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松田(康)研の池田暁彦助教、第9回強磁場フォーラム三浦奨励賞を受賞

国際超強磁場科学研究施設松田(康)研究室助教の池田暁彦氏が第9回強磁場フォーラム三浦奨励賞を受賞しました。この賞は、三浦登東大名誉教授からの御醵金を受け、強磁場中における物性測定や強磁場発生に関する技術開発において、新しい着想で優れた成果をあげた若手研究者を奨励する目的で設けられたものです。

池田暁彦助教
池田暁彦助教

受賞対象となった研究は「メガガウス超強磁場における新奇スピン状態秩序相の発見」です。

池田氏は、世界に先駆けて150テスラに至る誘導法磁化測定に成功し、これによりコバルト酸化物(LaCoO3)の磁場温度相図を構築し、100テスラを超える強磁場領域に非自明な秩序相が2つ存在することを明らかにしました[1, 2]。コバルト酸化物には「スピン状態」というユニークな自由度が存在しますが、発見された秩序相では、この「スピン状態」の超格子や超流動状態が実現していると予測されています。

発見されたスピン状態秩序相の起源を解明する有力な手段として1000テスラにいたる極限磁場領域でのスピン状態変化計測が提案されていますが、このような極限磁場中での誘導法磁化測定は技術的に困難と考えられていました。そこで池田氏は、スピン状態が体積と強く相関することに着目し、ファイバーブラッググレーティングを用いた100 MHz超高速歪み測定装置*を開発しました。本装置はシングルショット計測が可能なため1000テスラの極限磁場中磁歪計測に適用可能と期待されています。これまでに150テスラまでの低温磁歪計測を行い、スピン状態変化の観測が可能であることを実証しました[3]。ここまでの研究成果が評価され同賞の受賞に至りました。

開発された高速磁歪計測法と物性研究所の超強磁場発生装置の組み合わせにより、本研究で発見された新奇相の本質が明らかになると期待されています。

受賞式は2017年11月30日、物質・材料研究機構にて行われた第13回強磁場フォーラム総会で行われました。

*本装置は物性研LASOR小林研との共同研究による成果です。
[1] A. Ikeda, T. Nomura, Y. H. Matsuda, A. Matsuo, K. Kindo, K. Sato, Phys. Rev. B 93, 220401(R) (2016).
[2] 池田暁彦、松田康弘、佐藤桂輔、固体物理 52, 335 (2017).
[3] A. Ikeda, T. Nomura, Y. H. Matsuda, S. Tani, Y. Kobayashi, H. Watanabe, K. Sato, Rev. Sci. Instrum. 88, 083906 (2017).


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(公開日: 2017年12月11日)