近藤効果の内部構造と量子ゆらぎの解明に成功
小林研介(大阪大学大学院理学研究科教授)、Meydi Ferrier(元・同理学研究科特任研究員および現・パリ南大学講師)、荒川智紀(同理学研究科助教)および秦徳郎・藤原亮(同理学研究科大学院生)らは、小栗章(大阪市立大学大学院理学研究科教授)および阪野塁(東京大学物性研究所助教)らの研究グループとの共同研究において、微細加工技術を用いて作製された人工原子を用いて、カーボンナノチューブの構造を利用した異なる2種類の近藤状態を作りだし、世界最高水準の電流雑音測定によって、近藤状態の種類と量子ゆらぎの関係を解明しました。
近藤効果とは、1つの電子のスピンの周りに沢山の電子が集まり、一体となって新しい状態(近藤状態)を形成する現象です。代表的な量子多体現象であり、電子のスピンの向きがゆらぐこと(量子ゆらぎ)が本質的な要因となっています。また、人工原子に閉じ込められた電子が、スピンだけでなく、運動方向などの自由度も持っているときには、より多彩な近藤状態が生じることが知られています(図1)。
本研究では、近藤状態の種類に応じて、その量子ゆらぎの大きさが異なることを世界で初めて実証しました。近藤効果と量子ゆらぎは、ともに物理学の中心的な課題ですが、本成果は、量子多体現象のより深い理解と量子ゆらぎの制御につながるものであり、物質の新機能開拓など、今後の物質科学の発展に貢献していくものと期待されます。
本研究成果は、2017年5月8日(米国時間)に「Physical Review Letters」のオンライン版に発表される予定です。
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