イットリウム高縄石

 

No. IMA2011-099 

高縄石 / Takanawaite-(Y)

Y(Ta,Nb)O4

Monoclinic 

Polymorph of iwashiroite-(Y), formanite-(Y), and yttrotantalite-(Y)

愛媛県松山市高縄山

Nishio-Hamane D., Minakawa T., Ohgoshi Y. (2013) Takanawaite-(Y), a new mineral of the M-type polymorph with Y(Ta,Nb)O4 from Takanawa Mountain, Ehime Prefecture, Japan. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 108, 335-344.

Fig. 1. 高縄石を含む鉱石,放射状集合が本鉱。大きな黒色結晶はガドリン石で,褐色はジルコン。

 

Fig. 2. 高縄石の拡大写真(左右1センチ),部分的に結晶外形がみえる。結晶表面は光沢があり,割口は貝殻状断口を示す(ほとんどメタミクトだから)。

高縄石/takanawaite-(Y)。またしても愛媛県からの新鉱物となった。和名を正確に表現すると「イットリウム高縄石」だろうか。とりあえずツールネームの「高縄」を強調しよう。2011年は当たり年だったようで,本鉱で3つ目の新鉱物を申請することができた。

鉱物の名前の付け方にはいくつかルールがある。今回は希元素を含む鉱物名の付け方のお話。Takanawaite-(Y)は見てのとおり前「Takanawa」と後「Y」に分かれている。前をルーツネームと言い,後ろをサフィックスと呼ぶ。まずはルーツネームのほうから説明しよう。簡単に言うとルーツネームは希元素以外の化学組成と構造のことを指している。例えば希元素をREEで表したとする。そうすると「takanawaite」とはREE(Ta,Nb)O4で結晶構造が単斜晶系( I 2/aのという意味になる。「岩代石 / iwashiroite」だとREETaO4単斜晶系( P 2/a,「formanite」だとREETaO4正方晶系( P 格子),「yttrotantalite」だとREETaO4斜方晶系ということです。次にサフィックスの説明。まあ要は含まれる希元素で最も多いものということです。最後に(Y)がついていればイットリウムが,もし(Gd)だったらガドリニウムが一番多く含まれているということだ。もし仮にGd(Ta,Nb)O4の化学組成の鉱物が見つかったとする。このとき結晶構造が単斜晶系( I 2/aなら問答無用でそれはtakanawaite-(Gd)である。結晶構造が上記のいずれでも無い場合は新たルーツネームをつけられると言うことです。

合成実験ではY(Ta,Nb)O4には3つの安定相があることが知られており,それらはT, M, M’相と記述される。一方で、Y(Ta,Nb)O4鉱物はこれまで,「フォーマン石」,「イットロタンタル石」,「岩代石」があり、岩代石はM’相にあたる。では,高縄石は何に相当するかというと,M相である。残りはT相なのだが,実はこれ,まだ発見(承認)されていない。T相は常温へは回収できないので発見されてないのは当然ではあるけどね。

あれ?そうなると,「フォーマン石」と「イットロタンタル石」はいったい何者なのか?実はこの二つは合成実験では存在が確認されていない。記載年代も非常に古く,結晶構造と化学組成に関してデータが曖昧なままとなっている。でもvalid speciesとなっているので非常に困る。さらには紛らわしい論文が存在し,そのせいで誤解する審査員もでてきて,高縄石の審査にはちょっと時間がかかった。まあ,ともかく高縄石は新鉱物である。さあ論文を書こう。

高縄石は2002年の鉱物学会で一度は「フォーマン石」として報告している。加熱によるメタミクトからの構造回復の挙動が「フォーマン石」とやや異なることに当時から違和感を感じていたのだが,そのときは決定打がわからなかった。こういうのを「見落としていた」「勘違いをしていた」という言い方もあるが,あえて正直に記すなら,そのとき私は「見抜けなかった」のである。当時私は修士の学生。明らかに勉強不足の小僧だった。おかげで10年もほったらかすことになってしまった。

高縄石の産地,高縄山はもともとガドリン石の産地として有名だったが,私が愛媛大にいたときにはすでに産出が絶えて久しかった。そんな中,2001年3月24日 芸予地震が発生した。各地で様々な被害を出しつつ,高縄山でもいくつか崩落があった。そのうち,ガドリン石を産出するペグマタイトがピンポイントで大ダメージをうけ,道をふさぐほど大量に崩落したのである。その際に一時的にガドリン石の産出が復活し,そこに高縄石(当時はフォーマン石と思っていた)が多産した。それから約10年後,2011年3月11日の大震災を受けて,今年度に予定していた研究がいくつかストップしてしまった。さてどうしようかと思いあぐねていたところに,地震つながりでやや曖昧なままになっていたこの鉱物のことを思い出した。災い転じて福となす。昔に採集した試料を用い,当時よりは成長したであろう知識・技術で再検討したところ,新鉱物としての再発見につながった。

この産地で高縄石とやや間違えやすい鉱物はジルコンである。ともに放射状に集合する。しかし,高縄石が板状結晶集合体であるのに対し,ジルコンは棒状の集合体である。ルーペがあれば間違えることはないだろう。黒緑色の最大2cmはある粒状結晶はガドリン石だ。結晶面が見えるものも多い。ものすごくレアだが,灰色の棒状結晶がまれに見つかることがある。トルトベイト石を期待したのだがこれは褐簾石であり,すべてセリウムタイプだった。結晶の周囲に白色粉状のものが認められるのでセリウムラブドフェンが期待できるのだが,手持ちの試料に乏しくまだ詳しく検討できていない。

さて,愛媛閃石に引き続き高縄石も産経新聞に掲載された。翌日にはあいテレビ(NEWSキャッチあい)で報道され,さらに翌々日には愛媛新聞にも掲載された。「レアアースの新鉱物」という見出しで予想外に注目されてしまった。注目をあびることはいいことなのだが,できることなら「レアアース」という装飾抜きでも注目される鉱物を見つけてサイエンスを展開したい。たとえば物性研では volborthite, vesignieiteなどがチヤホヤされている。これらは鉱物であるが,鉱物学会でもマニアの集まりでもこんな鉱物聞いたことない。でも,物理の世界ではスター。そのポテンシャルはすごい(らしい)。高縄石に「レアアース」以外にポテンシャルはあるか?それは今後の取り組み方次第だろう。まあいい,発見後の仕事はほかに任せる。さあ,次にいこう。 目指すのは日本発世界初。まずは発見しなければ何事も始まらない。次はXX県から△△石だ。

 

 Posted by at 8:31 AM

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