原子・分子・クラスターのVUV・軟X線分光
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学術的意義・発展性
個々の研究課題は多岐にわたるが、大別すると二つに分類することが出来る。1) 量子状態を選別あるいは制御して解離あるいは光電離過程を完全に解明しようとするもの。2)通常では稀なサンプルを対象とした分光。
1) としては、電子状態・振動状態・回転状態を指定した超励起分子の分光学的な研究による価電子素過程の解明、振動準位選択による内殻励起解離過程の解明、振動準位を選別した光電離の完全実験、円偏光励起による解離反応過程の制御の探索などがあげられる。
2) としては、強電場中の光励起過程、正負イオンの分光、クラスターの分光などがあげられる。
これらの提案は、従来の中性原子・分子の単なる高分解能精密測定の延長線に留まるものではなく、電子相関、電子の運動と核の運動の結合を解明しようとするものであり、学問的意義は極めて大きい。ここでの研究成果は、基礎物理学・基礎化学に貢献するばかりでなく、光化学反応の制御や孤立系の電子状態と凝縮系の電子状態の相関に光を投ずるものとなるので、将来の発展が期待される。 |
国際競争力
個々の研究グループは、それぞれの研究分野でそれなりに成果をあげている。研究の独創性のために、第2世代の放射光施設で行なった実験であっても、国際的にも高く評価されているものも幾つかある。高輝度光源により、高分解能・高強度の極紫外・軟X線が使えるようになれば、ここで提案されているいくつかの研究課題で、広く使われている同時計測実験のデータの質が数段あがるので、一層諸外国の注目をあびることになるであろう。 |
高輝度の必要性
原子や分子の分光研究においては、高分解能測定は必須条件である。しかしながら、高分解能で中性原子分子の光吸収スペクトルを測定するだけの実験は終了したと言っても過言ではない。高分解能かつ高強度の極紫外・軟X線が使えて初めて、ここで提案しているような研究が高精度で可能になる。サンプル位置でのスポット・サイズも重要な要素である。スポット・サイズが小さければ小さいほど、二次生成物(光電子・光イオン・光)の分析器の効率があがるし、同時計測の効率も向上する。
従って、ここで提案されている研究を高いレベルで展開していくためには、高輝度光源が必須である。 |
技術的な実施可能性
個々の要素技術は、それぞれの研究グループで開発されているので、高品質の極紫外・軟X線が得られれば、直ぐに成果を出すことは可能であろう。もちろん、この種の実験は入射光の特性だけによるものばかりではないので、高品質の極紫外・軟X線に最適化するように、現有実験装置の改良をしていかなければならないであろう。 |
その他
この研究分野では、大きな実験装置を共有して幾つかの実験グループが異なるテーマの実験をおこなうのではなく、それぞれ3〜5名の小さなグループが研究目的に最適化した独自の実験装置を保有していて、それを用いて実験を行なっていくのが特徴である。共有するのは、ビームラインだけである。 |