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量子異常による輸送現象の準古典極限における一般論

日程 : 2018年11月12日(月) 4:00 pm - 5:00 pm 場所 : 物性研究所本館6階 第5セミナー室 (A615) 講師 : 石塚 大晃 氏 所属 : 東京大学 工学系研究科 物理工学専攻 世話人 : 加藤 岳生 (63255)講演言語 : 日本語

  ワイル半金属の提案・発見はワイル粒子の物理の実験的検証を可能とするとともに,ワイル電子系に特有の新しい機能性が実現できる可能性がある.こうしたワイル電子に特有な現象の代表例として,ワイル粒子の電磁応答におけるカイラル量子異常がある[1,2].カイラル量子異常は,実験的には磁気抵抗を生じることが予想されており[2,3],実際に近年,ワイル/ディラック半金属の候補物質において理論の予想と矛盾しない磁気抵抗が観られている.一方で,こうした物質の多くはワイル・コーンに傾きやワーピングがあるなど,理想的なワイル電子とは異なる.中でもCd3As2はフェルミ面がディラック・ノードから大きく離れ,全てのディラック・ノードが一つのフェルミ面に含まれている.にも拘らず,これまでの予想に反して,量子異常と矛盾しない負の縦磁気抵抗が観測されている[4].

  こうした実験の進展もあり,量子異常と関連した磁気抵抗の理論研究が近年盛んに行われているが,量子異常と関連した磁気抵抗の計算式は複雑で,その一般的性質を理解するには至っていない.我々は最近,Sonらによって提案された準古典論を一般化・再定式化することで,準古典極限においては量子異常と関連した磁気抵抗がBerry曲率Ωkを用いて定義されるベクトルWkΩk×(vk×B)を観ることで直観的に理解できることを見出した[5].本セミナーでは,このWkに基づく定式化を紹介し,この形式を用いることで上述のCdAsの磁気抵抗の頑健性[6]やtype-II ワイル半金属における磁気抵抗の一般的性質[5]が直感的に観てとれることを議論する.

[1] A. Vilenkin, Phys. Rev. D 22, 3080 (1980).
[2] M. Neilsen and M. Ninomiya, Phys. Lett. B 130, 390 (1982).
[3] D.-T. Son and B. Z. Spivak, Phys. Rev. B 88, 104412 (2013).
[4] S. Nishihaya et al., Phys. Rev. B 97, 245103 (2018).
[5] H. Ishizuka and N. Nagaosa, preprint (arXiv:1807.08147).
[6] H. Ishizuka and N. Nagaosa, preprint (arXiv:1808.09093).


(公開日: 2018年10月24日)