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第16回物性研所長賞授与式を開催

3月4日、物性研究所にて第16回(平成30年度)物性研究所所長賞授与式が行われました。物性研で行われた独創的な研究、学術業績により学術の発展に貢献したものを称え顕彰するものにISSP学術奨励賞、技術開発や社会活動等により物性研究所の発展に顕著な功績のあったものを称え顕彰するものにISSP柏賞がそれぞれ授与されます。

ISSP学術奨励賞は嶽山研助教の中村大輔氏と、中辻研特任助教の冨田崇弘氏に、ISSP柏賞は、附属物質設計評価施設の福田毅哉氏、荒木繁行氏、予算・決算係の髙橋智恵子氏、附属物質設計評価施設の渡辺宙志氏、矢田裕行氏に授与されました。

前列左から:森初果所長、中村大輔氏、冨田崇弘氏、矢田裕行氏。後列左から:渡辺宙志氏、荒木繁行氏

過去の受賞一覧はこちらをご覧ください。

第16回ISSP学術奨励賞

中村 大輔 氏(附属国際超強磁場科学研究施設・助教)
「電磁濃縮法に向けた超強磁場下での精密物性測定技術の開発」

中村氏は、ファラデー回転法を用いて、1000Tを超える磁場下で磁場を精密測定する技術を開発しました。国際超強磁場科学研究施設では、1000Tを超える強磁場発生と強磁場下での物性研究を行なっています。強磁場発生には、電磁ノイズ、衝撃波を伴います。さらに磁場の発生範囲が数ミリ径と小さく、全ての測定を数マイクロ秒の間に終わらせる必要があります。同氏は、石英ガラスを透過するレーザー光の偏光が磁場によって回転する性質「ファラデー回転」を用いて測定するシステムを構築、改良し、小型の反射型ファラデー回転プローブを作り上げました。これとともに、高効率の強磁場発生のための初期条件を決定し、2018年に達成した世界最高の1200Tの磁場計測を実現しました。また、物性測定のための技術開発にも成功しました。冷凍機の構造を改良することによって、スピンフラストレーション物質の磁化過程が210Tまで測定可能になり、高周波共振プローブの開発によって強磁場下の電気伝導度測定も可能になりました。

冨田 崇弘 氏(量子物質研究グループ・特任助教)
「強相関電子系で現れる異常金属相の観測と巨大な異常ネルンスト効果を誘起するワイル磁性体の発見」

冨田氏は、共同研究者とともに当時80mKで超伝導を示すことで注目されていた重い電子系物質β-YbAlB4について、低温で新しい臨界相が実現していることを世界で初めて明らかにしました。実に300個以上の試料の中から選出した純度の高い試料について超精密測定を行い、低温での圧力、温度、Feドープの三次元相図を完成させました。これにより偶発的な量子臨界点ではなく圧力チューニングに対して変化しない量子臨界相を発見しました。

また同氏は、共同研究者とともに異常ネルンスト効果を発現するワイル磁性体Mn3Snの発見という業績も上げています。Mn3Snはスピンが互いに逆方向を向こうとするカゴメ構造を持った反強磁性体です。反強磁性体で巨大な熱磁気効果が現れることは例がなく、まさに常識を破る発見です。同物質内では磁気ワイルフェルミオンが存在することを「カイラル異常」と呼ばれる磁気輸送特性現象を通して実験的に実証しました。巨大な異常ホール効果に続き、巨大な異常ネルンスト効果の発見と、その起源の解明は新しいトポロジカル現象を使った新規メモリ材料並びに熱電材料の革新的な材料研究に繋がる成果です。

このような成果は、国内のトポロジーの発展に資するとともに、世界的にも熱電材料開発やトポロジカル物性科学への飛躍的な発展のために貢献しており、ISSP学術奨励賞に十分相応しいと認められました。

ISSP柏賞 「ストックルームシステムの更新」

福田 毅哉 氏(附属物質設計評価施設・技術専門職員)
荒木 繁行 氏(附属物質設計評価施設・学術支援専門職員)
髙橋 智恵子 氏(予算・決算係・事務補佐員)
渡辺 宙志 氏(附属物質設計評価施設・助教)
矢田 裕行 氏(附属物質設計評価施設・技術専門職員)

ストックルームは研究や業務に関わる消耗品などを所で一括購入し、随時各研究室に払い出す仕組みで、2000年の六本木から柏への移転後にシステム化されました。運用当初はハンディターミナルによる管理システムが動いていましたが、老朽化によりシステムが壊れ、しばらく手書き帳簿による物品と支払いの管理を余儀なくされていました。予算・決算係と情報技術室の合同チームは、スマホなどの端末を利用して、物品のデータベース、支払いシステムと連動させたシステムを作り上げました。ユーザー、事務双方にとって使いやすいシステムを開発し、所内全体の業務を改善した事が高く評価されました。

(公開日: 2019年03月11日)