ISSP - The institute for Solid State Physics

Seminar
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[理論インフォーマルセミナー]
冷却原子系における非エルミート近藤効果
日程 : 2018年9月25日(火) 16:00 - 17:00 場所 : 物性研究所本館6階 第5セミナー室 (A615) 講師 : 中川 大也 氏 所属 : 理化学研究所 創発物性科学研究センター 世話人 : 加藤 岳生, 阪野 塁講演言語 : 日本語

近藤効果は、固体電子系における代表的な量子多体効果のひとつであり、強相関系の理解において重要な役割を果たしている。これまでに磁性不純物を含んだ金属やf電子系化合物のほか、量子ドットなどの人工量子系においても観測がなされているが、近年、真空中にトラップされた冷却原子気体において近藤効果を実現しようという試みが理論・実験共に精力的に行われている[1,2]。冷却原子気体で近藤効果を実現することの強みとして、その制御性の高さによって強相関量子多体系のクエンチダイナミクスなどの非平衡現象を観測できることや、固体電子系とは違った特性により従来は考えられなかったような新たな近藤効果が実現できることなどが挙げられる。本セミナーでは、冷却原子系における近藤効果の実現が、通常の物性物理の範疇を超えた、「非エルミートハミルトニアンによって記述される量子多体問題」を与えることを提案する[3]。ごく最近、冷却原子気体での近藤模型の実験的な実現が報告された[2]。この実験においては未だ近藤効果の観測には至っていないが、フェルミオンと不純物の間の非弾性散乱に起因する原子のロスが報告されている。この非弾性散乱を量子開放系として定式化することにより、近藤相互作用の係数が複素数で与えられる、非エルミート近藤模型を導出することができる。この非エルミート近藤模型をくりこみ群を用いて解析することにより、通常のエルミートな系では現れることのない(具体的には、量子不純物系のg-定理を破る)新奇なくりこみ群フローと、それに付随した量子相転移が現れることを示す。また、われわれは、この非エルミート近藤模型の厳密解をBethe仮設法を用いて導いた。厳密解の示す量子相転移線はくりこみ群による結果とよく一致する。

Reference:
[1]A. V. Gorshkov et al., Nat. Phys. 6, 289 (2010).
[2]L. Riegger et al., Phys. Rev. Lett. 120, 143601 (2018).
[3]M. Nakagawa, N. Kawakami, and M. Ueda, arXiv:1806.04039.


(公開日: 2018年09月14日)