東京大学高輝度光源計画
加速器の概要

挿入光源の非線形効果

  アンジュレーター磁場の非線形成分の効果を考える。


基本
チューンシフトの近似公式
FFT
見積もりの結果



基本

  水平方向に電子を蛇行(磁場は垂直方向)させるような直線偏光の挿入光源を考える。線形の範囲では、電子は垂直方向の集束力を受けるだけである。すなわち、運動方程式は

と書ける。また、非線形成分を入れた式は、
と書ける。(この式のの極限を考えれば、線形の場合に帰着する。)

チューンシフトの近似公式
  チューンシフトについては、ポテンシャルを  と、デルタ関数で近似すれば、ハミルトニアンによる正準摂動法(6極による振幅依存チューンシフトと同じ)により、

と書ける。ただし、は変形ベッセル関数であり、ちなみに

である。展開式の第1項のが線形のチューンシフト(振幅に独立)に対応している。グラフで書けば、

Plot[{BesselI[1,x]/x, 0.5+x^2/16},{x,-1,1}]
である。見て分かるとおり、このくらいの領域ではほとんど放物線である。
 

  例えば、U46Lの場合、1GeV で high emittance mode においてギャップ最小(磁場最強)の時、

であるので、Y方向の初期振幅がの粒子の場合、
となり、チューンシフトの非線形成分は
よりである。

Fast Fourier Transform

  トラッキングによって求める場合、リングの軌道上のある場所で周回ごとの粒子の座標を求め、それにFFTをかければよい。

  例えば、U46L、1GeV で high emittance mode においてギャップ最小の時、Y方向の初期振幅がの粒子の場合、U46L中央での粒子のY座標は、横軸を周回数とすれば、

となる。これにFFTをかければ、
となり、ピークのチューンを求めればとなる。これには線形成分、非線形性分が両方含まれているので、線形成分についても同じこと(線形の蹴りの式でトラッキング)を行って、その分を引かなくては行けない。線形成分のみの場合のチューンはとなるので、非線形線分はとなる。これは計算式と非常によく一致している。
 
見積もりの結果

  U46L、1GeV で high emittance mode においてY方向の初期振幅がの粒子の非線形チューンシフトを計算する。FFTは 1024 点で行った。(なお、表のは線形効果の補正後の値である。)

 
variables 0.003 0.006 0.009 0.012 0.015 0.018 0.021 0.024 0.027 0.03 0.033
近似公式による計算
18.25742 12.90994 10.54093 9.128709 8.164966 7.45356 6.900656 6.454972 6.085806 5.773503 5.504819
0.784727 1.109771 1.359186 1.569453 1.754702 1.92218 2.076191 2.219542 2.35418 2.481523 2.602643
BetaY ave
16.6039 14.54713 12.98248 11.81172 10.97361 10.43195 10.16337 10.15305 10.39444 10.89155 11.6611
136.5909849
emittance
2.16E-09 2.12E-09 2.08E-09 2.05E-09 2.01E-09 1.97E-09 1.94E-09 1.91E-09 1.88E-09 1.85E-09 1.82E-09
sigma
20
arg
1.035604 0.96018 0.89867 0.849405 0.811427 0.784175 0.767362 0.7605 0.76311 0.774788 0.795279
preposition
0.006446 0.012892 0.019337 0.025783 0.032229 0.038675 0.04512 0.051566 0.058012 0.064458 0.070904
0.570093 0.559878 0.552203 0.546469 0.542295 0.539431 0.537717 0.537029 0.53729 0.538469 0.540585
0.007502 0.011229 0.013105 0.014152 0.014958 0.015908 0.017296 0.019387 0.022486 0.027007 0.033556
トラッキングから計算
Nonlinear FFT
0.186523 0.19043 0.191406 0.192383 0.192383 0.194336 0.196289 0.198242 0.202148 0.208008 0.213867
線形成分
0.179688 0.179688 0.178711 0.178711 0.178711 0.178711 0.178711 0.179688 0.179688 0.179688 0.179688
非線形
成分
0.006836 0.010742 0.012695 0.013672 0.013672 0.015625 0.017578 0.018555 0.022461 0.02832 0.03418

チューンシフトの非線形成分をグラフにすると、以下のようになる。
 

  近似計算とトラッキングが非常によく合っていることが分かる。