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誤り耐性量子コンピュータの実現に向けて ~連続量光量子情報処理

日程 : 2019年12月17日(火) 3:00 pm - 4:30 pm 場所 : 物性研究所本館6階 第一会議室 (A636) 講師 : 遠藤 護 氏 所属 : 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 世話人 : 小林 洋平 (63365)

量子重ね合わせ状態や量子エンタングルメント状態という、量子力学特有の性質を巧みに利用した量子コンピュータは、処理すべき情報量が爆発的に増大する現代社会において渇望されている。Googleの研究チームが量子超越性に関する論文を発表するなど、特に最近では大きく着目されている[1]。実際、Shorの素因数分解アルゴリズム、Groverの探索アルゴリズムなどの量子アルゴリズムを量子コンピュータで実装することで、非常に高速な計算が可能となることが知られている。しかし、上記アルゴリズムを現実的に行うことができる誤り耐性量子コンピュータが実現するのは20年後以降とされ[2]、技術的・理論的な課題は数多く残されているのが現状である。
本セミナーの冒頭では、こうした状況を整理する意味も込めて、量子コンピュータの概要を示し、誤り耐性量子コンピュータ実現に向けた世界各国の取り組みについても俯瞰する。
次に、我々のグループで注力している光の直交位相振幅に量子状態をエンコードする連続量光量子情報処理を紹介する。現在の量子コンピュータ研究の主流である超伝導トランズモン方式や、イオントラップ方式と比較して、光を用いる手法はスケーラビリティが高く、室温環境下でも動作し、さらに光通信技術との親和性が非常に高い、といった特徴を持つ。本セミナーでは、その中でも①時間多重大規模量子エンタングルメント状態生成[3]と、②全光量子メモリ[4]、に関する直近の成果を紹介したい。

[1] F. Arute et al, Nature 574, 505-510 (2019)
[2] 日本経済新聞電子版 2019年11月22日「量子コンピューター、20年で実用化 政府ロードマップ」
[3] W. Asavanant et al, Science 366, 373-376 (2019)
[4] Y. Hashimoto et al, PRL 123, 113603 (2019)


(公開日: 2019年12月02日)