日程 :
2026年6月5日(金) 4:00 pm - 5:00 pm
場所 :
物性研究所本館6階 第5セミナー室 (A615)
講師 : 石崎 章仁 所属 : 東京大学 大学院理学系研究科 化学専攻 物理化学講座 量子化学研究室 教授 世話人 : 岡 隆史
いかなる量⼦系も純粋な孤⽴系とは⾒なし得ず、常に何らかの外界と接触することで、ときに量⼦性が破壊され、ときには量⼦性が頑健に保持されます。殊に複雑な分⼦系においては量⼦性の維持と崩壊のバランスが化学反応の様態に大きな影響を及ぼし得るため、「多⾃由度ゆえに生じる揺らぎや摩擦に曝されながら量⼦効果はどのような影響を受けるのか」を理解することは物理化学/化学物理において重要な課題となります。
光合成初期過程における動的過程は、そのような量⼦散逸系の顕著な例の一つといえます。フェムト秒レーザーを⽤いた分光計測技術の成熟により、タンパク質の運動による⾊素の電⼦状態の動的揺らぎや複数の⾊素に広がる電⼦励起の量⼦⼒学的⾮局在化状態、タンパク質内部でのエネルギーの流れなど、ダイナミクスや量⼦⼒学的現象が詳細に観測できるようになりました。観測された生体分子系における量子系に対する揺動散逸現象は欧米の量子物理学者を強く刺激し、量子生物物理という新たな学際領域が隆盛する契機の一つとなりました。
本セミナーでは、光合成タンパク質が内包⾊素分⼦の電⼦状態に与える動的揺らぎの大きさ・時間スケール・⾮マルコフ性に着⽬することで、⽣体分⼦系における量⼦現象を制御する動的揺らぎの役割の解析、また、分子物質系における動的機能探求への展開を議論したく思います。また、解決したくて解決できない幾つかの問題について物性研の皆様のご意見を伺いたく、話題提供できればと思います。さらに、現在進めている⾮古典的光を利⽤した時間分解分光計測の理論研究の試みについて紹介いたします。
(公開日: 2026年05月29日)