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第2回ISSP学術奨励賞およびISSP柏賞の受賞者が決定しました。

  東京大学物性研究所では昨年度からISSP学術奨励賞およびISSP柏賞を設けました。ISSP学術奨励賞は物性研究所で行われた独創的な研究、学術 業績により学術の発展に貢献したものを称え顕彰し、ISSP柏賞は技術開発や社会活動等により物性研究所の発展に顕著な功績のあったものを称え顕彰するものです。

  本年度も多くの推薦がありましたが、所内の各部門主任・施設長から構成される選考委員会による審議の結果、次の3名の方が第2回の受賞者と決定しました。なお授賞式は3月23日午後、物性研究所大講義室において行われ、引き続き柏キャンパスカフェテリアにおいてお祝いの会が開催されました。


【受賞者】

第2回ISSP学術奨励賞
関川 太郎 (先端分光研究部門 助手)
「高次高調波の発生機構とそれに基づくアト秒発生および内殻励起ダイナミックスの研究」
 光パルスの幅(発光持続時間)は1フェムト秒(光が0.3マイクロメーター進む時間)を切り、アト秒の領域に入りつつあります。関川氏は400nmの励起レーザーの9次高調波(44nm)によりアト秒パルスの発生に成功し、パルス幅を自己相関法を用いて世界で初めて測定しました。アト秒パルスの発生は固体の内殻励起にともなう超高速緩和現象の解明や化学反応にともなう電子の移動の様子をスナップショットで撮る事を可能とするものであり、関川氏はこの分野に重要な貢献をしました。関川氏はこの分野に重要な貢献をしたことが高く評価され、ISSP学術奨励賞を受賞されました。
第2回ISSP学術奨励賞
中島 智彦 (物質設計評価施設 博士課程2年(理・化))
「新規Aサイト秩序型ペロフスカイトMn酸化物の開発とランダムネス効果の研究」
中島氏の研究を一言で言えば、『新規Aサイト秩序型ペロフスカイト型Mn酸化物の開発』と言えます。氏は、固体化学的手法を駆使して、初めてAサイト金属が層状に秩序化したペロフスカイト型Mn酸化物を合成し、(1)室温以上での電荷・軌道整列、(2)新しい積層パタンを持つ電荷・軌道整列、(3)軌道整列のみを伴った構造相転移(電荷と軌道自由度の分離)、(4)電子相分離現象など、従来の無秩序型には見られない新現象を観測し、特異な構造とそれに伴う電荷・軌道・スピン相互作用への新しい摂動効果という観点から説明しました。また、ランダムネス効果については、Aカチオンのサイズの違いからくる局所構造の乱れや電荷ポテンシャルの乱れにより長距離秩序が強く抑えられることを明らかにしました。これらの成果を基に、Aサイト秩序型ペロフスカイト型Mn酸化物に微妙なランダムネスを導入し、酸化物では初めての1000%を超える室温での巨大磁気抵抗効果を実現しました。このように中島氏は、現在、高温超伝導体と並んで世界で最も多く研究されている強相関電子系物質であるペロフスカイト型Mn酸化物研究に新しい境地を開いた点が高く評価され、ISSP学術奨励賞受賞となりました。
第2回ISSP柏賞
丸山 志津枝 (物性理論研究部門 元技術専門官)
「研究活動支援と職場環境の整備に関する貢献」
丸山さんは40年以上にわたり物性研究所の低温物理研究室および理論部門で技術職員として活躍されました。その間、通常の職務だけでなく、物性研究所 の所員が主催ないしは実行委員長となった多くの国際会議で事務を実質的にとりまとめる重要な役割を果たされ、これらの会議の成功に大きく寄与されまし た。また所内技術職員のまとめ役、相談役としてもさまざまな活躍をされ、物性研の研究活動基盤を永年にわたって支えてこられました。これらの功績によ り、本年度のISSP柏賞を受賞されました。

(公開日: 2005年03月23日)