準結晶上の frustrate した Ising spin 系の示す磁性について、
MC法を用いた研究



藤田 早苗(東北大学 大学院)


1984年に金属合金として発見された準結晶の持つ非周期的秩序構造は次のような著しい特徴を持つ:系に含まれる任意の局所構造が有限密度で分布するのみならず、その分布における隣り合った局所構造の間の距離はその局所構造のサイズ程度となる。従って、準結晶がどのような磁性的性質を持つかは興味深い問題と言える。ところが、沢山の磁性準結晶(局在モーメントを持つ準結晶)が調べられたにも拘わらず、磁気的秩序(強磁性など)を示すものは一つも見つかっていない。これらの磁性準結晶は低温において例外なくスピングラス的凍結現象を示す。局在モーメント間に働くRKKY相互作用がその原因と考えられているが、それを裏付ける理論的研究は存在しない。そこで我々は、次近接相互作用を反強磁性にすることで、幾何学的フラストレイションと最近接の強磁性相互作用との競合を導入した、HBSタイリング(2次元準結晶)上のIsing modelの磁性の様子を、古典モンテカルロシミュレーションによる焼鈍し法やエントロピックサンプリング等の計算によって、明らかにしようと試みた。その結果、低温でエントロピーが残ったまま凍結する振る舞いが見られることが分かった。

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