軌道補正方法(COD補正)
新しい軌道補正方法
新しい軌道補正方法の概念図を示す。
条件付き固有ベクトル法(新しいCOD補正方法)の定式化
固有ベクトル法(従来の方法)
現在、加速器におけるビーム軌道補正用フィードバックシステムに用いられているCOD補正方法としては、固有ベクトル法、最小二乗法、フーリエ分解法などがある。ここでは、固有ベクトル法について解説する。
いま、BPMで測定したCOD、ステアリングの蹴り角、レスポンスマトリックスをそれぞれ、,
, R とする。またBPMの数をM個、ステアリングの数をN個とすると、レスポンスマトリックスはMxNの行列である。いま、ノルム
を(1)式で定義する。
( 1 )
いま(1)が可能な限りゼロに近づくようなを求めることが目的である。ここで、i
番目のBPMにおけるベータトロン関数、位相をそれぞれ、(βi , ΦiB) とし、j 番目のコレクター(ステアリング電磁石)におけるそれらを(βj , ΦjC)と書くことにすれば、レスポンスマトリックスのij 要素は下式のように表せる。
( 2 )
ノルムは、θj ( j=1,2,……, N ) に関する微分がゼロになるときに最小値を取る。このとき、ステアリングの蹴り角を表すベクトル
は、以下のように決定される。
( 3 )
ここで、”T”は転置行列(或いは、ベクトル)を表す。RTRは、実対称行列であるから、
( 4 )
と表せる。
U 、Λはそれぞれ以下のように書ける。
( 5 )
( 6 )
ここで、、
はそれぞれ,行列RTRに関するi番目の固有ベクトル、固有値を表す。
式(4-3),(4-4)より、は以下のように得られる。
( 7 )
ここで、
( 8 )
( 9 )
である。
ここで小さな値の固有値に関しては、行列Λ-1において、その逆数をゼロで置き換える。
この操作により、ステアリングが大きな蹴り角を持つことを防ぐとともに、BPM、ステアリングのエラーを緩和することができる。
条件付き固有ベクトル法(新しい方法)
条件付き固有ベクトル法では、固有ベクトル法に束縛条件を付加して解くことになる。ここでの束縛条件とは以下の(10)式で与えられ、ローカルCOD補正の役割をはたす。
( i=1,………, L ) ( 10 )
ここで、Lは束縛条件の数を表す。いま、(1)式で表されるノルムを(10)式の条件下でラグランジュの未定乗数法を用いて解く。関数S
が次式で与えられるとき、
( 11 )
Sの、
に関する微分がゼロになるとして、
( 12 )
を得る。ここで、
,
,
,
( 13 )
である。前セクションの固有ベクトル法の場合と同様にして、逆行列A-1はn 個の固有ベクトルを用いて、
( 14 )
と表せる。ここで、(12)の連立方程式を解くことにより、
( 15 )
( 16 )
と得られる。この(16)式が、固有ベクトル法における(7)式に対応するものである。
ここで、
( 17 )
逆行列P-1が存在するための必要条件は、n≧L である。また、(10) の zi が任意に選ばれたBPMにおけるビーム位置で、行列Cが選んだBPMに対応したレスポンスマトリックスR
の部分行列である場合、選んだBPMでのビーム位置はゼロに束縛される。
例えば、BPMとして挿入光源の両端にあるものが選ばれれば、リング全周に渡るCODを補正しつつ、同時に、挿入光源の両端におけるBPMでのビーム位置と角度もゼロに保つことが可能である。