01 ナノ・材料科学

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量子ナノ構造の光電子分光

学術的意義・発展性

21世紀のIT 社会を支える最先端デバイス開発には、原子オーダーでの界面構造解析、界面電子状態解析が不可欠で、それらに基づく新材料開発が戦略的に極めて重要である。具体的には、1nm 以下の極薄ゲート絶縁膜、半導体量子ドット(InAs やGaN など)、超高密度磁気記録用TMR ヘッド材料(2原子層絶縁膜)・磁性ナノ構造媒体(反強磁性/強磁性の交換結合)などのナノ構造を分子線エピタキシー装置などで作製し、in situ で放射光光電子分光によって解析することが強く求められている。また、ナノ加工によって微細パターン化された基板上への成長したナノ結晶の電子状態や磁区構造を数10nm の空間分解能で解析し、デバイス作製プロセスにフィードバックすることに対する産業界の期待は大きい。さらに、ナノスペースラボとしてこれら制御された量子ナノ構造をコンビナトリアル的手法で作製し、高分解能光電子分光・顕微鏡で解析することによって、ナノ構造だからこそ出現する新しい物性・機能を解明することの学問的意義は極めて大きい。

国際競争力

現在、PF のBL-1C やBL-2C においてレーザーMBE 装置とSES100 システムを結合させて、LaSrMnO 系超薄膜をコンビナトリアル的手法で作製し、角度分解光電子分光で解析している。組成や表面構造を制御した薄膜表面の電子状態がdrastic に変化する様子を明瞭に観察しており、その有効性はすでに実証している。これに光電子顕微鏡PEEM を新しく接続する予定であるが、本提案のビームラインが完成すれば、20-1000eV の高輝度放射光(偏光可変)を使った電子状態・磁気状態のエネルギー分解、運動量分解、空間分解測定が可能になり、世界的に見てもOnly one のシステムとなって圧倒的な国際競争力を維持することが出来る。

高輝度の必要性

上記、コンビナトリアル的量子ナノ構造の高分解能光電子分光にはエネルギー分解能10meV 以下、光フラックス1013 photons/sec 以上が必要になる。また、可変偏光アンジュレータからの円偏光(楕円偏光)を用いたPEEM測定には集光ミラー系(K-B ミラー)で試料上で10m 程度に放射光を集光する必要がある。そのためには高輝度リング+アンジュレータ+高効率ビームライン+高感度検出器の組み合わせが不可欠である。本課題提案者にはELETTRA でのSPELEEM、Arizona 州立大でのSPLEEM の経験者も加わっており、動的観察(video rate imaging)に向けた計画も検討しつつある。

技術的な実施可能性

本計画には、東大工、理、新領域、物性研、東工大総合理工、応セラ研、東北大金研、多元研、KEK、産総研、NEDO ナノ機能合成プロジェクト、半導体理工学研究センター、産業界等からの参加が見込まれている。技術的には、20-1000eV の高輝度放射光(偏光可変)用アンジュレータ、K-B ミラー付きビームライン開発が必要であるが、実験システムについては現在PFで立ち上げを行っているPLD-SES100 システム+PEEM を移設する予定であり、立ち上がりは極めて早い。

その他

ビームライン建設に際しては、若手研究者が施設側と一緒に最適ビームライン設計に関与する。
また、本課題の進展を見つつ、産業界コンソーシアムを結集して作るビームライン(偏向電磁石)の建設に指導・助言を与え、本ビームラインとの棲み分け、high throughput 解析を行う。