光源の進展状況
光源リングのラティスについては、以前に第I期計画に対して複数の案を検討していたが、電磁石及び真空チェンバーの設計に無理のない1つの案に収束しつつある。この案では、リング周長は約230m、エミッタンスは0.7 nm・rad(0mA)〜1.5 nm・rad(200mA)で(注1)、その他の基本的な設計仕様は変わっていない。その時の光源の輝度及びフラックスを図1、図2(注2)にそれぞれ示す。現在、ビーム寿命の確保を目的としてmomentum acceptanceとダイナミックアパーチャをより大きくするための検討が続けられている。
電磁石及び真空システムに関しては、このラティス案をもとに具体的な設計に入っている。四極電磁石はビームラインとの干渉を避けるためにC型とし、さらに排気速度を上げるために排気ポートを設けて、今までの光源にはない超高真空(10-10Torr以下)の実現を目指している。高周波加速空洞や軌道フィードバックシステムについては、第II期計画と基本的な設計は変わらず、R&Dが引き続き進行中である。この他、ライナック、制御、モニタなどの設計も着実に進展している。挿入光源については、もともと第II期計画用として開発していたマルチポールウィグラーの1/2モデルが設計・製作されて、永久磁石で3テスラの磁場発生に成功した。実機ではギャップ20mmに対して2.3テスラの磁場が発生可能である(図1、図2参照)。
建物に関しては、加速器トンネルや実験ホールの他に、低速陽電子ビーム実験室や、ユーティリティ(電源、冷却水、空調等)についても設計が進んでいる。地下に、ライナックと低速陽電子利用関係の設備を、1階にリングトンネル、実験ホール、加速器機械室を配置し、加速器機械室に2階を設けて空調機器や電源等を設置する。また、建物の両サイドに実験機器室や居室等を設ける。図3に建物の鳥瞰図を示す。建築面積は約8000 m2で、建設期間に約2年必要なため、施設全体としては3年計画とすることになった。建設経費は、建物のみで約70億円、全体で約140億円になる見込みである。
(注1): ビーム内散乱の効果により、エミッタンスが電流値に依存して変化する。
(注2): 偏向電磁石及びマルチポールウィグラー(W200)のフラックスは、水平方向の発散角1mrad当たりの値である。
[図の説明](図は省略)
図1 第I期計画の輝度
図2 第I期計画のフラックス
図3 高輝度光源施設(第I期計画)の鳥瞰図
Monday,30,Nov,1998