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磁性体における偏極中性子散乱研究 -定常炉・核破砕炉の相補利用を見据えて

日程 : 2018年8月20日(月) 1:30 pm - 2:30 pm 場所 : 物性研究所本館6階 第5セミナー室 (A615) 講師 : 南部 雄亮 氏 所属 : 東北大学金属材料研究所 世話人 : 益田隆嗣 (63415)
e-mail: masuda@issp.u-tokyo.ac.jp
講演言語 : 日本語

中性子のスピン自由度に着目した偏極中性子散乱は、磁性体を始めソフトマターなど様々な物質群に対して行われてきた。偏極中性子といえば、これまでは核反射と磁気反射の分離や、磁気構造の精度良い決定を目的に用いられることが多数であった。しかしながら、近年は中性子実験施設における中性子束の増強や偏極機器の開発・改良によって、非弾性領域や上記以外の目的についても実験を行えるようになってきた。例えば、Bravias格子の場合、磁気構造の決定には規約表現が有用ではなく、磁気モーメントの向きを一意に決定することが難しい場合がある。偏極中性子のSFとNSFを比較することで、中性子スピンに垂直な面に対する磁気モーメントの面内・面間成分の分離ができることはよく知られている。また、偏極中性子方向を変えることでカイラル項や核磁気干渉項の観測を行うことが可能である。これらは、トポロジカルな性質を持つ物質の理解に必須な情報であり、今後標準的な測定手法になっていくものと予想される。
本講演では、偏極中性子散乱一般を議論するため、中性子スピン方向を正規直交系に分解したBlume-Maleevの表式から始め、それぞれの散乱チャンネルから観測できる物理量をまとめる。その後、我々の磁性体における偏極中性子散乱の例を挙げ、スピンの面内面間成分の分離や、スピントロニクス物質における非弾性散乱領域のヘリシティがスピンゼーベック効果と関連することを示す。また、東北大学がJ-PARCに建設している偏極中性子散乱装置POLANOを紹介し、定常炉と核破砕炉での棲み分けの観点から、JRR-3再稼働後にそれぞれで展開しうる偏極中性子研究について議論を行いたい。


(公開日: 2018年08月10日)