愛媛閃石

 

No. IMA2011-023 愛媛閃石 / Ehimeite (~2012) / Chromio-pargasite (2012~)

NaCa2Mg4CrSi6Al2O22(OH)2, monoclinic C 2/m

Amphibole group

愛媛県新居浜市東赤石山赤石鉱山(南稜)

Nishio-Hamane D., Ohnishi M., Minakawa T., Yamaura J., Saito S., Kadota R. (2012), JMPS, 107, 1-7.

Fig. 1.愛媛閃石(緑色柱状)

 

Fig.2. 愛媛閃石の断面図(結晶の長さ5ミリ)翠緑色が本鉱である。黄土色部はクロム(Cr)を含まない緑泥石,薄紫はCrを含む緑泥石(いわゆる菫泥石)。愛媛閃石のまわりの白色部は金雲母。

愛媛県から発見された新種の角閃石(かくせんせき),愛媛閃石/ehimeiteである。角閃石は現在120種以上が知られ,数え間違いでなければ,愛媛閃石は(たぶん)124番目の角閃石となる。角閃石の新種は毎年のように発見されているし,角閃石そのものは珍しくない(人気もあまりない)鉱物だが,クロムを主成分にもつ角閃石は愛媛閃石が初となる。そもそもクロム鉄鉱鉱床から角閃石が産出したのはこれが初めての例ではないだろうか。

角閃石の命名には多くのルール(規約)があって,学名は化学組成に制約されるが,愛媛閃石の化学組成は命名規約の範疇になかった。命名規約に従うと名前がつかないのである。そんなわけでひとまず新しいルーツネームを提案してみたところ,問題なく承認された。産地から見える景色は壮大で緑豊か。加えて,大きくきれいな鉱物なので名前も大きなものがよかろうと「愛媛」を提案した。なかなか良い名前だと思っている。本鉱は角閃石なので,和名はルーツネーム(愛媛)+閃石で愛媛閃石となる。ちなみに産地は稜線だけど南陵側に展開しているズリから採取したからだから新居浜市産となるのよ。北陵は四国中央市だから間違えないように。

さて,愛媛閃石は産経新聞で取り上げられることとなり,一躍有名な鉱物の仲間入りを果たした。「宝石のような新鉱物」というタイトルでFig.2.の写真が掲載された。宝石になるかどうかはともかく,見て映える新鉱物はひさびさである。「愛媛閃石がみかん色だったらもっとよかったね」と,のちに言われたが,夏のみかん畑は緑一色であるからだってみかんの色でいいじゃないか。

写真を見たからというわけではないだろうが,新鉱物承認後すぐに「ほしい」という連絡があった。新鉱物は論文が公表されるまでは譲渡するなとアクセプトレターには書いてある。その旨を知らせていったん引き下がったが,論文がオンライン公表されて数日後に再び同じ方から「公表されたよね」とコンタクトがあった。なかなかの観察力・行動力である。その行動力を賞して,せっかくなので差し上げることにした。彼は外国人。日本人から「よこせ」という知らせはまだ無い。[追記:いまさらよこせと言われても余分の標本はもうない。]

愛媛閃石の鑑定ポイントは色・形と産状である。色・形は見ての通りであり,淡緑色の透輝石とは一線を画している。だが,実物を見たことがないと透輝石となかなか判断がつかないかもしれない。もし透輝石と判断がつかないようなら,結晶の周囲を見てみよう。愛媛閃石には必ず金雲母が伴われている。実は愛媛閃石は透輝石との共存はかなりまれであるので,慣れてくるとすぐ鑑定できる。

さて,追記。2012年に角閃石命名規約の変更があって,学名ehimeiteはchromio-pargasiteに変更になった。ehimeiteは承認されてたった一年とちょっとの寿命だった。ただ和名に関しては愛媛閃石のままでいいと思う。と言うのも和名には統一的な取り決めが無いからね。例えばallaniteは褐簾石という和名だけど,allaniteの元になったのはAllanさんという人物名で和名の褐簾石とは全く関係がない。だから愛媛閃石もせめて和名としては残したい。

 Posted by at 8:14 AM

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