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結晶点群の下での多極子の分類と交差相関物性

日程 : 2018年12月28日(金) 1:30 pm - 2:30 pm 場所 : 物性研究所本館6階 第5セミナー室 (A615) 講師 : 速水 賢 所属 : 北海道大学大学院理学研究院物理学部門 主催 : 量子物質研究グループ 世話人 : 中辻 知 (63240)
e-mail: satoru@issp.u-tokyo.ac.jp

固体中の電子は結晶場やスピン軌道相互作用といった様々な要因により、異方的な電荷分布や磁荷分布を示す。このような異方性は電気多極子や磁気多極子といったミクロな多極子自由度によって特徴づけられ、それらの秩序状態が示す電気的・磁気的性質や集団現象に関する研究が長年にわたって精力的に行われてきた[1-3]。こうした多極子は空間・時間反転対称性の有無に応じて電気・磁気・磁気トロイダル・電気トロイダルという、4種類の多極子に分類することができる。一方で近年、こうした多極子の概念は、クラスター空間、混成軌道空間、波数空間といった部分空間において拡張されており、電気磁気効果や異常量子ホール効果などの様々な物性を理解するのに用いられている[4,5]。しかし、磁気トロイダル多極子や電気トロイダル多極子の微視的な表式は最近になってようやく得られたばかりであり[6]、微視的な立場からの系統的な解析はほとんど行われていないのが現状である。

本研究において我々は、32の結晶点群の元で活性化する多極子自由度とそれらがもたらす物性を網羅的に調べた[7]。まず、実空間および波数空間における多極子の微視的枠組みを求めることにより、4種類の多極子がどのような結晶点群や基底関数において存在するかを明らかにした。さらに、電気磁気効果やスピンホール効果における応答テンソルの性質を多極子の視点からまとめた。講演では4種類の多極子がどのような結晶点群の下で活性化するのかを示すとともに、これらの多極子がもたらす電子状態や交差相関物性を具体例を挙げながら議論する。

 

[1] P. Santini, S. Carretta, G. Amoretti, R. Caciuffo, N. Magnani, and G. H. Lander, Rev. Mod. Phys. 81, 807 (2009).

[2] Y. Kuramoto, H. Kusunose, and A. Kiss, J. Phys. Soc. Jpn. 78, 072001 (2009).

[3] H. Kusunose, J. Phys. Soc. Jpn. 77, 064710 (2008).

[4] S. Nakatsuji, N. Kiyohara, and T. Higo, Nature (London) 527, 212 (2015).

[5] M.-T. Suzuki, T. Koretsune, M. Ochi, and R. Arita, Phys. Rev. B 95, 094406 (2017).

[6] S. Hayami and H. Kusunose, J. Phys. Soc. Jpn. 87, 033709 (2018).

[7] S. Hayami, M. Yatsushiro, Y. Yanagi, and H. Kusunose, Phys. Rev. B 98, 165110 (2018).

 


(公開日: 2018年10月24日)