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第一原理計算と遺伝アルゴリズムを用いた構造探索法による新物質探索;新奇電子化物(エレクトライド)への応用

日程 : 2018年11月21日(水) 1:30 pm - 2:30 pm 場所 : 物性研究所本館6階 第5セミナー室 (A615) 講師 : 多田朋史 所属 : 東京工業大学元素戦略研究センター 世話人 : 笠松秀輔 (63291)

本発表では、遺伝アルゴリズムを用いた結晶構造探索アプローチのうち、VASP等の第一原理計算を電子状態計算ソルバーとして用いることのできるUSPEXを利用した新物質探索について紹介する。本手法はすでに多くの適用事例が報告されており、中でも実験的に困難とされる超高圧条件下での新物質の発見や同定等は、この手法の適用範囲の広さを物語っている。本発表は、常圧または標準的高圧下における新物質探索に絞った内容となっているが、近年さまざまな方面で注目されはじめている電子化物(エレクトライド)の新規探索について紹介する。本手法により新たにリン化合物系エレクトライドが見出され、後に合成、結晶構造解析、物性計測を経てその存在が実験的にも確認された。なお、物性に関しては上記計算と計測とで異なる電子状態を示したが、この差異により(無機系)エレクトライドが強相関化合物群としても出現しうる最初の報告例となった。この結果に関するUSPEXの構造探索の妥当性であるが、結晶構造変化に由来するエネルギースケールは、強相関性発現のエネルギースケールに比べると大きいため、標準的第一原理計算から予測された結晶構造から、新しい強相関物質の発見へとつながる可能性は十分にあり、本研究はその一例を示した結果としても十分に意味のある成果であろう。


(公開日: 2018年11月07日)