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銅酸化物超伝導体における熱ホール角の増大とSrPtAsのペアリング対称性

日程 : 2019年11月26日(火) 3:00 pm - 4:00 pm 場所 : 物性研究所本館6階 第5セミナー室 (A615) 講師 : 植木 輝 所属 : 弘前大学 世話人 : 常次 宏一 (63597)
e-mail: tsune@issp.u-tokyo.ac.jp
講演言語 : 日本語

銅酸化物超伝導体やCeCoIn5の熱ホール角が超伝導状態で急激に増大することが実験的に観測された。しかしその一方で、熱ホール角の理論研究はほとんど行われておらず、熱ホール角の増大に関するメカニズムもはっきりとしない。そこで、私たちは拡張された準古典方程式を用いて、ピン止めされた孤立渦をもつ第二種極限の超伝導体における熱ホール伝導度の表式を導出し、その表式を用いてs波超伝導体とd波超伝導体に対して数値計算行った[1]。

また近年、局所的に反転対称性を破る結晶構造を持つ超伝導体SrPtAsが発見され、SrPtAsの超伝導対称性に関する研究も行っている。SrPtAsの超伝導対称性については、時間反転対称性を破るカイラルd波状態であることが、μSRによる内部自発磁化の測定実験、および汎関数くりこみ群による解析により指摘されている。一方で、核磁気緩和率や磁場侵入長・超流動密度の測定実験では、s波超伝導状態である可能性も指摘されている。そこで、私たちはSrPtAsの超伝導対称性に関する、これらの食い違いについて検討した。具体的には、第一原理計算により得られたSrPtAsに対するタイトバインディングモデルを用いて、SrPtAsの六枚のフェルミ面を考慮し,s波とカイラルd波の超伝導状態における核磁気緩和率と超流動密度の計算を行った[2]。

今回のセミナーでは、これら二つの研究に対する最近の結果について報告する。

[1] H. Ueki, H. Morita, M. Ohuchi, and T. Kita, arXiv:1903.10733 (2019).
[2] H. Ueki, R. Tamura, and J. Goryo, Phys. Rev. B 99, 144510 (2019).


(公開日: 2019年12月18日)