東京大学物性研究所・体験活動プログラム

本研究体験プログラムの概要

いよいよ連休明けの16日朝9時よりスタートします。物性研本館A614セミナー室に直接お集まりください。

開催日時 2014/9/16(火)--19(金)

開催場所 東京大学柏キャンパス 物性研究所 長谷川研究室、杉野研究室

  • 世界最先端の固体科学の研究を推進する、東京大学物性研究所の設備を利用した研究体験プログラムです。最前線で活躍する研究者による講義と施設の見学に加えて、先端科学の現場を体験することができます。

  • 量子力学に依れば、電子は波として性質を持ち、その振る舞いはシュレディンガーの波動方程式によって記述されます。この体験学習では、電子の波としての振る舞いの一端を、コンピュータによる計算と、走査トンネル顕微鏡による実験観察を通じて、実感してもらうことを目指します。

1. 超伝導体・量子化磁束を観察する
2. STM探針で原子を一つずつ操る(原子マニピュレーション)
3. 電子の流れを計算機で体験する(計算機シミュレーション)

長谷川研究室でのSTM実験の様子


日程表(最終版9/12改定)

資料

■lecture note(初日午前の講義「物性研究のための量子力学入門」のメモです)

講義のメモを表示します。

■sample program(初日午前の講義で示すmathematica simulationのソースファイルです)

サンプルプログラムを表示します。

走査型トンネル顕微鏡(STM)の原理について

■STMは、先の尖った白金やタングステンなどの探針と表面原子の間に流れるトンネル電流を検出する顕微鏡です。 トンネル電流は探針と表面原子の距離に対して指数関数的に変化します。そのため、原子1個の半分の距離の差でも電流値を通して識別できます。 その結果、表面形状を原子分解能で観察することができます。

■観察できるのは原子像だけではありません。超伝導の磁束などの電子状態を直接見ることができます。 また、STM探針を用いて原子を動かして表面構造を変えることができます。これを原子マニピュレーションと言います。

■STM探針で見ているのはトンネル電流値です。これは量子力学的現象で直感的に把握するのが困難な場合が多々あります。量子シミュレーションを行って理解する必要があります。

半導体表面の試料を見ると下図のようなきれいな像が得られます。原子が規則正しく配列して平坦なテラスを構成しているが、ところどころ欠陥が入っている様子が見て取れます。このきれいな表面上で起こる物性現象を観察することができます。

実習の内容について

■超伝導体・量子化磁束の観察

物質が超伝導になると電子状態が変化します。STMにより、この電子状態の変化を捉えることにより、超伝導特性の分布が観察できます。

超伝導体に磁場を加えると、超伝導状態が局所的に壊れ、一定量(「量子化された」)の磁束が貫く「量子化磁束」が形成されます。これをSTMで見てみましょう(下図、赤いところが量子化磁束でその大きさは約70nm)。







■原子マニピュレーション(操作)

STMでは、針の動きをうまく制御できれば、試料上に載せた原子を動かすこともできます(図、13個のAg原子で書いた「UT」。電子の波を閉じ込めると、何が起こるでしょう?




■電子の流れを計算機で再現して理解する

STMでは電子の流れを見ていますが、ミクロの世界では電子は粒子としての性質と波としての性質を併せ持つ物質波として振る舞います。

物質波は、シュレディンガー方程式に従って運動します。シュレディンガー方程式を計算機で実際に解いてみましょう。

左図のような電子がSTM探針を通って表面に到達したとしましょう。その後の電子の振る舞いをシミュレーションで調べることができます。

シュレディンガー方程式は偏微分方程式の一つです。偏微分方程式は、簡単なものであれば、数学アプリであるmathematicaを用いて数値的に解くことができます。実習では表面を非常に単純なポテンシャルに置き換えてシミュレーションを行います。

■計算例

電子が表面上で激しく振動しながら運動している様子が得られます。その平均的な振る舞いをSTMでは観察しています。

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