12 物性科学

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表面化学反応・表面磁性ダイナミクス

学術的意義・発展性

高輝度軟X線放射光を利用することで、固体表面における吸着種の動的過程や磁性薄膜の動的磁化過程を、時間分解エネルギー分散型 XAFS-XMCD 法、時間分解・深さ分解XAFS-XMCD 法、時間分解高分解能光電子分光法、光電子顕微鏡によって追跡する。これにより、表面化学反応における反応中間体の動的振舞、外部刺激による吸着種の過渡的構造変化、表面原子分子吸着・反応時の磁性薄膜の動的磁化過程などが研究対象となりえる。第3 世代放射光の利用では2 次元の空間分解が主流であるが、本課題ではこれに加えて、ミリ秒以下の時間分解、薄膜の深さ分解を導入し、表面反応・表面磁性を時空間4 次元的に分析することを目指している。局所構造解析法である XAFS と、元素毎の磁性を知る手法である XMCD の特徴をそれぞれ活かした新しい視点からのアプローチが可能になる。表面化学・表面物性(磁性)の分野から少なくとも5 グループ以上の利用が想定され、その利用価値も甚大である。

国際競争力

PF の偏向電磁石ビームラインを用いた現在のエネルギー分散型 XAFS 法は、すでに世界の第三世代光源のアンジュレータビームラインにおける高速 XPS と時間分解能の点で同等の性能を示している。また、軟X線 XAFS の深さ分解は現在のところほとんど行われていない。光源としてアンジュレータ光を用いれば、表面吸着系の内殻吸収・電子分光としては世界最速の時間分解能を持つようになり、これに深さ分解や空間分解を加えて、表面化学(反応・物性)の分野において他に追随を許さない先端的な研究を展開することが可能になる。また、光電子顕微鏡においてもエミッタンスの向上により諸外国の現状のものより高い性能が期待できる。

高輝度の必要性

PF の偏向電磁石によるエネルギー分散型 XAFS ではX線強度の問題で時間分解能が1 s 程度が限界である。時間分解・深さ分解 XAFS-XMCD 法でも同程度の時間分解能と想定される。これをミリ秒以下に向上するにはどうしても第3世代アンジュレータ光源が必要である。また、時間分解・2 次元空間分解の手法として光電子顕微鏡は既に定着しており、第3世代アンジュレータ光源が必須である。

技術的な実施可能性

時間分解エネルギー分散型 XAFS-XMCD 法は PF においてすでに開発実績がある。時間分解高分解能光電子分光法、光電子顕微鏡法は既に確立し、市販品がある。時間分解・深さ分解 XAFS-XMCD 法も同じ原理で確実に実施できる。また、ビームライン建設も含めて十分な実績を持つグループの参加が複数見込まれる。