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ベレジンスキー・コステリッツ・サウレス転移とハルデン現象 – 2016年ノーベル物理学賞の奇妙な背景

日程 : 2017年5月25日(木) 4:00 pm 〜 場所 : 物性研究所本館6階 大講義室(A632) 講師 : 押川正毅教授 所属 : 物性研究所・量子物質研究グループ 世話人 : 長谷川 幸雄 ・ 杉野 修

2016年のノーベル物理学賞は、「トポロジカル相転移と物質のトポロジカル相の理論的発見」対して、サウレス、コステリッツ、ハルデンの3氏に授与された。ハルデン氏の主要な受賞業績は、量子反強磁性スピン鎖の定性的な性質はスピン量子数が半奇数か整数かによって全く異なり、整数スピンの場合には励起ギャップ(「ハルデンギャップ」)を持つという予言である。ほとんどの教科書や解説では、ハルデン氏のこの理論的発見は、量子スピン鎖の有効的な場の理論である非線形シグマ模型が持つトポロジカル項に基づいたものとされてきた。

しかし、ハルデン氏本人の回顧や、失われていた「幻の論文」の発見によって、ハルデン氏による当初の発見の経緯はそれとは大きく異なり、同時にノーベル物理学賞の授賞対象となったベレジンスキー・コステリッツ・サウレス(BKT)転移の理論と密接に関係していたことが明らかになった。

本講演では、おそらく当時としてはあまりに斬新すぎたために奇妙な運命をたどったハルデンギャップの発見の経緯とともに、その物理的内容をなるべくわかりやすく解説したい。また、ハルデンギャップの発見がその後の物理学の発展に与えた影響についても議論したい。

 


【講師紹介】

押川先生は、量子多体系の理論研究を進めておられ、量子スピン系やそれに絡むトポロジカル現象など様々な分野で優れた業績を挙げておられます。物性研でも、新設された量子物質研究グループの立ち上げにも尽力されています。

2016年のトポロジカル相へのノーベル物理学賞の際にも、久々の物性分野への受賞とのことでいち早く対応していただき、「物性研だより」にも分かり易い解説記事を書いていただきました(第56巻第3号に掲載、物性研サイトからダウンロード可能)。受賞内容に関して理解を深める絶好の機会ですので、是非皆様ご来聴ください。


(公開日: 2017年05月15日)