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熱・スピン相互変換

日程 : 2017年11月10日(金) 4:00 pm - 5:00 pm 場所 : 物性研究所本館6階 第5セミナー室 (A615) 講師 : 大沼 悠一 氏 所属 : 日本原子力研究開発機構 世話人 : 加藤 岳生 (内線:63255)講演言語 : 日本語

電子のスピン自由度の流れであるスピン流は、電流を伴わないため、エネルギー損失を抑えた情報伝達を可能にすると期待されている[1]。スピン流を生成する手法の一つとしてスピンゼーベック効果が知られている[2-4]。磁性体と金属の接合系において、熱からスピン流が生成される。生成スピン流は金属に注入され、スピン軌道相互作用を起源とするスピンホール効果[1]を通して電流に変換される。スピンゼーベック効果が磁性絶縁体であっても発現することから、スピン流を介した新しい熱電発電機構として注目を集めている。
スピンゼーベック効果に対して、その逆効果であるスピンペルチェ効果、つまりスピン流による熱流生成現象が近年報告された[5, 6]。磁性体と金属の接合系において金属に電流を流すと、スピンホール効果によって電流がスピン流に変換され、磁性体に注入される。この時、同時に熱流が生成され磁性体に注入される。実際に、金属と磁性絶縁体の界面において発熱と吸熱が同時に観測された[6]。
本講演では、非平衡グリーン関数法を用いて構築した、スピンゼーベック効果とスピンペルチェ効果を統一的に記述する理論を説明し[7]、熱とスピンの相互変換現象の微視的機構を明らかにする。

[1] S. Maekawa, S. O. Valenzuela, E. Saitoh, and T. Kimura, ed., “Spin Current”, Oxford, 2012.
[2] K. Uchida et al., Nature (London) 455, 778 (2008).
[3] K. Uchida et al., Nat. Mater. 9, 894 (2010).
[4] C. M. Jaworski et al., Nat. Mater. 9, 898 (2010).
[5] J. Flipse et al., Phys. Rev. Lett., 113, 027601 (2014).
[6] S. Daimon et al., Nat. Commun. 7, 13754 (2016).
[7] Y. Ohnuma et al., Phys. Rev. B 96, 134412 (2017).


(公開日: 2017年10月26日)