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試験管内タンパク質合成法による人工細胞膜の構築

日程 : 2017年7月26日(水) 11:00 am 〜 場所 : 物性研究所本館6階 第5セミナー室 (A615) 講師 : 車 兪澈 氏 所属 : 東京工業大学 地球生命研究所 世話人 : 野口 博司 (内線:63265)講演言語 : 日本語

試験管内タンパク質合成系は、目的のタンパク質を試験管の中で人工的に合成するバイオ技術である。大腸菌などの生物を利用しないため、理論上夾雑物を全く含まないPUREな状態でタンパク質サンプルを入手することができる。この試験管内合成系は細胞膜上で機能する膜タンパク質に対して特に有効であり、脂質膜と組み合わせることで細胞を模した人工細胞膜を再構築することが可能である[1]。そのため、これまで困難であった細胞膜の機能解析や性状解析を大きく進展させる可能性を持つ、学術的・産業的に重要な技術である。さらに生きた細胞を丸ごと再構築する、人工細胞研究の基盤技術としても注目されている[2]。試験管内合成系を用いてこれまでに、タンパク質を脂質膜に組み込む機能を持つSecトランスロコン[3]、膜内外のプロトン濃度勾配依存的にATP(化学エネルギー貯蔵分子)を合成するATP合成酵素[4,5]、光エネルギー依存的にプロトン濃度勾配を形成するバクテリオロドプシンの再構築に成功している。また最近では、脂質分子を膜小胞内部で合成することで誘発される、膜の物性変化や形態変化の解析についても取り組んでいる。本セミナーでは、試験管内合成系を利用した人工細胞膜構築についての取り組みと、その応用について紹介したい。

【参考文献】
[1] Kuruma et al., Biochem Biophys Acta-Biomem. (2009) 1788, 567-574
[2] Stano et al., Journal of Materials Chemistry (2011) 21, 18887-18902
[3] Matsubayashi and Kuruma et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. (2014) 53, 7535-7538
[4] Kuruma et al., Biochem. J. (2012) 442, 631-638
[5] Kuruma et al., Nature Protocols (2015) 10, 1328-1344


(公開日: 2017年07月14日)