張しているのだが、よく読むと彼らの使った試料は神津閃石ではない。この論文中で使用された結晶の化学組成の特徴をまとめるとMg > Mn2+およびFe3+ > Alである。これはマグネシオアルベソン閃石 / Magnesio-arfvedsoniteに該当する。田野畑産の試料を使ったことは確かなようであるが、いずれにしても客観的事実として神津閃石の結晶構造解析はいまだ行われていないことになる。

神津閃石はブラウン鉱・バラ輝石・石英などを伴い、肉眼的に帯赤黒色ないし黒色を示すことが第一文献に記されている。実際にこういったいわゆる神津閃石の標本は田野畑鉱山で多くみかける。ところがそれらを分析してみると、ことごとくが神津閃石に該当しなかった。実は上の写真に示したオレンジ色の結晶こそが神津閃石の標本となる。では下の写真のように赤々黒々した、いわゆる神津閃石とされる標本は何であろうか。調べてみたところこういった標本はマグネシオアルベソン閃石や、またそれ以外の場合のことが多々あった。こういった標本はアルカリ角閃石とラベルを書けば間違いではないが、それ以上の分類を行うことは難しい。それにしても田野畑鉱山の角閃石は一筋縄ではいかない。全体をまじめに調べ直す必要があるだろう。

[1] Hawthorne F.C., Oberti R., Harlow G.E., Maresch W.V., Martin R.F., Schumacher J.C., Welch M.D. (2012) Nomenclature of the amphibole supergroup. American Mineralogist, 97, 2031-2048
[2] 第一文献
[3] 第二文献

Alkari amphibole
模式地標本 一般にこうったものが神津閃石の標本とされていたが、調べた範囲では神津閃石ではないことだけは確実。一方でこういった標本は中身が複雑で鉱物種を特定することが非常に困難。とりあえずアルカリ角閃石としてラベルを書くほかない。

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IMA No./year: 1968-030
IMA Status: A (approved)
模式標本:国立科学博物館 (Handbook of Mineralogyから引用)

阿仁鉱 / Anilite

Cu7S4

模式地:秋田県 阿仁町 阿仁鉱山 (現:北秋田市)

第一文献: Morimoto N., Koto K., Shimazaki Y. (1969) Anilite, Cu7S4, a new mineral. American Mineralogist, 54, 1256-1269.

第二文献:Koto K., Nobuo M. (1970) The crystal structure of anilite. Acta Crystallographica, B26, 915-924.

阿仁鉱 Anilite
模式地標本

大阪大学の森本信男らによって新鉱物で、発見地から阿仁鉱と命名された。森本は阿仁鉱の発見により櫻井賞第18号メダルを受賞している。

森本は阿仁鉱山からデュルレ鉱 / Djurleiteも見いだしており、これも国産新鉱物と言われることがあったが事情は微妙であるようだ。デュルレ鉱に関してはメキシコ産の試料についてRoseboom氏が先に命名しており、森本は彼らとは独立にデュルレ鉱に相当する鉱物を発見していたが、その名称を使うことに同意している[1]。そういった事情からデュルレ鉱は国産新鉱物ではなく、メキシコ産新鉱物という扱いになっている。ただ日本産のデュルレ鉱の記載は本家の記載論文に先立って行われている[2]。

阿仁鉱とデュルレ鉱は銅-硫黄(Cu-S)成分系の鉱物で、似たような化学組成で輝銅鉱 / Chalcociteと方輝銅鉱 / Digeniteも知られる。これらをCuxSとして表すと、x=2が輝銅鉱、x=1.94がデュルレ鉱、x=1.8が方輝銅鉱となる。阿仁鉱はx=1.75である。一方でこれらが全部共存することはなく、生成の温度によって組み合わせが異なる。阿仁鉱はデュルレ鉱と共存することが多いようだ[3]。ざっくり示すと、低温では阿仁鉱やデュルレ鉱が出現し、高温では輝銅鉱や方輝銅鉱が安定となる。

阿仁鉱の安定領域(とくに温度)は非常に狭い[4]。阿仁鉱は70℃以上でコベリンと方輝銅鉱へ分解してしまう。瞬間的に発生するような熱や衝撃にも非常に弱く、例えば分析用の薄片を作る際の研磨や、粉末X線回折のための乳鉢でのすりつぶしでもあっさり分解してしまう。それゆえに阿仁鉱は存在していたとしても方輝銅鉱として誤って認識されていた可能性があるだろう。今となっては液体窒素で冷やしながら試料を加工することで阿仁鉱の粉末X線パーターンが取得できることが判明しており、多くの産地から阿仁鉱の産出が報告されている。

阿仁鉱山は元々は金鉱山として開発されたが、次第に銀・銅が主な鉱石となり、享保年間には産銅日本一となったことが知られる。幾度かの休山をはさみ昭和の時代まで操業していた。写真の標本は阿仁鉱山から産出した結晶標本となる。一見では単結晶にみえる標本であっても、そのほとんどは阿仁鉱+デュルレ鉱の混合であることが知られている[3]。この標本もおそらくはそうであろう。阿仁鉱とデュルレ鉱の結晶構造では硫黄の配列がわりと似ており、その硫黄が並ぶ面を介してエピタキシャル関係が成立しやすい [3, 5]。

[1] Roseboom E.H. (1962) Djurleite, Cu1.96S, a new mineral. American Mineralogist, 47, 1181-1184.
[2] Morimoto N (1962) Djurleite, a new copper sulphide mineral. Mineralogical Journal, 3, 338-344.
[3] 第一文献
[4] Morimoto N., Koto K. (1970) Phase relations of the Cu-S system at low temperatures: stability of anilite. American Mineralogist, 55, 106-117.
[5] 第二文献

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IMA No./year: 1968-014
IMA Status: A (approved)
模式標本:国立科学博物館 M16403, National School of Mines, Paris, France; National Museum of Natural History, Washington, D.C., USA, 121926, 160136 (Handbook of Mineralogyから引用)

河津鉱 / Kawazulite

Bi2Te2Se

模式地:静岡県 下田市 河津鉱山

第一文献: Kato A (1970) Kawazulite Bi2Te2Se, in Introduction to Japanese Minerals, Geological Survey of Japan, 39, 87-88.

第二文献:Miller R (1981) Kawazulite Bi2Te2Se, related bismuth minerals and selenian covellite from the Northwest Territories. The Canadian Mineralogist, 19, 341-348.

河津鉱 Kawazulite
河津鉱山大沢樋2号坑

国立科学博物館の加藤昭によって記載された新鉱物で、発見地である河津鉱山から名付けられた。1969年の鉱物学会で河津鉱が発表され[1]、1970年に地質調査所から発行されたIntroduction to Japanese Mineralsでも紹介されいるものの[2]、現在までに正規の記載論文は出版されていない。また、タイプ標本は櫻井欽一の標本であることが知られる[3]。その当時、河津鉱の確実な標本は櫻井標本の一個体だけだった[4]。

河津鉱山は安山岩質岩を母岩とした中温の熱水鉱床で金を伴う。いくつかの鉱脈と支山が知られ、南西側にある大沢樋と檜沢樋では黄鉄鉱化作用を伴ったテルルに富む鉱脈を採掘していた。そのため櫻井標本の河津鉱は大沢樋もしくは檜沢樋のどちらかから産出したものと推測されるが、文献にはその詳細が書かれていない。またこれらの樋も実際は大沢樋○号坑といった様にさらに細分化されており、その何号坑かで産出鉱物組み合わせが変わってくる。そのため自分の標本ならば樋や坑といった詳細な産地もラベルに記載したい。

海外では1981年にカナダ、ノースウエスト準州にある小規模なウラン(U)-銅(Cu)鉱床から河津鉱が見いだされている[5]。その後、アメリカやロシア、日本でも寿都鉱山[6]から産出が知られるようになったが、稀少鉱物であり資源として利用もないことから、河津鉱は愛石家の間だけで主に認識される鉱物であろう。一方で物質としてのBi2Te2Seは鉱物の河津鉱より先に合成物で知られており[7]、こちらは今現在の物理業界では大変有名となっている。2016年のノーベル物理学賞を受賞した研究者によって理論的に予想されていた「トポロジカル絶縁体」、それを体現する物質の一つがBi2Te2Seであり、それは河津鉱の端成分。河津鉱は天然に生じるトポロジカル絶縁体と呼ばれた[8]。

上の写真は河津鉱山大沢樋2号坑から得られた河津鉱の標本となる。銀白色の非常に薄い板という典型的な惨状となっている。この標本は分析を行い河津鉱であることを確認してあるが、全く同様の産状で硫テルル蒼鉛鉱 / Tetradymite (Bi2Te2S)やパラグアナジュアト鉱 / Paraguanajuatite (Bi2Se3)が産出する。また、一枚の板が河津鉱+ボーダノウィッチ鉱 / Bohdanowiczite (AgBiSe2)で構成されていることもあった。率直な感想では肉眼での鑑定はほとんど不可能に近いと思える。また下の写真は合成した河津鉱の結晶になる。天然では見かけることのない河津鉱の結晶だが、合成するのは容易である。

Kawazulite Bi2Te2Se
河津鉱の合成結晶

[1] 加藤昭 (1969) 新鉱物河津鉱(Kawazulite)Bi2Te2Se. 日本鉱物学会年会講演予講集, P33.
[2] Kato A. (1970) Kawazulite Bi2Te2S, in Introduction to Japanese Minerals, Geological Survey of Japan, 39, 87-88.
[3] Fleischer M. (1972) New mineral names. American Mineralogist, 57, 1311-1317.
[4] 加藤昭 (1973) 櫻井鉱物標本, 櫻井欽一博士還暦記念事業会, pp.177.
[5] Miller R. (1981) Kawazulite Bi2Te2Se, related bismuth minerals and selenian covellite from the Northwest Territories. The Canadian Mineralogist, 19, 341-348.
[6] Shimizu M., Schmidt S.T., Stanley C.J., Tsunoda K.(1995) Kawazulite and unnamed Bi3(Te, Se, S)4in Ag-Bi-Te-Se-S mineralization from the Suttsu mine, Hokkaido, Japan. Neues Jahrbuch für Mineralogie – Abhandlungen, 169, 305–308.
[7] Nakajima S. (1963) The crystal structure of Bi2Te3-xSex. Journal of Physics and Chemistry of Solids, 24, 479-485.
[8] Gehring P., Benia H.M., Weng Y., Dinnebier R., Ast, C.R., Burghard M., Kern K. (2013) A Natural Topological Insulator. Nano Letters, 13, 1179-1184.

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IMA No./year: 1969-024
模式標本:国立科学博物館 MA5635; National Museum of Natural History, Washington, D.C., USA, C252, 98012, 94600(Handbook of Mineralogyから引用)

若林鉱 / Wakabayashilite

(As,Sb)6As4S14

模式地:群馬県 下仁田町 西ノ牧鉱山

第一文献: Kato A., Sakurai K., Ohsumi K. (1970) Wakabayashilite (As,Sb)11S18, in Introduction to Japanese Minerals, Geological Survey of Japan, 39, 92-93.

第二文献: Bindi L, Bonazzi P, Zoppi M, Spry P G (2014) Chemical variability in wakabayashilite: a real feature or an analytical artifact?. Mineralogical Magazine, 78, 693-702.

若林鉱 Wakabayashilite
模式地標本 黄色毛状が本鉱。赤は鶏冠石で、黄色塊は雄黄。

国立科学博物館の加藤昭らによって群馬県西ノ牧鉱山から発見され、若林弥一郎にちなみ命名された。模式地の若林鉱について記載論文はこれまで出版されておらず、Introduction to Japanese Mineralsにおいてその概略が報告されるにとどまっている[1]。また若林鉱の二番目の産地としてアメリカのWhite Cap鉱山も同時に報告された[1]。

若林弥一郎(1874-1943)は東京帝国大学を卒業し、三菱鉱業の鉱山技師として奉職した。若林は鉱物収集家としても有名で、後に若林標本と呼ばれる鉱物コレクションを遺す。若林標本は東京大学総合博物館に寄贈され、東大出版会から型録が出版されている[2]。若林標本について実質的な標本管理を行った豊遙秋によって、「雄黄」とラベルがついた西ノ牧鉱山産の標本に若林鉱が伴われていることが見いだされた。また若林標本は古くから研究に使用されて、その成果はBirträge zur Mineralogie von Japan[3]や日本鉱物誌第三版[4]にも収録されている。

西ノ牧鉱山は昭和20年代から採掘された鉱山で、安山岩中の石英脈に伴われる鶏冠石 / Realgarや雄黄 / Opimentを鉱石としていた。いずれも砒素(As)と硫黄(S)からなる鉱物で、鶏冠石は華々しく目立つ赤色を特徴としている。雄黄もその名が示すように黄色を呈する鉱物で、通常は塊状や箔状で産出するが、西ノ牧鉱山では針状の産状が知られていた。実際はこれが若林鉱であったが、以前は深く調べられることもなく「針状雄黄」という名前で標本が流通していた。

記載論文が出版されていないためこの針状雄黄が調べられた経緯は定かではないが、加藤らの研究によってこの針状雄黄は新種であることが判明し、若林鉱と命名されて1969年にIMAから新鉱物としての承認を受けている[1]。一方で若林鉱の化学組成と結晶構造については検証が続けられ、まだ結論がついていない。2005年に化学組成と結晶構造が更新されているが[5]、最新の研究結果では若林鉱の結晶構造はAs4S5分子群のみで構成されている可能性が示唆されている[6]。

写真の標本は模式地からの標本となる。石英の晶洞には赤い鶏冠石と黄色塊状の雄黄に針状の若林鉱が伴われる。若林鉱は群馬県から発見された最初の新鉱物である。

[1] 第一文献
[2] Sadanaga R., Bunno M. (1974) The Wakabayashi Mineral Collection. The University Museum, The University of Tokyo, University of Tokyo Press, pp.177.
[3] Ito T. (1937) Birträge zur Mineralogie von Japan (II). 鉱物會, pp.168.
[4] 伊藤貞一, 櫻井欽一 (1947) 日本鉱物誌第三版 上巻, 中文館書店, pp.568.
[5] Bonazzi P., Lampronti G.I., Bindi L., Zandari S. (2005) Wakabayashilite, [(As,Sb)6S9][As4S5]: crystal structure, psuedosymmetry, twinning, and revised chemical formula. American Mineralogist, 90, 1108-1114.
[6] 第二文献

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IMA No./year: 1970-034
模式標本:東北大学(Handbook of Mineralogyから引用)(現在は産総研地質標本館に存在すると推測される)

高根鉱 / Takanelite

(Mn2+,Ca)2xMn4+1-xO2·0.7H2O

模式地:愛媛県 西予市 野村鉱山

第一文献: 南部松夫, 谷田勝俊 (1971) 新鉱物高根鉱について. 岩石鉱物鉱床学会誌, 65, 1-15.

第二文献: Kim S.J. (1991) New characterization of takanelite. American Mineralogist, 76, 1426-1430.

高根鉱 Takanelite
模式地丸野鉱床からの標本。高根鉱と軟マンガン鉱が共生している。

東北大学の南部松夫と谷田勝俊によって愛媛県野村鉱山から発見された新鉱物で、X線結晶学の進歩発展に貢献した東北大学の高根勝利(1899-1945)にちなんで命名された。当初は東北大学に模式標本が保管されていたようだが、南部の標本は地質調査所(現・産総研地質標本館)へ移管されているので[1]、現在は地質標本館に保管されているものと思われる。

高根鉱はランシー鉱 / Ranciéiteからみてカルシウム(Ca)→二価マンガン(Mn2+)の置換体に相当する鉱物として発表された[2]。南部らは本邦におけるランシー鉱の分布を調査し、その二価マンガン置換体の存在を予想して研究に臨んだことが第一文献に記してある。そして愛媛県野村鉱山から南部が予想していた二価マンガン置換体が見いだされた。高根鉱は1967年8月に採集され、3年後の1970年に国際鉱物学連合から新鉱物の承認が与えられている。

愛媛県には「野村」の名を冠する鉱山が私の知るところで3カ所ある。一つはドロマイト鉱床で、旧・野村町伊勢井谷にあった。もう一つが旧・野村町植木にある野村鉱山で、キースラーガ鉱床の銅を主に採掘していた。ここの鉱石は金にも富み、鉱石1トンあたりに最大で29グラムの金が含まれたという[3]。高根鉱を産した野村鉱山は同じく旧・野村町植木にあり、キースラーガ鉱床のやや南に位置する。ここはいわゆるマンガン山で、二酸化マンガンが主な鉱石となっている。南部らが訪れた際は丸野鉱床と東官山鉱床が採掘されていた。高根鉱は丸野鉱床の最下部10号坑で見いだされている。

高根鉱は単独で産出することはなく、必ず2種類以上の鉱物が密雑して共生することが知られる。第一文献によると共生鉱物は、クリプトメレン鉱 / Cryptomelane、軟マンガン鉱 / Pyrolusite、エンスート鉱 / Nsutite、バーネス鉱 / Birnessite、および轟石 / Todorokiteとされる。いずれも(含水)マンガン酸化物であり、標本の外観上の特徴と構成鉱物の一義的な対応は困難である。南部らは高根鉱の分離を試みたが、どうしても少量の不純物は残ってしまうようである。

不純物の存在と結晶性の低さに起因して、高根鉱の化学組成および結晶構造は完全には解明されてない。南部らは含水量に関して問題点が残っていることに言及し、またX線回折線について韓国産の高根鉱を用いた研究で指数の割り振りが更新されている[4]。一方でランシー鉱については化学組成と結晶構造は決まっており[5]、高根鉱についてもその解明が期待される。

高根鉱の標本は二つ所有しており見た目は同じである。X線回折で確認してみると、ひとつは高根鉱と軟マンガン鉱が検出され、もうひとつの標本は高根鉱とエンスート鉱の共生であった。写真は軟マンガン鉱と共生している高根鉱の標本となる。

[1] 坂巻幸雄 (1988) 南部鉱石標本-山岡標本、筑波へ. 地質ニュース, 410, 9-10.
[2] 第一文献
[3] 愛媛県の金銀鉱資源. 愛媛県地下資源資料, 10, 11-24.
[4] 第二文献
[5] Ertl A., Pertlik F., Prem M., Post J.E., Kim S.J., Brandstatter F., Schuster R. (2005) Ranciéite crystals from Friesach, Carinthia, Austria. European Journal of Mineralogy, 17, 163-172.

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IMA No./year: 1971-032
IMA Status: A (approved)
模式標本:国立科学博物館M18829(Handbook of Mineralogyから引用)

南部石 / Nambulite

LiMn2+4Si5O14(OH)

模式地:岩手県 洋野町 舟子沢鉱山

第一文献: Yoshii M., Aoki Y., Maeda K. (1972) Nambulite, a new lithium- and sodium-bearing manganese silicate from the Funakozawa mine, northeastern Japan. Mineralogical Journal, 7, 29-44

第二文献: Nagashima M, Armbruster T, Kolitsch U, Pettke T (2014) The relation between Li ↔ Na substitution and hydrogen bonding in five-periodic single-chain silicates nambulite and marsturite: A single-crystal X-ray study. American Mineralogist, 99, 1462-1470.

南部石 / Nambulite
福島県御斎所鉱山

旧・地質調査所の吉井守正らによって記載された新鉱物で、東北大学の南部松夫にちなみ命名された。最初の標本は岩手県舟子沢鉱山の鉱山長だった大倉嘉造によって採集され、鑑定は地質調査所の吉井に依頼された。当初はバラ輝石と考えられていたが、その後の詳しい調査によってリチウム(Li)を含む新鉱物であることが判明する。吉井は南部石の発見により櫻井賞(第10号メダル)を受賞している。

南部松夫(1917-2009)は東北帝国大学岩石鉱物鉱床教室を卒業し、同大学の選鉱精錬研究所に退職まで勤めた。南部は多くの金属鉱床について研究を行い、その研究の過程で日本産新鉱物の赤金鉱、萬次郎鉱、神津閃石、高根鉱、上国石について筆頭で研究をまとめている。また東北地方の鉱物誌や鉱床誌を執筆し、収集された標本は南部標本として地質標本館などに寄贈された[2-4]。

吉井らが報告した南部石にはリチウム(Li)とナトリウム(Na)が含まれ、わずかにリチウムが多いものの、その量比はLi : Na = 1.00 : 0.98とほとんど等しかった[1]。そのため南部石として最初に提案された化学組成式はLiNaMn8Si10O28(OH)2であった。ところがこの化学組成はいきなり疑問が投げかけられる。南部石の記載論文の次ページから始まる当時ハーバード大学にいた伊藤順の論文では、合成実験の結果に基づくと南部石の化学組成式はLiMn4Si5O14(OH)となるべきだと書かれている[5]。そして大阪大学の成田らによって南部石の単結晶解析が行われ、伊藤から提案されていた化学式が正しいことが確認された[6]。この研究に使用された試料は舟子沢産の南部石である。また後にリチウム-ナトリウム置換に伴う水素結合様式の変化も報告されている[7]。

吉井らの記載によると舟小沢鉱山で見つかった南部石の結晶は8ミリの柱状結晶でオレンジ色を帯びた赤褐色とされる。掲載した写真は福島県御斎所鉱山から産した南部石標本で、ここでは小ぶりだが透明感があって非常に美しい結晶が見られる。ナミビアのKombat鉱山から産出した南部石の結晶は宝石用にカットされたことがある[8]。

[1] 第一文献
[2] 坂巻幸雄 (1988) 南部鉱石標本-山岡標本、筑波へ. 地質ニュース, 410, 9-10.
[3] 南部松夫 (1969) 福島県鉱物誌. 福島県企画開発部開発課, pp.265.
[4] 南部松夫 (1972) 宮城県鉱物誌. 宮城県商工労働部中小企業課, pp.141.
[5] Ito J. (1972) Synthesis and crystal chemistry of Li-hysro-pyroxenoids. Mineralogical Journal, 7, 45-65.
[6] Narita H., Koto K., Morimoto N., Yoshii M. (1975) The crystal structure of nambulite (Li,Na)Mn4Si5O14(OH). Acta Crystallographica, B31, 2422-2426.
[7] 第二文献
[8] 砂川一郎 (1982) 南部石と杉石 日本で新鉱物として発見され、その後宝石質の結晶が見つかっためずらしい鉱物2種. 宝石学会誌, 9, 19-23.

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IMA No./year: 1973s.p.
IMA Status: Rd (redefined)
模式標本:設定なし

ルテニイリドスミン / Rutheniridosmine

(Ir,Os,Ru)

模式地:北海道 鷹泊地域ほか

第一文献: Harris D.C., Cabri L.J. (1973) The nomenclature of the natural alloys of osmium, iridium and ruthenium based on new compositional data of alloys from world-wide occurrences. The Canadian Mineralogist, 12, 104-112.

第二文献: Harris D.C., Cabri L.J. (1991) Nomenclature of platinum-group-element alloys: review and revision. The Canadian Mineralogist, 29, 231-237.

PGE placer
雨竜川の砂金・砂白金

ルテニイリドスミンは新鉱物として申請された経緯をもっておらず、白金族鉱物の命名規約が改訂された際に誕生した新鉱物である。そしてそのときに参照されたデータのなかで、日本のものがもっとも古かったためにルテニイリドスミンの模式地が日本としてオフィシャルリストに登場することになった。ルテニイリドスミンの名前が登場した1973年がIMA No./yearに登録され、その経緯からIMA StatusはRd (redefined)となっている。

1936年、東北帝国大学の青山新一は北海道鷹泊地域を流れるニセイパロマップ川(雨竜川の支流)から得られた砂白金を非常に丁寧に分別・分析し、六方晶系でオスミウム(Os)-イリジウム(Ir)-ルテニウム(Ru)がちょうど等しいという化学組成を得た。それまでそのような組成比を持つ白金族鉱物は知られておらず、青山はそれを新鉱物「ルテノスミリジウム / Ruthenosmiridium」と名付けた。論文は東北帝国大学理科報告に掲載され[1]、概要は岩石鉱物鉱床学会誌の研究短報文[2]や地質学雑誌の雑報[3]で報告されている。

青山のルテノスミリジウムは不遇であった。1963年に成立した最初の命名規約の中で「Osmiridium」という名前は立方晶系の鉱物に対して付くものだと定義された[4]。そうなるとルテノスミリジウム / Ruthenosmiridiumは六方晶系の鉱物であるが、立方晶系を意味する「Osmiridium」が名前に入るという矛盾を抱えた鉱物になった。ところがこの命名規約は青山の論文を引用せず、ルテノスミリジウムについて言及すら無い。そのためルテノスミリジウムはこれ以降の学術文献や教科書にも登場しないという事態になる。例えば1966年にStrunzが出版した著名な「Mineralogische Tabellen」という教科書の中にある鉱物名リストでも青山のルテノスミリジウムの記述は無く、代わりに「Ruthen-Iridosmium」という似ているが異なった名前が登場している[5]。さらに1970年に出版されたIntroduction to Japanese Mineralsにおいてルテノスミリジウムは「日本から最初に発見されたが疑問符が付けられた鉱物」に分類された[6]。

1973年に改訂された命名規約によって青山およびルテノスミリジウムの名誉は回復されることになる[7]。この命名規約にはルテノスミリジウムの名前がこれまで不当に扱われていたことが明記され、ルテノスミリジウムは改めて一つの鉱物種として復活した[7]。その一方で名前と実体は離れて設定されてしまう。この命名規約では諸事情を考慮して、ルテノスミリジウムという名前はオスミウム(Os)-イリジウム(Ir)-ルテニウム(Ru)の三角図でイリジウム側の一部に当てはめることになった(下図1)。そしてこの三角図の大部分を占める領域に対しては、新たにルテニイリドスミン / Rutheniridosmineという名前がもうけられた(下図1)。青山が当初ルテノスミリジウムとして発表した鉱物は、新しい定義ではルテニイリドスミンの組成領域に該当し、データとして引用されている文献の中でもっとも古いものが青山の論文であったことから、ルテニイリドスミンの模式地として日本がオフィシャルリストに掲載されることになった。

白金族鉱物の命名規約は1991年に再び改訂を受ける[8]。そこでは化学組成に対して50%で種を分け、また結晶構造についても考慮されている。結果として結晶構造の制約からルテニイリドスミンの範囲はかなり限定されることになった(下図2)。青山のデータはこの図の中でほぼ重心の位置にプロットされる。またこの時点でルテノスミリジウムは抹消となった[9]。この命名規約は全体的に完成度が高く、今後は改訂されることはないだろう。それでもこれまでに何度も命名規約が改訂された弊害は感じられ、最新の研究報告であっても未だに古い名前が登場することがある。

写真の標本は北海道雨竜川からの砂白金となる。おそらくは供給元が近いせいだろう、割と大きな粒子が存在している。砂白金は見た目での区別ができない。分析してみると自然オスミウム、自然イリジウム、ルテニイリドスミン、自然白金が見つかった。ルテニイリドスミンの一部には輝イリジウム鉱 / Irarsite (IrAsS)が伴われることがあった。

1991年以前のOs-Ir-Ru系鉱物種
図1. 1973年当時のオスミウム(Os)-イリジウム(Ir)-ルテニウム(Ru)の鉱物種。今はこの図を元に学術的な議論してはいけないが、命名規約が改訂を繰り返したこともあって未だにこの図を元にした発表がある。

1991年以降のOs-Ir-Ru系鉱物種
図2. 1991年から現在までのオスミウム(Os)-イリジウム(Ir)-ルテニウム(Ru)の鉱物種。合計で4種にまとめられた。今後は改訂されることは無いだろう。

[1] Aoyama S. (1936) A New mineral “Ruthenosmiridium”. The Science reports of the Tohoku Imperial University. Series 1, Mathematics, Physics, Chemistry, Anniversary Voume dedicated to Professor Kotaro Honda, 527-547.
[2] 青山新一 (1936) 新鉱物ルテノスミリヂウム(Ruthenosmiridium). 岩石鉱物鉱床学会誌, 2, 77-79.
[3] 青山新一 (1936) 新鉱物ルテノスミリヂウム(Ruthenosmiridium). 地質学雑誌, 43, 634-636.
[4] Hey M.H. (1963) The nomenclature of natural alloys of osmium and iridium. Mineralogical Magazine, 33, 712-717.
[5] Strunz H. (1966) Mineralogische Tabellen 4th edition. p93. (pp.560).
[6] Ruthenosmiridium. in Introduction to Japanese Minerals, Geological Survey of Japan, 115-116.
[7] 第一文献
[8] 第二文献
[9] Jambor J.L., Grew E.S. (1992) New mineral names. American Mineralogist, 77, 207-213.

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IMA No./year: 1973-011

木下雲母 / Kinoshitalite

BaMg3(Si2Al2)O10(OH)2

模式地:岩手県 野田村 野田玉川鉱山

原著:吉井守正,前田憲二郎,加藤敏郎,渡辺武男,由井俊三,加藤昭,長島弘三(1973)岩手県野田玉川鉱山産新鉱物木下石(kinoshitalite),地学研究,24, 181-190

木下雲母 Kinoshitalite
模式地標本

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IMA No./year: 1973-066

備中石 / Bicchulite

Ca2Al2SiO6(OH)2

模式地:岡山県 高梁市 布賀鉱山

原著:Henmi C., Kusachi I., Henmi K., Sabine P.A., Young B.R. (1973) A new mineral bicchulite, the natural analogue of gehlenite hydrate, from Fuka, Okayama Prefecture, Japan and Carneal, County Antrim, Northern Ireland. Mineralogical Journal, 7, 243-251

備中石 Bicchulite
模式地標本 ゲーレン石の仮晶(内部に本鉱がある)

備中石 Bicchulite
破断面

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IMA No./year: 1974(1997 s.p.)

ソーダレビ沸石 / Lévyne-Na

Na6(Si12Al6)O36·18H2O

模式地:長崎県 壱岐島 長者原

原著:Mizota T., Shibuya G., Shimazu M., Takeshita Y. (1974) Mineralogical studies on levyne and erionite from Japan. Geological Society of Japan Memoirs, 11, 283-290.
Coombs D.S., Alberti A., Armbruster T., Artioli G., Colella C., Galli E., Grice J.D., Liebau F., Mandarino J.A., Minato H., Nickel E.H., Passaglia E., Peacor D.R., Quartieri S., Rinaldi .R, Ross M., Sheppard R.A., Tillmanns E., Vezzalini G., (1997) Recommended nomenclature for zeolite minerals: report of the Subcommittee on Zeolites of the International Mineralogical Association, Commission on New Minerals and Mineral Names, The Canadian Mineralogist, 35, 1571-1606

ソーダレビ沸石 Lévyne-Na
模式地標本 この産地では芯に板状の本鉱がありそこから繊維状のソーダエリオン沸石が生えているのが典型。まれには本鉱の六角板状結晶が見える(中央)。化学組成でNa3Ca1.5組成を中間にどちらが多いかでソーダタイプかカルシウムタイプかが分けられる。この標本はNa3.88Ca1.04K0.35となりソーダレビ沸石となる。

カルシウムレビ沸石 Lévyne-Ca
参考までにこちらはカルシウムレビ沸石(島根県隠岐の島)。化学組成はCa2.76Na0.96K0.18

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IMA No./year: 1974-010a

都茂鉱 / Tsumoite

BiTe

模式地:島根県 益田市 都茂鉱山

原著:Shimazaki H., Ozawa T. (1978) Tsumoite, BiTe, a new mineral from the Tsumo mine, Japan. American Mineralogist, 63, 1162-1165

都茂鉱 Tsumoite
模式地標本

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IMA No./year: 1974-013

自然ルテニウム / Ruthenium

Ru

模式地:北海道 幌加内町 雨竜川

原著:Urashima Y., Wakabayashi T., Masaki T., Terasaki Y. (1974) Ruthenium, a new mineral from Horakanai, Hokkaido, Japan. Mineralogical Journal, 7, 438-444.

Platinum Group Element Mineral (Placer)
北海道沼田町熊の沢
左下:自然オスミウム
中央上:ルテニイリドスミン
右下:自然ルテニウム,Ru50.9Ir28.6Os20.5

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IMA No./year: 1974-031

青海石 / Ohmilite

Sr3(Ti,Fe3+)(Si2O6)2(O,OH)·2H2O

模式地:新潟県 糸魚川市 青海町 金山谷

原著:Komatsu M., Chihara K., Mizota T. (1973) A new strontium-titanium hydrous silicate mineral from Ohmi, Niigata Prefecture, Central Japan. Mineralogical Journal, 7, 298-301

青海石 Ohmilite
模式地標本

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IMA No./year: 1974-046

益富雲母 / Masutomilite

KLiAlMn2+(Si3Al)O10(F,OH)2

模式地:滋賀県 大津市 田上山

原著:Harada K., Honda M., Nagashima K., Kanisawa S. (1976) Masutomilite, manganese analogue of zinnwaldite, with special reference to masutomilite-lepidolite-zinnwaldite series. Mineralogical Journal, 8, 95-109

益富雲母 Masutomilite
模式地標本

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IMA No./year: 1974-049

磐城鉱 / Iwakiite

Mn2+Fe3+2O4

模式地:福島県 いわき市 御斎所鉱山

原著:Matsubara S., Kato A., Nagashima K. (1979) Iwakiite, Mn2+(Fe3+,Mn3+)2O4, a new tetragonal spinelloid mineral from the Gozaisho mine, Fukushima Prefecture, Japan. Mineralogical Journal, 9, 383-391

磐城鉱 Iwakiite
模式地標本 キラついているところ

磐城鉱 Iwakiite
一部にはスピネルのような結晶面が見えることがある。

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IMA No./year: 1974-060

杉石 / Sugilite

KNa2Fe3+2(Li3Si12)O30

模式地:愛媛県 上島町 岩城島

原著:Murakami N., Kato T., Miúra Y., Hirowatari F. (1976) Sugilite, a new silicate mineral from Iwagi Islet, Southwest Japan. Mineralogical Journal, 8, 110-121

杉石 Sugilite
模式地標本 うぐいす色部が本鉱,黒色部はエジリン。

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IMA No./year: 1975-003

神岡鉱 / Kamiokite

Fe2+2Mo4+3O8

模式地:岐阜県 飛騨市 神岡鉱山

原著:Sasaki A., Yui S., Yamaguchi M. (1985) Kamiokite, Fe2Mo3O8, a new mineral. Mineralogical Journal, 12, 393-399.

kamiokite1
kamiokite2
模式地標本 同構造のマンガン置換体の伊勢鉱より金属光沢が強く,一部にはややひずんだ6角形の断面がみえる

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IMA No./year: 1976-003

布賀石 / Fukalite

Ca4Si2O6(CO3)(OH)2

模式地:岡山県 高梁市 布賀鉱山

原著:Henmi C., Kusachi I., Kawahara A., Henmi K. (1977) Fukalite, a new calcium carbonate silicate hydrate mineral. Mineralogical Journal, 8, 374-381

布賀石 Fukalite
模式地標本 右上から左下に走るクリーム色部が本鉱+方解石。白いところには布賀石は入っていなかった。

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IMA No./year: 1976-012

三原鉱 / Miharaite

PbCu4FeBiS6

模式地:岡山県 井原市 三原鉱山

miharaite1
模式地標本 石英質に斑銅鉱と黄銅鉱がちりばめられている。こういうタイプの鉱石に三原鉱は産出する。

miharaite
miharaite
上記標本の薄片SEM写真と反射顕微鏡写真。中心が本鉱でその周りは班銅鉱。顕微鏡写真で金色ぽいのは黄銅鉱。三原鉱の分析値はPb1.2Cu4.2Fe1.0Bi1.1S6

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IMA No./year: 1976-016

中宇利石 / Nakauriite

Cu8(SO4)4(CO3)(OH)6·48H2O

模式地:愛知県 新城市 中宇利鉱山

原著:Suzuki J., Ito M., Sugiura T. (1976) A new copper sulfate-carbonate hydroxide hydrate mineral, (Mn,Ni,Cu)8(SO4)4(CO3)(OH)6·48H2O, from Nakauri, Aichi Prefecture, Japan. Journal of Mineralogy, Petrology and Economic Geology, 71, 183-192

nakauriite
高知県 円行寺

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IMA No./year: 1976-032

ソーダフッ素魚眼石 / Fluorapophyllite-(Na)

NaCa4Si8O20F・8H2O

模式地:岡山県 高梁市 山宝鉱山

Fluorapophyllite-(Na)
模式地標本 クリーム色部が本鉱。

Fluorapophyllite-(Na)
上標本のSEM写真 基本的に全体が本鉱。分析するとカリウム(K)はほとんど含まれない端成分に近い標本であった。

山田滋夫氏より標本を提供していただいた。これまでにいくつか手に入れて調べたが今のところ確実なのはこの標本のみ。

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IMA No./year: 1976-045

上国石 / Jôkokuite

Mn2+(SO4)・5H2O

模式地:北海道 上ノ国町 上ノ国鉱山

Jôkokuite
模式地標本


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IMA No./year: 1977(1997s.p.)

単斜灰プチロル沸石 / Clinoptilolite-Ca

Ca3(Si30Al6)O72·20H2O

模式地:福島県 西会津町 車峠

「未入手」

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IMA No./year: 1977-020

加納輝石 / Kanoite

MnMgSi2O6

模式地:北海道 八雲町 熊石町館平

Kanoite
模式地標本 中央上下に走るやや紫色がかった脈が本鉱+マンバン石榴石(+カミントン閃石)の集合。顕微鏡写真はフリッカーにあるのでこの写真をクリックして飛んだ先の右から見ることができる。

kanoite
SEM写真 中央のややくらいコントラストを持つ部分が本鉱。組成はMn2+1.00(Mg0.87Fe2+0.10Mn2+0.02Ca0.02)Si1.99O6。あとはマンバン石榴石(やや明るい),カミントン閃石(暗い),パイロクスマンガン石(やや明るい)がいる。

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IMA No./year: 1977-042

種山石 / Taneyamalite

(Na,Ca)(Mn2+12(Si,Al)12(O,OH)44

模式地:熊本県 八代市 種山鉱山 & 埼玉県 飯能市 岩井沢鉱山

原著:Matsubara S. (1981) Taneyamalite, (Na,Ca)(Mn2+, Mg, Fe3+,Al)12Si12(O,OH)44, a new mineral from the Iwaizawa mine, Saitama Prefecture, Japan. Mineralogical Magazine, 44, 51-53

taneyamalite1
模式地(熊本県種山鉱山)

taneyamalite2
愛媛県 用ノ山鉱山

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IMA No./year: 1977-045

長島石 / Nagashimalite

Ba4(V3+,Ti)4(O,OH)2[B2Si8O27]Cl

模式地:群馬県 桐生市 茂倉沢鉱山

原著:Matsubara S., Kato A. (1980) Nagashimalite, Ba4(V3+, Ti)4[(O,OH)2/Cl/Si8B2O27], a new mineral from the Mogurazawa mine, Gumma prefecture, Japan. Mineralogical Journal, 10, 122-130

nagashimalite
模式地標本 

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IMA No./year: 1978-005

鈴木石 / Suzukiite

BaV4+Si2O7

模式地:群馬県 桐生市 茂倉沢鉱山 & 岩手県 田野畑村 田野畑鉱山

原著:Matsubara S., Kato A., Yui S. (1982) Suzukiite, Ba2V24+[O2Si4O12], a new mineral from the Mogurazawa mine, Gumma Prefecture, Japan. Mineralogical Journal 11, 15-20

suzukiite1
suzukiite2
模式地標本(群馬県茂倉沢鉱山)
分析してみるとほとんど純粋なBaV4+Si2O7組成。

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IMA No./year: 1978-040

古遠部鉱 / Furutobeite

(Cu,Ag)6PbS4

模式地:秋田県 小坂町 古遠部鉱山

原著:Sugaki A., Kitakaze A., Odashima Y. (1981) Furutobeite, a new copper-silver-lead sulfide mineral. Bulletin de Minéralogie, 104, 737-741.

furutobeite1
秋田県釈迦内鉱山 方鉛鉱(ぎらついているところ)と閃亜鉛鉱(うぐいす色部)からなっている鉱石中に本鉱が含まれる。

furutobeite2
後方散乱電子像。中央の「く」の字形の白が本鉱で,それ以外の白は方鉛鉱。左側~右上に広がるやや暗い灰色は閃亜鉛鉱。本鉱の上側の左上から右下にかけてのやや明るい灰色は砒四面銅鉱。黒は石英。本鉱の化学組成はCu4.87Ag1.10Pb1.05S4

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MA No./year: 1979-031

欽一石 / Kinichilite

Mg0.5Mn2+Fe3+(Te4+O3)3・4.5H2O

模式地:静岡県 下田市 河津鉱山

Kinichilite
模式地標本 分離結晶で左右どちらも欽一石

Kinichilite
模式地標本 石英上の中央の黒色結晶。右上のごく微細な黄褐色針状結晶はゼーマン石。

Zemannite
これはゼーマン石。参考までに。

河津鉱山には欽一石,ゼーマン石共に同じ産状で出る。鑑定ポイントは色で,黒色結晶を分析してみるとたいていマンガンを多く含み,50%くらいの確率で欽一石になっていた。掲載した写真の上2点は欽一石で,三番目がゼーマン石である。欽一石はゼーマン石に比べて赤みが強く出ており,見た目ではこれくらいの違いがでる。これらの標本は山田滋夫氏から恵与いただいた。

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IMA No./year: 1979-081a

奴奈川石 / Strontio-orthojoaquinite

NaSr4Fe3+Ti2Si8O24(OH)4

模式地:新潟県 糸魚川市 青海町 金山谷

原著:Wise W.S. (1982) Strontiojoaquinite and bario-orthojoaquinite: two new members of the joaquinite group. American Mineralogist, 67, 809-816.

strontio-orthojoaquinite
模式地標本

オフィシャルリストでは化学組成は上記となっているのだが,ジョアキン石族の再定義という論文があって(Matsubara et al., 2001, Canadian Mineralogist, 39, 757),そのなかで本鉱の化学組成はSr2Ba2(Na,Fe2+)2Ti2Si8O24(O,OH)・H2Oと定義されている。なぜかオフィシャルリストに反映されていない。ということで模式地標本を分析してみたところSr2.00Ba2.16(Na1.56Fe0.66)Ti1.68Si7.94O24(O0.67OH0.33)・H2Oでした。これはMatsubaraらの提案と一致する。

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IMA No./year: 1980-006

マンガノパンペリー石 / Pumpellyite-(Mn)

Ca2Mn2+Al2(Si2O7)(SiO4)(OH)2・H2O

模式地:山梨県 南アルプス市 落合鉱山

原著:Kato A., Matsubara S., Yamamoto R. (1981) Pumpellyite-(Mn2+) from the Ochiai Mine, Yamanashi Prefecture, Japan. Bulletin de Minéralogie, 104, 396-399

pumpellyite-(Mn)
模式地標本 明褐色部

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IMA No./year: 1980-027(2012s.p.)

カリフェロ定永閃石 / Potassic-ferro-sadanagaite(原記載はsadanagaite)

KCa2(Fe2+3Al2)(Si5Al3)O22(OH)2

模式地:愛媛県 弓削島

原著:Shimazaki H., Bunno M., Ozawa T. (1984) Sadanagaite and magnesio-sadanagaite, new silica-poor members of calcic amphibole from Japan. American Mineralogist, 69, 465-471

potassic-ferro-sadanagaite1
模式地標本 全体,黒色がかった部分が本鉱。やや紫がかった部分はベスブ石。この産地の本鉱は非常に微細なため,ルーペでは結晶はまず見えないし実体顕微鏡でも厳しい。

potassic-ferro-sadanagaite2
上の標本の薄片写真(クロスニコル) おおむね全体が本鉱で,黒はチタン鉄鉱,ギラギラはチタン石。

potassic-ferro-sadanagaite3
愛媛県 睦月島

卒論~修論で瀬戸内の定永閃石は分析しまくった。この産地のこのタイプの産状は全てが本鉱で明瞭な緑色粒状で産する。睦月島にはカリ定永閃石も産出し,分析しないとどちらかは不明。

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IMA No./year: 1980-052

釜石石 / Kamaishilite

Ca2(SiAl2)O6(OH)2

模式地:岩手県 釜石市 釜石鉱山

釜石石
模式地標本 中央の暗緑色部に本鉱が含まれる。山田滋夫氏から恵与。

釜石石
釜石石
釜石石

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IMA No./year: 1980-103

大江石 / Oyelite

Ca10B2Si8O29・12H2O

模式地:岡山県 高梁市 布賀鉱山

原著:Kusachi I., Henmi C., Henmi K. (1984) An oyelite-bearing vein at Fuka, the town of Bitchu, Okayama Prefecture. Journal of the Japanese Association of Mineralogists, Petrologists and Economic Geologists, 79, 267-275

oyelite
模式地標本
普通のトベルモリ石とはホウ素(B)を含むこと,結晶構造の最小単位が異なることで特徴付けられる。

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IMA No./year: 1981-021

砥部雲母 / Tobelite

(NH4)Al2(Si3Al)O10(OH)2

模式地:愛媛県 砥部町 扇谷陶石鉱山 & 広島県 東広島市 豊蝋鉱山

原著:Higashi S. (1982) Tobelite, a new ammonium dioctahedral mica. Mineralogical Journal, 11, 138-146

tobelite
tobelite2
愛媛県 砥部町 万年

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IMA No./year: 1981-034

ソーダ南部石 / Natoronambulite

NaMn2+4Si5O14(OH)

模式地:岩手県 田野畑村 田野畑鉱山

原著:Matsubara S., Kato A., Tiba T. (1985) Natronambulite, (Na,Li)(Mn,Ca)4Si5O14OH, a new mineral from the Tanohata mine, Iwate Prefecture, Japan. Mineralogical Journal, 12, 332-340

natronambulite
Natronambulite_2
模式地標本 オレンジ色が本鉱。二枚目写真のブラウン色柱状結晶はマグネシオアルベソン閃石。

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IMA No./year: 1981-050

逸見石 / Henmilite

Ca2Cu[B(OH)4]2(OH)4

模式地:岡山県 高梁市 布賀鉱山

原著:Nakai I., Okada H., Masutomi K., Koyama E., Nagashima K. (1986) Henmilite, Ca2Cu(OH)4[B(OH)4]2, a new mineral from Fuka, Okayama Prefecture, Japan. American Mineralogist, 71, 1234-1239

Henmilite_1
henmilite_2
模式地標本

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IMA No./year: 1982-004

片山石 / Katayamalite

KLi3Ca7Ti2(SiO3)12(OH)2

模式地:愛媛県 岩城島

原著:Murakami N., Kato T., Hirowatari F. (1983) Katayamalite, a new Ca-Li-Ti silicate mineral from Iwagi Islet, Southwest Japan. Mineralogical Journal, 11, 261-268

katayamalite_1
katayamalite_2
模式地標本 同視野を短波紫外線で照射,青く光ります。

片山石はBaratovite/KLi3Ca7(Ti,Zr)2[Si6O18]2F2と同一ではないかという疑いがあるとされる。「される」というあいまいな表現したのは,「はっきりさせようよ」という提案をIMAに対してまだ誰も言ってないから。

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IMA No./year: 1982-102(2012s.p.)

カリ定永閃石 / Potassic-sadanagaite(原記載はMagnesiosadanagaite)

KCa2(Mg3Al2)(Si5Al3)O22(OH)2

模式地:愛媛県 明神島 & 弓削島

原著:Shimazaki H., Bunno M., Ozawa T. (1984) Sadanagaite and magnesio-sadanagaite, new silica-poor members of calcic amphibole from Japan. American Mineralogist, 69, 465-471

potassic-sadanagaite
愛媛県明神島 さんざん調べたがこの産地には本鉱だけでフェロタイプはない。

potassic-sadanagaite2
愛媛県睦月島 この産地はフェロタイプもあるが,この写真の結晶は本鉱だった。

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IMA No./year: 1983-016

ストロナルシス石 / Stronalsite

Na2SrAl4Si4O16

模式地:高知県 高知市 蓮台

原著:Hori H., Nakai I., Nagashima K., Matsurbara S., Kato A. (1987) Stronalsite, SrNa2Al4Si4O16, a new mineral from Rendai, Kochi City Japan. Mineralogical Journal, 13, 368-375

stronalsite_1
岡山県 大佐山 このチップから作った薄片には本鉱が入っていたらしい。もらったラベルには「Jadeiteを切るanalcime脈中に含まれる」とある。

stronalsite_2
ということで,上のチップから薄片を作ったら見つかった。中央上下に走る脈のやや明るい部分が本鉱。

stronalsite_3
さらに拡大。やや明るくカクカクしたものが本鉱。組成は純粋なNa2SrAl4Si4O16。周りは方沸石で,まさにラベルのとおりです。

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IMA No./year: 1984-015

アンモニオ白榴石 / Ammonioeucite

(NH4,K)(AlSi2O6)

模式地:群馬県 藤岡市 下日野 鈩沢

Ammonioeucite

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IMA No./year: 1984-057

滋賀石 / Shigaite

Mn6Al3(OH)18[Na(H2O)6](SO4)2・6H2O

模式地:滋賀県 栗東市 五百井鉱山

shigaite_1
shigaite_2
shigaite_3
模式地標本 山田滋夫氏より提供していただいた。

滋賀石 Shigaite
群馬県利東鉱山

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IMA No./year: 1984-073

イットリウム木村石 / Kimuraite-(Y)

CaY2(CO3)4・6H2O

模式地:佐賀県 唐津市 肥前町 切木

原著:Nagashima K., Miyawaki R., Takase J., Nakai I., Sakurai K., Matsubara S., Kato A., Iwano S. (1986) Kimuraite, CaY2(CO3)4·6H2O, a new mineral from fissures in an alkali olivine basalt from Saga Prefecture, Japan, and new data on lokkaite. American Mineralogist, 71, 1028-1033

kimuraite-(Y)
模式地標本

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IMA No./year: 1985-010

オホーツク石 / Okhotskite

Ca2(Mn,Mg)(Mn3+,Al,Fe3+)2(Si2O7)(SiO4)(OH)2・H2O

模式地:北海道 常呂町 国力鉱山

原著:Togari K., Akasaka M. (1987) Okhotskite, a new mineral, an Mn3+-dominant member of the pumpellyite group, from the Kokuriki mine, Hokkaido, Japan. Mineralogical Magazine, 51, 611-614

okhotsukite_1
模式地標本

okhotsukite_2
上須戒鉱山 オープンニコル 左右に広がる黄土色~茶褐色の板状が本鉱。左下に広がる濃い色も本鉱です。右上のやや赤い結晶はストロンチウムマンガニ紅簾石/manganipiemontite-(Sr)

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IMA No./year: 1985-052

ペトラック鉱 / Petrukite

(Cu,Ag)2(Fe,Zn)(Sn,In)S4

模式地:兵庫県 朝来市 生野鉱山 他(Mount Pleasant mine, Canada)

原著:Kissin S.A., Owens D.R. (1989) The relatives of stannite in the light of new data. The Canadian Mineralogist, 27, 673-688

櫻井鉱 Sakuraiite
模式地標本 No. 18に掲載した桜井鉱標本の同一。中央やや右の上下に走る黄銅鉱の上下が実は本鉱+桜井鉱の混合。

petrukite
後方散乱電子像。全体的に広がっている暗灰色が本鉱で,そのなかにシミのように滲んだやや明るい灰色が桜井鉱。本鉱の化学組成はCu1.77Fe0.65Zn0.47Sn0.80In0.23S4。この産地のペトラック鉱は銀をほとんど含まない(原著と調和的)。ほか,白色はスズ石,やや明るい灰色粒はインジウム銅鉱,黒は石英。

原著の記載論文では生野鉱山とMount Pleasant mine産が並記してあることから,ひとまず日本産新鉱物としてカウントしておく。実はオフィシャルリストにはCanadaしか記載されていない。その理由は推測するしかないが,この原著の中で,「Petruk(1973, The Canadian Mineralogist, 12, 46)によるMount Pleasant mine産の鉱物は本鉱の可能性がある」,という記述があり,それでオフィシャルリストではCanadaだけの標記になったのではないだろうか。追記:2014年7月のオフィシャルリストでは原産地がカナダ・日本の両論併記になっていたので,やっぱり日本産新鉱物としてカウント。

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IMA No./year: 1986-006(2012s.p.)

プロトフェロ直閃石 / Proto-ferro-anthophyllite

□Fe2+2Fe2+5Si8O22(OH)2

模式地:岐阜県 中津川市 蛭川田原

原著:Sueno S., Matsuura S., Gibbs G.V., Boisen M.B. (1998) A crystal chemical study of protoanthophyllite: orthoamphiboles with the protoamphibole structure. Physics and Chemistry of Minerals, 25, 366-377

proto-ferro-anthophyllite
模式地標本

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IMA No./year: 1986-007(2012s.p.)

プロトフェロ末野閃石 / Proto-ferro-suenoite

□Mn2+2Fe2+5Si8O22(OH)2

模式地:栃木県 鹿沼市 日瓢鉱山

原著:Sueno S., Matsuura S., Gibbs G.V., Boisen M.B. (1998) A crystal chemical study of protoanthophyllite: orthoamphiboles with the protoamphibole structure. Physics and Chemistry of Minerals, 25, 366-377

proto-ferro-suenoite_1
proto-ferro-suenoite_2
模式地標本

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IMA No./year: 1987-045

和田石 / Wadalite

Ca6Al6Si2O16Cl3

模式地:福島県 郡山市 逢瀬町 多田野

原著:Tsukimura K., Kanazawa Y., Aoki M., Bunno M. (1993) Structure of wadalite Ca6Al5Si2O16Cl3. Acta Crystallographica, C49, 205-207

wadalite_1
模式地標本 黒いやつが本鉱。

wadalite_2
拡大すると透明感のある深い緑。分析してみると鉄分(FeO)が約5.5wt%含まれるので黒っぽくなるのだと思われる。

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IMA No./year: 1989-007

豊羽鉱 / Toyohaite

Ag2FeSn3S8

模式地:北海道 札幌市 南区 豊羽鉱山

「未入手」

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IMA No./year: 1990-005

単斜トベルモリ石 / Clinotobermorite

Ca5Si6O16(OH)2・5H2O

模式地:岡山県 高梁市 布賀鉱山

clinotobermolite
模式地標本 見た目ではわからないがX線で確認すると本鉱とトベルモリ石が共存している。

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IMA No./year: 1991-025

渡辺鉱 / Watanabeite

Cu4(As,Sb)2S5

北海道 札幌市 手稲区 手稲鉱山

「未入手」

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IMA No./year: 1992-015

三笠石 / Mikasaite

Fe3+2(SO4)3

模式地:北海道 三笠市 幾春別 奔別川東岸

原著:Miura H., Niida K., Hirama T. (1994) Mikasaite, (Fe3+,Al)2(SO4)3, a new ferric sulphate mineral from Mikasa city, Hokkaido, Japan. Mineralogical Magazine, 58, 649-653

mikasaite
模式地標本 北海道から関東に引っ越してきてほったらかしてたらちょっと小さくなった気がする。潮解性があるので保存にはシリカゲル必須です。今回の撮影でまたちょっとちびた気がする。

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IMA No./year: 1992-017

森本石榴石 / Morimotoite

Ca3(TiFe2+)(Si3O12)

模式地:岡山県 高梁市 布賀鉱山

原著:Henmi C., Kusachi I., Henmi K. (1995) Morimotoite, Ca3TiFe2+Si3O12, a new titanian garnet from Fuka, Okayama Prefecture, Japan. Mineralogical Magazine, 59, 115-120

morimotoite
模式地標本

森本石榴石の端成分がCa3(TiFe2+)(Si3O12)でショーロマイトの端成分がCa3Ti2SiFe3+2O12なので,たして2で割るとCa3Ti3/2Fe2+1/2Si2Fe3+O12となり,これよりどっち側かで種が分類される。単純にはSiが2を超えれば森本石榴石で2を下回ればショーロマイト。この試料の分析値は(Ca2.94Fe2+0.06)(Ti1.26Fe2+0.46Mg0.10Al0.08Fe3+0.09)(Si2.30Fe3+0.70)O12で森本石榴石の組成領域。この組成は原著の組成とほとんど同じだし,ショートマイトとして手に入れた標本を分析してもほぼ同じでSi>2の森本石榴石だった。もしかして布賀のショーロマイトという標本は多くが森本石榴石ではないだろうか?

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IMA No./year: 1992-024

草地鉱 / Kusachiite

Cu2+Bi3+2O4

模式地:岡山県 高梁市 布賀鉱山

原著:Henmi C. (1995) Kusachiite, CuBi2O4, a new mineral from Fuka, Okayama Prefecture, Japan. Mineralogical Magazine, 59, 545-548

kusachiite
模式地標本

synthetic kusachiite
合成結晶 水熱合成法

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IMA No./year: 1993-049

武田石 / Takedaite

Ca3B2O6

模式地:岡山県 高梁市 布賀鉱山

原著:Kusachi I., Henmi C., Kobayashi S. (1995) Takedaite, a new mineral from Fuka, Okayama Prefecture, Japan. Mineralogical Magazine, 59, 549-552

takedaite
模式地標本 これも薄片をそのうちに作成しよう。

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IMA No./year: 1996-051

パラシベリア石 / Parasibirskite

Ca2B2O5・H2O

模式地:岡山県 高梁市 布賀鉱山

原著:Kusachi I., Takechi Y., Henmi C., Kobayashi S. (1998) Parasibirskite, a new mineral from Fuka, Okayama Prefecture, Japan. Mineralogical Magazine, 62, 521-525

parasibirskite
模式地標本 中央上下に走るややピングがかった白色脈。実際には本鉱+シベリア石の混合で,X線の比率からすると本鉱:シベリア石=2:3くらい。パラシベリア石と名付けられてはいるものの,結晶構造はシベリア石とはとくに関連は無い(Takahashi et al., 2010, JMPS, 105, 70-73)。

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IMA No./year: 1997-002

岡山石 / Okayamalite

Ca2B2SiO7

模式地:岡山県 高梁市 布賀鉱山

岡山石 Okayamalite
模式地標本 矢印先に岡山石が含まれるが白色なので見た目ではわからない。

岡山石 Okayamalite
薄片を作りSEMの反射電子像でようやくその存在が確認できる。分析値はCa1.99B2Al0.02Si0.99O7
ゲーレン石(Ca2Al2SiO7)からみてのAl→B置換体が岡山石となる。

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IMA No./year: 1997-010

津軽鉱 / Tsugaruite

Pb4As2S7

模式地:青森県 平川市 湯ノ沢鉱山

Tsugaruite
模式地標本

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IMA No./year: 1998-037

苦土フォイト電気石 / Magnesio-foitite

□(Mg2Al)Al6(Si6O18)(BO3)3(OH)3(OH)

模式地:山梨県 山梨市 三富上釜口 京ノ沢

原著:Hawthorne F.C., Selway J.B., Kato A., Matsubara S., Shimizu M., Grice J.D., Vajdak J. (1999) Magnesiofoitite, (Mg2Al)Al6(Si6O18)(BO3)3(OH)4, a new alkali-deficient tourmaline. The Canadian Mineralogist, 37, 1439-1443.

Magnesio-foitite
模式地標本 Mg#が90%くらいで鉄はかなり少ない。しっかりと本鉱です。

Foitite
宮崎県乙ヶ渕鉱山(参考) 色が薄いところが本鉱だと言われているが実はそんなことはない。たくさん分析したが色の濃淡の範囲でMg#が40-45%で,どうやってもMg#は50%を超えることはない。調べた範囲でこの産地のはすべて鉄タイプのフォイット電気石です。

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IMA No./year: 1998-039

糸魚川石 / Itoigawaite

SrAl2Si2O7(OH)2・H2O

模式地:新潟県 糸魚川市 親不知海岸

原著:Miyajima H., Matsubara S., Miyawaki R., Ito K. (1999) Itoigawaite, a new mineral, the Sr analogue of lawsonite, in jadeitite from the Itoigawa-Ohmi district, central Japan. Mineralogical Magazine, 63, 909-916.

itoigawaite
新潟県 糸魚川市 橋立

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IMA No./year: 1998-055

蓮華石 / Rengeite

Sr4Ti4ZrO8(Si2O7)2

模式地:新潟県 糸魚川市 姫川 小滝川 親不知海岸

原著:Miyajima H., Matsubara S., Miyawaki R., Yokoyama K., Hirokawa K. (2001) Rengeite, Sr4ZrTi4Si4O22, a new mineral, the Sr-Zr analogue of perrierite from the Itoigawa-Ohmi district, Niigata Prefecture, central Japan. Mineralogical Magazine, 65 111-120.

Rengeite
糸魚川市海岸 松原石と見た目で区別が付かないので分析してみたら(Sr3.97Ba0.09Ca0.05)Ti3.94Zr1.05O8Si3.96O14。Zrがしっかり入っているのでこれは蓮華石。

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IMA No./year: 1998-063

ネオジウム弘三石 / Kozoite-(Nd)

Nd(CO3)(OH)

模式地:佐賀県 唐津市 肥前町 新木場

原著:Miyawaki R., Matsubara S., Yokoyama K., Takeuchi K., Terda Y., Nakai I. (2000) Kozoite-(Nd), Nd(CO3)(OH), a new mineral in an alkali olivine basalt from Hizen-cho, Saga Prefecture, Japan. American Mineralogist, 85, 1076-1081

Kozolite-(Nd)_1
佐賀県 肥前町 満越 ハロゲン光源で撮影

kozolite-(Nd)_2
電子顕微鏡写真 上の写真でキラっとしているところは小さい結晶の集合です。

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IMA No./year: 1999-011

多摩石 / Tamaite

(Ca,K,Na)xMn6(Si,Al)10O24(OH)4·nH2O(x = 1-2; n = 7-11)

模式地:東京都 奥多摩町 白丸鉱山

原著:Matsubara S., Miyawaki R., Tiba T., Imai H. (2000) Tamaite, the Ca-analogue of ganophyllite, from the Shiromaru mine, Okutama, Tokyo, Japan. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 95, 79-83

Tamaite
模式地標本 分析をするとこの結晶はCaタイプで,多摩石となる。

Eggletonite
模式地標本 分析をするとこの結晶はNaタイプで,Eggletonite[(Na,Ba,Ca,K)xMn6(Si,Al)10O24(OH)4·nH2O(x = 1-2; n = 7-11)]となる。多摩石とは見た目で区別できない。

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IMA No./year: 1999-025

大峰石 / Ominelite

Fe2+Al3O2(BO3)(SiO4)

模式地:奈良県 天川村 弥山川

「未入手」

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IMA No./year: 1999-047

パラ輝砒鉱 / Pararsenolamprite

As

模式地:大分県 杵築市 向野鉱山

原著:Matsubara S., Miyawaki R., Shimizu M., Yamanaka T. (2001) Pararsenolamprite, a new polymorph of native As, from the Mukuno mine, Oita Prefecture, Japan. Mineralogical Magazine, 65, 807-812

Pararsenolamprite1
Pararsenolamprite2
模式地標本 

結晶構造はすでに判明しているようだ。でもまだ論文になっていない,早く読みたいわ-。

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IMA No./year: 2000-027

松原石 / Matsubaraite

Sr4Ti5O8(Si2O7)2

模式地:新潟県 糸魚川市 小滝川

原著:Miyajima H., Miyawaki R., Ito K. (2002) Matsubaraite, Sr4Ti5(Si2O7)2O8, a new mineral, the Sr-Ti analogue of perrierite in jadeitite from the Itoigawa-Ohmi district, Niigata Prefecture, Japan. European Journal of Mineralogy, 14, 1119-1128

Matsubaraite_1
Matsubaraite2
模式地標本
蓮華石とは見た目で区別できなさそうで,分析してみると松原石のほうでした。Sr3.79Ti5.33Si3.76O22,SrとSiがやや不足でTiがやや過剰。でも原著をみてもどうやらその傾向があるようだ。下のBSE像で一部(明るい部分)がTausonite(SrTiO3),これもレアな鉱物。

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IMA No./year: 2001-043

わたつみ石 / Watatsumiite

KNa2LiMn2V2Si8O24

模式地:岩手県 田野畑村 田野畑鉱山

原著:Matsubara S., Miyawaki R., Kurosawa M., Suzuki Y. (2003) Watatsumiite, KNa2LiMn2V2Si8O24, a new mineral from the Tanohata mine, Iwate Prefecture, Japan. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 98, 142-150.

Watatsumilite
模式地標本 黄緑色のところ。色が不安だったので分析してみると,K0.96Na2.28Li1.0(Mn1.41Mg0.44Fe0.07)(V1.38Ti0.56)Si8.04O24(Li=1.0を仮定)。本鉱だろう。茶色のところはバナジウムを含むエジリンでした。

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IMA No./year: 2001-045

白水雲母 / Shirozulite

KMn2+3(Si3Al)O10(OH)2

模式地:愛知県 設楽町 田口鉱山

白水雲母 Shirozulite
模式地標本 山田滋夫氏から恵与いただいた。金雲母にしか見えないががMnが主成分で本鉱であった。組成はK0.99(Mn1.52Mg0.86Al0.35Fe0.22Ti0.06)Σ3Si2.60Al1.38O10(OH)2.

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IMA No./year: 2001-049(2012s.p.)

カリフェリリーク閃石 / Potassic-ferri-leakeite(原記載はPotassic-leakeite)

KNa2Mg2Fe3+2LiSi8O22(OH)2

模式地:岩手県 田野畑村 田野畑鉱山

KFeLeakeite
Kedykverpakhk Mt, Lovozero Massif, Kola Peninsula, Murmanskaja Oblast’, Northern Region, Russia.
緑色部が本鉱で,ブラウン色はエジリン。

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IMA No./year: 2001-055

新潟石 / Niigataite (2016年に復活)

CaSrAl3O(Si2O7)(SiO4)(OH)

模式地:新潟県 糸魚川市 宮花海岸

原著:Miyajima H., Matsubara S., Miyawaki R., Hirokawa K. (2003) Niigataite, CaSrAl3(Si2O7)(SiO4)O(OH): Sr-analogue of clinozoisite, a new member of the epidote group from the Itoigawa-Ohmi district, Niigata Prefecture, central Japan. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences 98, 118-129.

Niigataite
模式地標本 中央黄土色結晶は基本的には緑泥石だが,その中に本鉱が含まれていた。薄紫はダイアスポア。

2006年の緑簾石族命名規約によって学名が”Clinozoisite-(Sr)”になっていたが,2016年の命名規約の再改定によって原記載どおりの”Niigataite”が復活することになった。

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IMA No./year: 2001-065(2012s.p.)

プロト直閃石 / Proto-anthophyllite

□Mg2Mg5Si8O22(OH)2

模式地:岡山県 新見市 高瀬鉱山

原著:Konishi H., Groy T.L., Dodony I., Miyawaki R., Matsubara .S, Buseck P.R. (2003) Crystal structure of protoanthophyllite: A new mineral from the Takese ultramafic complex, Japan. American Mineralogist, 88, 1718-1723

Proto-anthophyllite
模式地標本 ボーリングコアの一部

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IMA No./year: 2002-051(2012s.p.)

定永閃石 / Sadanagaite(原記載はMagnesiosadanagaite)

NaCa2Mg3Al2(Si5Al3)O22(OH)2

模式地:岐阜県 揖斐川町 春日鉱山

原著:Banno Y., Miyawaki R., Matsubara S., Makino K., Bunno M., Yamada S., Kamiya T. (2004) Magnesiosadanagaite, a new member of the amphibole group from Kasuga-mura, Gifu Prefecture, central Japan. European Journal of Mineralogy, 16, 177-183

Sadanagaite1
模式地標本 角柱状。

Sadanagaite2
上標本の後方散乱二次電子像。
左側のやや暗いコントラストはパーガス閃石で,右の明るいコントラストが本鉱。この産地の角閃石はことごとくゾーニングしていて,主にはSi量が異なる。こんだけはっきり分かれているなんて,生成条件がある段階でパキッと変わったんだろう。

定永閃石に伴われてソーダ金雲母の産出が知られるが,ソーダ金雲母はこのタイプの石には来ない。理由はよくわからない。

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IMA No./year: 2002-054

ランタン弘三石 / Kozoite-(La)

LaCO3(OH)

模式地:佐賀県 唐津市 肥前町 満越

原著:Miyawaki R., Matsubara S., Yokoyama K., Iwano S., Hamasaki K., Yukinori I. (2003) Kozoite-(La), La(CO3)(OH), a new mineral from Mitsukoshi, Hizen-cho, Saga Prefecture, Japan. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 98, 137-141.

Kozolite-(La)
模式地標本 ハロゲン光源 同じ光源でもネオジウム弘三石ほどはピンクにならない。

Kozolite-(La)_2
輪切りにしてSEMで見るとこうなる。明るい部分ほどNdが多く,暗いところほどLaが多い。玉の中心部が本鉱となる。

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IMA No./year: 2003-036

東京石 / Tokyoite

Ba2Mn3+(VO4)2(OH)

模式地:東京都 奥多摩町 白丸鉱山

原著:Matsubara S., Miyawaki R., Yokoyama K., Shimizu M., Imai H. (2004) Tokyoite, Ba2Mn3+(VO4)2(OH), a new mineral from the Shiromaru mine, Okutama, Tokyo, Japan. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 99, 363-367

Tokyoite
模式地標本 赤いところ

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IMA No./year: 2003-053

イットリウム岩代石 / Iwashiroite-(Y)

YTaO4

模式地:福島県 川俣町 水晶山

原著:Hori H., Kobayashi T., Miyawaki R., Matsubara S., Yokoyama K., Shimizu M. (2006) Iwashiroite-(Y), YTaO4, a new mineral from Suishoyama, Kawamata Town, Fukushima Prefecture, Japan. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 101, 170-177

Iwashiroite-(Y)_1
模式地標本

Iwashiroite-(Y)_2
三重県 マメドチ谷

マメドチ谷の鉱物はメタミクトなのでいわゆるフォーマン石としていったん報告したけど,メタミクトからの構造回復挙動を精査したらこれは岩代石として再結晶化することがわかった。化学組成的にもTa/(Ta+Nb)>0.9と非常にTaに富んでいる。この化学組成だとペグマタイト程度の温度では岩代石の構造しか安定化しない。

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IMA No./year: 2004-004

セリウムヒンガン石 / Hingganite-(Ce)

BeCe(SiO4)(OH)

模式地:岐阜県 中津川市 蛭川田原

原著:Miyawaki R., Matsubara S., Yokoyama K., Okamoto A. (2007) Hingganite-(Ce) and hingganite-(Y) from Tahara, Hirukawa-mura, Gifu Prefecture, Japan: The description on a new mineral species of the Ce-analogue of hingannite-(Y) with a refinement of the crystal structure of hingganite-(Y). Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 102, 1-7

Hingganite-(Ce)
模式地標本

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IMA No./year: 2004-049

ソーダ金雲母 / Aspidolite

NaMg3(Si3Al)O10(OH)2

模式地:岐阜県 揖斐川町 春日鉱山

Aspidlite
模式地標本 写真中央に代表されるややオレンジがかった雲母が本鉱。周りは定永閃石。

Aspidolite
上の標本のSEM写真 上下に筋が入った結晶中の暗色が本鉱で結晶内の明るい筋は金雲母。写真内に白く散らばっているところはチタン石で,基質は定永閃石。

コメント:Aspidoliteという鉱物はオーストラリアで発見され1869年に黒雲母(biotite)-金雲母(phlogopite)系列のNaとMgに富む雲母としていったん記載されていた。だけどもその後にaspidoliteはphlogopite(金雲母)のNa置換体と解釈されて,sodium phlogopiteという名前のほうが有名になってしまいaspidoliteという名前は有名無実化。ところが雲母の命名規約が変わってaspidoliteの名前が復活し,化学組成も上記で定義された。ところがところが,aspidoliteという鉱物にはタイプ標本やちゃんとしたデータが存在していなくて名前だけが存在していたのです。そこでタイプ標本とデータを改めてaspidoliteとして申請して承認を受けたというのが本鉱です。和名は記載者が提案する「ソーダ金雲母」を採用しているけど,学名はギリシャ語のaspidos(盾のような)にちなんでます。直訳すると盾雲母。ついでに書いとくと「黒雲母/biosite」って最新の命名規約では鉱物種としては抹消されてて,それは金雲母(philogopite)-鉄雲母(annite)の固溶体というフィールドネームということになっている。

写真の標本はタイプ標本と同じ岩石から採集されたもので,山田滋夫氏に提供していただいた。いまのところソーダ金雲母はこの標本にしか見つかっていない。どんな定永閃石の標本にも本鉱が伴われると思われがちだが,一般的な定永閃石の標本に本鉱はこない。

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IMA No./year: 2005-033

苣木鉱 / Sugakiite

Cu(Fe,Ni)8S8

模式地:北海道 様似町

未入手

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IMA No./year: 2005-050

沼野石 / Numanoite

Ca4CuB4O6(CO3)2(OH)6

模式地:岡山県 高梁市 布賀鉱山

原著:Ohnishi M., Kusachi I., Kobayashi S., Yamakawa J., Tanabe M., Kishi S., Yasuda T. (2007) Numanoite, Ca4CuB4O6(OH)6(CO3)2, a new mineral species, the Cu analogue of borcarite from the Fuka mine, Okayama Prefecture, Japan. The Canadian Mineralogist, 45, 307-315

Numanoite_1
Numanoite_2
模式地標本 青いところが本鉱,だいたい結晶の内部にある。

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IMA No./year: 2006-022

セリウム上田石 / Uedaite-(Ce)

Mn2+CeAl2Fe2+(Si2O7)(SiO4)O(OH)

模式地:香川県 土庄町 灘山

セリウム上田石 Uedaite-(Ce)
Heftetjern, Tørdal, Telemark, Norway
この標本は海外の標本を調べているなかで見つけた。
分析値は(Mn2+0.59Ca0.40Fe2+0.01)Σ1(Ce0.50La0.19Nd0.12Gd0.03Dy0.01Er0.04Yb0.04Ca0.02)Σ0.95
(Al0.78Fe3+0.22)Σ1Al0.99Fe2+1.0Si3.02O12(OH)。

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IMA No./year: 2006-049

大阪石 / Osakaite

Zn4SO4(OH)6·5H2O

模式地:大阪府 箕面市 平尾鉱山

原著:Ohnishi M., Kusachi I., Kobayashi S. (2007) Osakaite, Zn4SO4(OH)6·5H2O, a new mineral species from the Hirao mine, Osaka, Japan. The Canadian Mineralogist, 45, 1511-1517

Osakaite_1
Osakaite_2
模式地標本 タイプ標本の片割れを著者から恵与。淡い青色の六角板状結晶が本鉱の特徴。

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IMA No./year: 2006-055

ストロンチウム緑簾石 / Epidote-(Sr)

CaSrAl2Fe3+(Si2O7)(SiO4)O(OH)

模式地:高知県 香美市 穴内鉱山

原著:Minakawa T., Fukushima H., Nishio-Hamane D., Miura H. (2008) Epidote-(Sr), CaSrAl2Fe3+(Si2O7)(SiO4)(OH), a new mineral from the Ananai mine, Kochi Prefecture, Japan. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 103, 400-406

Epidote-(Sr)
模式地標本 紅いのに緑の名前がついているのはなぜか,それはストロンチウム緑簾石のページを見てください。どうしようもないのよ・・

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IMA No./year: 2007-012

宗像石 / Munakataite

Pb2Cu2(Se4+O3)SO4(OH)4

模式地:福岡県 宗像市 河東鉱山

原著:Matsubara S., Mouri T., Miyawaki R., Yokoyama K., Nakahara M. (2008) Munakataite, a new mineral from the Kato mine, Fukuoka, Japan. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 103, 327-332

Munakataite_1
Munakataite_2
模式地標本

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IMA No./year: 2007-019

田野畑石 / Tanohataite

LiMn2Si3O8(OH)

模式地:岩手県 田野畑村 田野畑鉱山

原著:Nagase T., Hori H., Kitamine M., Nagashima M., Abduriyim A., Kuribayashi T. (2012) Tanohataite, LiMn2Si3O8(OH): a new mineral from the Tanohata mine, Iwate Prefecture, Japan. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 107, 149-154.

Tanohataite
模式地標本

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IMA No./year: 2007-037

幌満鉱 / Horomanite

Fe6Ni3S8

模式地:北海道 様似町 

幌満鉱 Horomanite
模式地標本 中央から左上の明るい黄銅色が幌満鉱。自然銅を伴うことがある。

幌満鉱 Horomanite
幌満鉱の反射顕微鏡写真。中央の結晶の横幅で約250ミクロン。結晶内部に少量のトロイリ鉱(Troilite):FeSを含むことが多い。
平均化学組成は(Fe6.13Ni2.80Cu0.14)Σ9.07S7.93

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IMA No./year: 2007-038

様似鉱 / Samaniite

Cu2Fe5Ni2S8

模式地:北海道 様似町 

「未入手」

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IMA No./year: 2007-053(2012s.p.)

カリフェロパーガス閃石 / Potassic-ferro-pargasite

KCa2(Fe2+4Al)Si6Al2O22(OH)2

模式地:三重県 亀山市 加太市場

原著:Banno Y., Miyawaki R., Matsubara S., Sato E., Nakai I., Matsuo G., Yamada S. (2009) Potassic-ferropargasite, a new member of the amphibole group, from Kabutoichiba, Mie Prefecture, central Japan. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 104, 374-382

Potassic-ferro-pargasite
模式地標本

原著を読むとK/(K+Na)が0.5に近い微妙な値。こいつも分析したところやっぱりK/(K+Na)=0.52-0.53とかなり微妙だが,とりあえずK>Naで本鉱の部分が存在している。Na>Kとなる「ferropargasite」もそれなりにあるので,どっちつかずなんだなこの標本は。

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IMA No./year: 2008-031

ネオジムウェークフィールド石 / Wakefieldite-(Nd)

Nd(VO4)

模式地:高知県 香美市 有瀬鉱床

Wakefieldite-(Nd)_1
模式地標本
見た目はただの鉄マン鉱石で目立った特徴はない。

Wakefieldite-(Nd)_2
上標本の電子顕微鏡写真。最も明るいところに本鉱が含まれる。やや明るいところはカリオピライト,右上部に広がるやや暗いところは方解石。下部分にある鱗片状のやや明るいところは赤鉄鉱。

適当に拾った石を何も考えずに適当に切って観察しただけで簡単に本鉱が見つかったので,この産地の鉱石には普遍的に含まれていると思う。この試料からは他にイットリウムウェークフィールド石,ランタンウェークフィールド石もそれなりに含まれていた。これは分析しないとわからない。いずれにしても顕微鏡サイズ。

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IMA No./year: 2008-067

千葉石 / Chibaite

SiO2·n(CH4,C2H6,C3H8,C4H10); (nmax = 3/17)

模式地:千葉県 南房総市 荒川

原著:Momma K., Ikeda T., Nishikubo K., Takahashi N., Honma C., Takada M., Furukawa Y., Nagase T., Kudoh Y. (2011) New silica clathrate minerals that are isostructural with natural gas hydrates. Nature Communications, 2, 196-7

Chibaite_2
Chibaite_1
模式地標本

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IMA No./year: 2009-026

桃井石榴石 / Momoiite

Mn2+3V3+2(SiO4)3

模式地:愛媛県 西条市 鞍瀬鉱山

原著:Tanaka H., Endo S., Minakawa T., Enami M., Nishio-Hamane D., Miura H., Hagiwara A. (2010) Momoiite, (Mn2+,Ca)3(V3+,Al)2Si3O12, a new manganese vanadium garnet from Japan. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 105, 92-96

Momoiite_1
模式地標本 自分で記載した鉱物。

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IMA No./year: 2010-085a

島崎石 / Shimazakiite

Ca2B2-xO5-3x(OH)3x (x = 0-0.06)

模式地:岡山県 高梁市 布賀鉱山

原著:Kusachi I., Kobayashi S., Takechi Y., Nakamuta Y., Nagase T., Yokoyama K., Momma K., Miyawaki R., Shigeoka M., Matsubara S. (2013) Shimazakiite-4M and shimazakiite-4O, Ca2B2O5, two polytypes of a new mineral from Fuka, Okayama Prefecture, Japan. Mineralogical Magazine, 77, 93-105

Shimazakiite_1
模式地標本 本鉱と方解石が入り交じってますが見た目ではわかりません。

Shimazakiite_2
顕微鏡写真(クロスニコル) 顕微鏡下では非常によくわかります。このもやもやが本鉱の特徴で,ポリタイプが混じってます。

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IMA No./year: 2010-086

亜鉛ビーバー石 / Beaverite-(Zn)

Pb(Fe3+2Zn)(SO4)2(OH)6

模式地:新潟県 阿賀町 三川鉱山

「未入手」

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IMA No./year: 2011-023(2012s.p.)

愛媛閃石 / Chromio-pargasite(原記載はEhimeite)

NaCa2(Mg4Cr)(Si6Al2)O22(OH)2

模式地:愛媛県 新居浜市 東赤石山

原著:Nishio-Hamane D., Ohnishi M., Minakawa T., Yamaura J., Saito S., Kadota R. (2012) Ehimeite, NaCa2Mg4CrSi6Al2O22(OH)2: The first Cr-dominant amphibole from the Akaishi Mine, Higashi-Akaishi Mountain, Ehime Prefecture, Japan. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 107, 1-7

Ehimeite_1
Ehimeite_2
模式地標本 
Ehimeiteで申請して承認されたが,すぐに命名規約変更の論文が出て今はchromio-pargasiteが正式名称。ehimeiteだった期間はわずか1年ちょっととあまりにも短命すぎた。

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IMA No./year: 2011-030

イットリウム肥前石 / Hizenite-(Y)

Ca2Y6(CO3)11·14H2O

模式地:佐賀県 唐津市 肥前町 満越

「未入手」

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IMA No./year: 2011-031

イットリウムラブドフェン / Rhabdophane-(Y)

YPO4·H2O

模式地:佐賀県 玄海町 日ノ出松

Rhabdophane-(Y)
模式地標本 中央の白っぽい玉が本鉱

Rhabdophane-(Y)
SEM写真 エンスタタイト結晶の被膜で産し,六角柱状結晶の放射状集合体。

Rhabdophane-(Y)
SEM写真その2 拡大写真。

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IMA No./year: 2011-043

宮久石 / Miyahisaite

(Sr,Ca)2Ba3(PO4)3F

模式地:大分県 佐伯市 下払鉱山

原著:Nishio-Hamane D., Ogoshi Y., Minakawa T. (2012) Miyahisaite, (Sr,Ca)2Ba3(PO4)3F, a new mineral of the hedyphane group in the apatite supergroup from the Shimoharai mine, Oita Prefecture, Japan. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 107, 121-126, 181

Miyahisaite_1
miyahisaite_2
模式地標本 だいたい同じ視野を写真とBEI像で並べてみた。下のBEI像で白い部分が宮久石で,その中心にあるやや明るい灰色はフッ素燐灰石。

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IMA No./year: 2011-099

イットリウム高縄石 /Takanawaite-(Y)

Y(Ta,Nb)O4

模式地:愛媛県 松山市 高縄山

原著:Nishio-Hamane D., Minakawa T., Ohgoshi Y. (2013) Takanawaite-(Y), a new mineral of the M-type polymorph with Y(Ta,Nb)O4 from Takanawa Mountain, Ehime Prefecture, Japan. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 108, 335-344.

Takanawaite-(Y)
模式地標本 この産地のペグマタイトはほとんど雲母を伴わず,高縄石は石英と長石の境界に産する。メタミクト化しており非常に脆いため,岩石を割る際の衝撃でほとんど割れてしまう。結晶面が見えることは稀。放射状に集合する傾向がある。

イットリウム高縄石 Takanawaite-(Y)
香川県広島 第二産地の発見(武智・浜根, 2016, 資源地質学会第66回年会講演要旨集,P-10)。

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IMA No./year: 2012-010

イットリウム苦土ローランド石 / Magnesiorowlandite-(Y)

Y4(Mg,Fe)(Si2O7)2F2

模式地:三重県 菰野町 宗利谷

苦土ローランド石 Magnesiorowlandite-(Y)
模式地標本 中央の不定研断面を示すねずみ色が本鉱

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IMA No./year: 2012-020

伊勢鉱 / Iseite

Mn2Mo3O8

模式地:三重県 伊勢市

原著:Nishio-Hamane D., Tomita N., Minakawa T., Inaba S. (2013) Iseite, Mn2Mo3O8, a new mineral from Ise, Mie Prefecture, Japan. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 108, 37-41.

Iseite_1
Iseite_2
模式地標本 

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IMA No./year: 2012-035

箕面石 / Minohlite

(Cu,Zn)7(SO4)2(OH)10·8H2O

模式地:大阪府 箕面市 平尾鉱山

原著:Ohnishi M., Shimobayashi N., Nishio-Hamane D., Shinoda K., Momma K., Ikeda T. (2013) Minohlite, a new copper-zinc sulphate mineral from Minoh, Osaka, Japan. Mineralogical Magazine, 77, 335-342

Minohlite
模式地標本 

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IMA No./year: 2012-095

ランタンバナジウム褐簾石 / Vanadoallanite-(La)

CaLaVAlFe2+(Si2O7)(SiO4)O(OH)

模式地:三重県 伊勢市

原著:Nagashima M., Nishio-Hamane D., Tomita N., Minakawa T., Inaba S. (2013) Vanadoallanite-(La): a new epidote-supergroup mineral from Ise, Mie Prefecture, Japan, Mineralogical Magazine, 77, 2739-2752.

Vanadoallanite-(La)_1
模式地標本 この産地の褐簾石亜族の新鉱物は見た目では区別できません。なのでとりあえずこの結晶を本鉱としておきましょう。

Vanadoallanite-(La)_2
模式地標本 タイプ標本からのピックアップ。

本鉱が本当にどのくらい実在するかについて国内外の相当コアなマニアや研究者から問い合わせが来ているのでまじめに回答しておくと,存在が確認できているのはタイプ標本のみである。もししそれらしい産状の褐簾石を見つけたとしても結晶内で組成変動が少なからずあるので,種を確定するにあたって結晶のピックアップと化学組成分析は必須。単結晶構造解析があるとベスト。要は,確かなのは分離&研磨&分析したその薄片だけになってしまう。それは個人のコレクションとしては楽しくはない気はする。それでもどうしても確かなものをという人がいるようなので書いておくと,本鉱となるためにはV2O3が最低でも6.5重量パーセントを上回る必要がある。もし分析済みと称した標本を手に入れる際はそれをひとつの目安にすればいい。ただ,この記述が本鉱を保証するものではないのであたりまえですが入手は自己責任でどうぞ。
SEM写真の結晶の分析値は(Ca0.60Mn2+0.40)(La0.59Nd0.15Ce0.12Ca0.05)(V3+0.64Fe3+0.40)(Al0.90Fe3+0.10)(Fe2+0.44Mn2+0.43Mg0.12)Si3.05O12(OH)。やっぱりこういう標本でしかない。

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IMA No./year: 2012-101

足立電気石 / Adachiite

CaFe2+3Al6(Si5AlO6)(BO3)3(OH)3(OH)

模式地:大分県 佐伯市 木浦鉱山

原著:Nishio-Hamane D., Minakawa T., Yamaura J., Oyama T., Ohnishi M., Shimobayashi N. (2014) Adachiite, a Si-poor member of tourmaline supergroup from the Kiura mine, Oita Prefecture, Japan, Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 109, 74-78.

adachiite_1
adachiite_2
模式地標本 一般的には黒色柱状結晶の集合として産出する。不透明というわけではなく,強い光をむりやりあてると小さい結晶なら透明であることが確認できる。実際には鉄電気石と複雑な累帯を成し,その一部が本鉱となる。この産地の電気石はほとんどの場合,本鉱を含んでいる。

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IMA No./year: 2013-034

岩手石 / Iwateite

Na2BaMn(PO4)2

模式地:岩手県 田野畑村 田野畑鉱山

原著:Nishio-Hamane D., Minakawa T., Okada H. (2014) Iwateite, Na2BaMn(PO4)2, a new mineral from the Tanohata mine, Iwate Prefecture, Japan. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 109, 34-37.

Iwateite
模式地標本 中央と右下部のクリーム色したつぶつぶが本鉱。目で見つけるのはすごく難しいというかほぼムリで破面からでは未だに見いだせない。これも切断・研磨 → 走査型電子顕微鏡のBSI像で確認 → もう一度切断面をじっくりみてようやく判別できた。

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IMA No./year: 2013-069

今吉石 / Imayoshiite

Ca3Al(CO3)[B(OH)4](OH)6・12H2O

模式地:三重県 伊勢市

Nishio-Hamane D., Ohnishi M., Momma K., Shimobayashi N., Miyawaki R., Minakawa T., Inaba S. (2015) Imayoshiite, Ca3Al(CO3)[B(OH)4](OH)6•12H2O, a new mineral of ettringite group from Ise City, Mie Prefecture, Japan., Mineralogical Magazine, 79, 413-423.

Imayoshiite
模式地標本 重量の50%以上が水でできている鉱物。

Tatarinovite
参考までにTatarinovite(ロシア産)の写真。2015年に発見された新鉱物でCa3Al(SO4)[B(OH)4](OH)6·12H2Oの化学組成。これは今吉石のCO3→SO4置換体に相当する。今吉石も結晶するとこんな形になるだろう。

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IMA No./year: 2013-126

ランタンフェリ赤坂石 / Ferriakasakaite-(La)

CaLaFe3+AlMn2+(Si2O7)(SiO4)O(OH)

模式地:三重県 伊勢市

Nagashima M., Nishio-Hamane D., Tomita N., Minakawa T., Inaba S. (2015) Ferriakasakaite-(La) and ferriandrosite-(La): new epidote-supergroup minerals from Ise, Mie Prefecture, Japan. Mineralogical Magazine, 79, 735-753

Ferriakasakaite-(La), Ferriandorosite-(La)
模式地標本 この産地の褐簾石亜族の新鉱物は見た目では区別できません。なのでとりあえずこの結晶を本鉱としておきましょう。

akasaka_and_androsite
組成分析でしか種を決めることができない上に,かなり狭い範囲でランタンフェリアンドロス石やランタンフェリ褐簾石と隣り合っていたりすることが本当によくある。この標本はたった50ミクロンを隔ててランタンフェリ赤坂石とランタンフェリアンドロス石が共生している。ここには写っていないがこの約500ミクロン上にはランタンフェリ褐簾石がいる。本当にこういう状態なのでラベルにはすべての種を書いておけばよろしかろうと思う。このランタンフェリ赤坂石の化学組成は(Ca0.62Mn2+0.43)(La0.75Ce0.19Nd0.05)(Fe3+0.48Al0.25V3+0.19)Al1.00(Mn2+0.63Fe2+0.37)Si3.05O12(OH)。

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IMA No./year: 2013-127

ランタンフェリアンドロス石 / Ferriandorosite-(La)

Mn2+LaFe3+AlMn2+(Si2O7)(SiO4)O(OH)

模式地:三重県 伊勢市

Nagashima M., Nishio-Hamane D., Tomita N., Minakawa T., Inaba S. (2015) Ferriakasakaite-(La) and ferriandrosite-(La): new epidote-supergroup minerals from Ise, Mie Prefecture, Japan. Mineralogical Magazine, 79, 735-753

Ferriakasakaite-(La), Ferriandorosite-(La)
模式地標本 この産地の褐簾石亜族の新鉱物は見た目では区別できません。なのでとりあえずこの結晶を本鉱としておきましょう。実際のところ,このくらいの集合体になるとたいてい3種が混じっている。

akasaka_and_androsite
ここの褐簾石亜族の化学組成は中間的で,ほんのちょっとの違いで簡単に種をまたぐ。このランタンフェリアンドロス石は(Mn2+0.54Ca0.46)(La0.65Ce0.14Ca0.13Nd0.11)(Fe3+0.78V3+0.21)Al1.00(Mn2+0.47Fe2+0.26Al0.14Mg0.13)Si2.99O12(OH)。

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IMA No./year: 2013-130

伊予石 / Iyoite

MnCuCl(OH)3

模式地:愛媛県 佐田岬半島

Nishio-Hamane D., Momma K., Ohnishi M., Shimobayashi N., Miyawaki R., Tomita N., Okuma R., Kampf A.R., Minakawa T. (2017) Iyoite, MnCuCl(OH)3, and misakiite, Cu3Mn(OH)6Cl2: new members of the atacamite family from Sadamisaki Peninsula, Ehime Prefecture, Japan. Mineralogical Magazine, 81, 485-498.

Iyoite_1
Iyoite_2
模式地標本  伊予石は草のように見えるものが多く,孔雀石とやや紛らわしかったりもする。愛媛県の旧国名:伊予国,そして佐田岬半島の北岸に面している海域:伊予灘から名前をもらった。

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IMA No./year: 2013-131

三崎石 / Misakiite

Cu3Mn(OH)6Cl2

模式地:愛媛県 佐田岬半島

Nishio-Hamane D., Momma K., Ohnishi M., Shimobayashi N., Miyawaki R., Tomita N., Okuma R., Kampf A.R., Minakawa T. (2017) Iyoite, MnCuCl(OH)3, and misakiite, Cu3Mn(OH)6Cl2: new members of the atacamite family from Sadamisaki Peninsula, Ehime Prefecture, Japan. Mineralogical Magazine, 81, 485-498.

Misakiite
Misakiite_2
模式地標本  単独だと6角粒状となるが,伊予石と共存する際には一方向にのびて板状になったりもする。近隣住民は佐田岬半島のことを「みさき」と呼ぶし,南岸は三崎灘に面しているからというのを理由にして命名。

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IMA No./year: 2014-020

イットリウム三重石 / Mieite-(Y)

Y4Ti(SiO4)2O[F,OH]6

模式地:三重県 菰野町 宗利谷

「未入手」

2014年鉱物学会で宮脇さんより報告される。

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IMA No./year: 2014-023

房総石 / Bosoite

SiO2・nCxH2x+2

模式地:千葉県 南房総市 荒川

the early publication:Momma K., Ikeda T., Nagase T., Kuribayashi T., Honma C., Nishikubo K., Takahashi N., Takada M., Matsushita Y., Miyawaki R. and Matsubara S. (2014) CNMNC Newsletter No. 21, Mineralogical Magazine, 78, 797 -804.

Chibaite_1
房総石は千葉石の結晶に含まれる。

bosoite
左がオープン,右がクロスニコル。左上と右下のぐしゃっとしたところはオパールと石英。クロスニコル写真で結晶の中央,左下,右側の縁など光が通っている部分が房総石。模式地の千葉石結晶には房総石がほぼ必ず(僕の調べた範囲)含まれていた。

chibaite_bosoite
上と同じ結晶のBSI像。房総石は千葉石に比べてやや暗いコントラストとなる。
詳細は2014年鉱物学会で門馬さんにより報告される。

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IMA No./year: 2014-054

豊石 / Bunnoite

Mn2+6AlSi6O18(OH)3

模式地:高知県いの町

Nishio-Hamane D., Momma K., Miyawaki R., Minakawa T. (2016) Bunnoite, a new hydrous manganese aluminosilicate from Kamo Mountain, Kochi prefecture, Japan. Mineralogy and Petrology, 110, 917-926.

Bunnoite
模式地標本 豊石の結晶集合

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IMA No./year: 2014-084

阿武石 / Abuite

CaAl2(PO4)2F2

模式地:山口県阿武町日の丸奈古鉱山

Enju S., Uehara S. (2015) CNMNC Newsletter No. 23, Mineralogical Magazine, 79, 51 -58.

abuite1
白っぽい鉱石中に含まれるが肉眼では判別はできない。鉱石には石英やトパーズがふくまれとにかく堅い。

Abuite2
SEM写真。明灰色の定型な結晶が阿武石。SrOを2-3wt%固溶した部分がありそこはより明るい灰色となっている。周囲の暗い部分は燐ばん土石。中間色は石英もしくはトパーズ。
山口県初の新鉱物となる。かつてMatsubara&Kato(1998, 国立科学博物館専報 30, 167-183)で「gatumbaite-like mineral」とされていたモノで,九大チームの研究で新鉱物と同定された。

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IMA No./year: 2015-100

神南石 / Kannanite

Ca4Al4(MgAl)(VO4)(SiO4)2(Si3O10)(OH)6

模式地:愛媛県神南山

Nishio-Hamane D. & Minakawa T. (2016) approved on Feb. 11.
神南石 Kannanite
赤鉄鉱+ブラウン鉱母岩中に脈状に走る黄褐色~オレンジ色が本鉱。脈中の赤は紅簾石。

神南石 Kannanite
破断面

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IMA No./year: 2016-066

村上石 / Murakamiite

Ca2LiSi3O8(OH)

模式地:愛媛県岩城島

Imaoka T., Nagashima M., Kano T., Kimura J.-I., Chang Q. and Fukuda C. (2016) Murakamiite, Mineralogical Magazine, 80, 1315–1321.

村上石ラベル
著者の永嶌氏から確実な標本を恵与していただいた。
 
 
Murakamiite bearing albitite
村上石を含む岩石標本。タイプ標本の一部に相当する。村上石は無色透明なため肉眼鑑定が難しいが,紫外線照射がその存在を見極める有効な手段となる。
 
 
Murakamiite bearing albitite under 254 nm UV
短波長の紫外線を照射すると全体に蛍光が見られる。青は片山石,赤は曹長石。短波長の紫外線照射では村上石はわからない。
 
 
Murakamiite bearing albitite under 365 nm UV
一方,長波長の紫外線をあててみると村上石だけが光る。村上石は長波長の紫外線照射で紫がかったピンク色の蛍光を示すので,実はその存在は非常にわかりやすい。
 
 
村上石 Murakamiite
一部拡大。右側の結晶の分析値:(Ca1.93Mn0.04)Σ1.97(Li0.55Na0.45)Σ1Si3O8(OH)0.94。村上石はペクトライト:Ca2NaSi3O8(OH)から見てNa→Li置換体の鉱物となる。

著者から聞いた話をまとめておこう。ここのアルビタイトならどこでも村上石が存在しているというのは誤解で,じつは村上石はタイプ標本以外では見つかっていない。村上石のタイプ標本となった岩石は全岩組成でみると異様にLiに富んでおり,アルビタイトの中でもLiに偏りがあるようだ。そういった岩石を調べれば村上石は存在しているだろうが,肉眼や顕微鏡観察ではLiの濃度などわかるはずもない。今回の標本をみると杉石が多く入っていることはわかる。ただ私はこういった標本を以前にかなり分析を行ったのだが,Na>Liのモノばかりでことごとくがペクトライトであった。村上石は分析が必須の難しい新鉱物である。

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IMA No./year: 2017-003

金水銀鉱 / Aurihydrargyrumite

Au6Hg5

愛媛県

Nishio-Hamane D. & Minakawa T. (2017) approved on April.

金水銀鉱  Aurihydrargyrumite
右の粒は全体が本鉱(ただし表面のみで内部は金)。左の粒は左上の銀色が本鉱で,中央下にあるくすんだ銀色の部分はウェイシャン鉱(Weishanite)。

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IMA No./year: 2017-089

ランタンピータース石 / Petersite-(La)

三重県熊野市紀和町

Nishio-Hamane D., Ohnishi M., Shimobayashi N., Momma K., Miyawaki R., Inaba S. (2017) approved on December.

ランタンピータース石 / Petersite-(La)
写真1. 新鉱物、ランタンピータース石のタイプ標本。ウニのような放射状集合が特徴的。

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 Posted by at 11:44 PM

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