ISSP - The institute for Solid State Physics

Seminar
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[国際強磁場科学セミナー]
2017年度第3回:30 Tミニコイルパルスマグネットを使った強磁場下分光
日程 : 2017年8月3日(木) 15:00 〜 場所 : 物性研究所本館6階 第2セミナー室 (A612) 講師 : 勝谷 郁也 氏 所属 : ライス大学電気コンピュータ工学科 世話人 : 嶽山 正二郎 (内65316)
e-mail: takeyama@issp.u-tokyo.ac.jp
講演言語 : 日本語

パルス磁場下での分光実験はしばしば光ファイバーを用いて行われるが、ファイバーの分散により超短パルスがチャープされることや、テラヘルツ波を伝搬することができない、また顕微分光が困難である等の欠点がある。我々はピーク磁場30テスラを周期約5分で繰り返し発生できるテーブルトップ型のミニコイルパルスマグネットを開発した。光学窓一つを通して試料に直接アクセスでき、パルス強磁場下での超高速分光、非線形光学分光、顕微分光に最適である。このシステムを使って行った最近の実験から、近赤外分光およびテラヘルツ分光の幾つかの例を紹介する。
半導体量子井戸での時間分解発光実験では、インコヒーレントに励起された電子・正孔系か巨視的コヒーレンスが自発的に発生するDicke superradianceの特殊例であるsuperfluorescenceを観測した[1]。これにより、有限の遅延時間の後にコヒーレント放射のバーストが生じる。アメリカ国立強磁場研究所における以前の我々の測定[2]と比較して、光パルスの光ファイバーによる分散がないことにより時間分解能を改善し、superfluorescenceの遅延時間とパルス幅の最大値を決定することに成功した。
真性シリコン中の光励起キャリアのサイクロトロン共鳴を、30 Tパルスマグネットとシングルショットテラヘルツ時間領域分光器を組み合わせることによって測定した[3]。階段状光学素子の導入によって空間的にプローブ光に遅延を与え、単一のパルス光からテラヘルツ帯での時間分解実験が可能となる。光励起キャリアのサイクロトロン共鳴吸収の磁場依存性から、キャリア有効質量m*はm0を真空中の自由電子質量として0.19m0と求まる。
我々はまた、近赤外領域のバンド端でのセレン化インジウム(InSe)の円偏光依存磁気吸収分光を行った。 0 Tで約1.32 eVに観測される1s励起子ピークの磁場による反磁性シフトとゼーマン分裂を30 Tまで測定し、反磁性シフト定数σ= 4.08×10 -3 meV/T-2および有効g因子geff = 2.12を決定した。

[1] Rev. Sci. Instrum. 84, 123906 (2013)
[2] Nature Physics 8, 219 (2012)
[3] Optics Express 24, 30328 (2016)


(公開日: 2017年07月28日)