近藤効果の非平衡ゆらぎ
日程 :
2018年7月5日(木) 4:00 pm 〜
場所 :
物性研究所本館6階 大講義室(A632)
講師 : 小林研介 所属 : 大阪大学 大学院理学研究科 物理学専攻 世話人 : 杉野 修 ・ 松田 康弘
e-mail: danwakai@issp.u-tokyo.ac.jp講演言語 : 日本語
e-mail: danwakai@issp.u-tokyo.ac.jp講演言語 : 日本語
半導体や金属を微細加工して作製される微小な固体素子をメゾスコピック系と呼ぶ。その最大の特長は、量子効果が本質的であるようなスケールにおいて、磁場や電場などの外場を利用することで、制御性の高い実験ができる点にある。たとえば、電子干渉計や人工原子等で発現するコヒーレンスや電子相関に基づく多彩な量子現象の観測とその制御は、1980 年代以降の物性物理学の発展に大きな貢献を果たしてきた。
ところで、これまでにメゾスコピック系に対して行われてきた実験的研究の多くは、電流(あるいは電気伝導度)測定を主体とするものである。このような測定によって検出される情報は時間平均された性質である。その一方で、近年、非平衡状態の動的な情報を得る手段として、電流ゆらぎ測定が大きな関心を集めるようになってきた。
本談話会では、まず、メゾスコピック系における電気伝導と電流ゆらぎについて紹介する。その後、人工原子(カーボンナノチューブ量子ドット)を用いて、非平衡領域にある近藤効果について行った研究についてお話しする[1, 2, 3]。私たちの成果は、非平衡量子多体系に対して、理論を定量的に検証するレベルで精密な実験的研究が可能であることを示す。
本研究は、荒川智紀、秦徳郎、藤原亮(阪大理物)、M. Ferrier、R. Delagrange、R. Deblock、R. Weil (パリ南大‒CNRS)、阪野塁(東大物性研)、寺谷義道、小栗章(大阪市大理)の各氏との共同研究によります。
[1] M. Ferrier et al., Nature Phys. 12, 230-235 (2016). [2] M. Ferrier et al., Phys. Rev. Lett. 118, 196803 (2017). [3] 解説として、小林研介、パリティ 32, 16-21 (2017).(公開日: 2018年06月05日)