平行板間に閉じ込められた高分子溶融体の緩和モード解析



萩田克美(慶應義塾大学)


平行板間に閉じ込められた高分子溶融体中の1本の高分子鎖の最長緩和時間、自己拡散係数の挙動を、モンテカルロシミュレーションで調べる。実験では、高分子鎖の大きさに比べて平行板の間隔が小さい場合には、板による拘束によって緩和が遅くなるのではなく、緩和が速くなる事実が観測されている。緩和が速くなる原因は、表面の効果によるものと考えられている。理論の立場からは、高分子鎖の大きさに比べて平行板の間隔が十分小さい場合に、平行板の間に複数本の鎖が入らないと考えると、2次元の高分子濃厚系の振る舞いを示すと予想できる。本研究の動機の1つは、上記の予想が成り立つかどうかについて確認することである。我々のシミュレーション結果よると、重合度が増すと、最長緩和時間等の重合度依存性の冪指数がバルクよりも急激に小さくなるが、単純に2次元的な振る舞いの冪指数に収束していなかった。これは、高分子鎖が長いケースについてシミュレーション長が短い可能性や選んだサンプルが悪かった可能性も考えられる。まずは、高分子鎖の大きさに比べて平行板の間隔が十分小さい場合に2次元の高分子濃厚系の振る舞いを示すかどうかについて確かめるために、2次元的な振る舞いが成立つ本数の少ない状態から本数を増やし濃厚系に移り変わるときの変化について、調べている。

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