三輪真嗣准教授、市村学術賞の功績賞を受賞
三輪真嗣准教授(研究当時、大阪大学)が、第50回市村学術賞の功績賞を、産業技術総合研究所の野﨑隆行研究員、京都大学の塩田陽一助教と共同受賞しました。この賞は、市村清新技術財団により創設されたもので、優れた国産技術を開発することで、産業分野の発展に貢献・功績のあった技術開発者またはグループに授与されます。
受賞対象となった研究は「超省電力スピン制御技術の開拓と応用展開」です。
AI(人工知能)、IoT(Internet of Things)、ASV(先進安全自動車)などの新技術が急速に身近なものになるにつれて、それらを構成する電子デバイスの消費電力低減は益々重要な課題となっています。その1つのアプローチとして注目されているのが電源を切っても情報を保持できる”不揮発性メモリ”です。研究グループは電子のスピン(磁石の性質)を利用したスピントロニクスによる、不揮発性固体磁気メモリ(MRAM)の開発に取り組んでいます。現状のMRAMでは、情報の書き込み(スピン方向の制御)に電流通電を必要としているため、抵抗損失による不要な電力消費が駆動電力低減の弊害となっています。
これに対し、同グループは、電圧による新しいスピン制御技術の開発に取り組んできました。その結果、鉄(Fe)などのありふれた金属磁石を数原子層オーダーまで超薄膜化し、誘電層を介して電圧を印加することで、磁気異方性を制御可能であることを見出しました(図1)。この技術をMRAMの基本メモリ要素である強磁性トンネル接合素子に導入し、電圧による磁化反転制御や磁気共鳴運動の励起など、スピンデバイスの基盤となる技術を世界に先駆けて実現しました。また、従来の電流制御型と比較して約2桁の低消費電力化が可能であることを実証しました。これらの成果はImPACTプログラム「無充電で長期間使用できる究極のエコIT機器の実現」の発足に繋がり、現在は電圧制御型MRAMの実現を目指した橋渡し研究としてスケーリング実証に向けた新材料探索や物理機構解明、メモリ安定動作の実証等に産学官連携体制で取り組んでいます(図2)。
画像提供:市村清新技術財団
関連主要論文
- “Voltage controlled interfacial magnetism through platinum orbits”, Nat. Commun. 8, 15848 (2017)
- “Strong bias effect on voltage-driven torque at epitaxial Fe-MgO interface”, Phys. Rev. X 7, 031018 (2017)