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第4回ISSP学術奨励賞・ISSP柏賞

東京大学物性研究所では平成15年度から物性研究所所長賞としてISSP学術奨励賞およびISSP柏賞を設けました。ISSP学術奨励賞は物性研究所で行われた独創的な研究、学術 業績により学術の発展に貢献したものを称え顕彰し、ISSP柏賞は技術開発や社会活動等により物性研究所の発展に顕著な功績のあったものを称え顕彰するものです。
平成18年度も多くの推薦がありましたが、所内の各部門主任・施設長から構成される選考委員会による審議の結果、次の2名の方が第4回の受賞者と決定しました。なお授賞式は3月15日午後、物性研究所大講義室において行われ、引き続き柏キャンパスカフェテリアにおいてお祝いの会が開催されました。


第4回ISSP学術奨励賞
江口 豊明 (ナノスケール物性研究部門 助手)
ナノサイエンスの分野では、表面のナノスケールの凹凸を見る手法として原子間力顕微鏡(AFM)は広く利用されています。江口氏は、AFMの力の検出感度を高めることにより、プローブ原子と試料原子との間に働く一本の共有結合力の検出に初めて成功し、その検出を通して原子像が得られることを実証しました。さらに、原子間の電荷移動に伴う微弱な静電気力の検出にも成功し、その存在を実証しました。これらの成果は、原子像観察には不向きとされていたAFMが十分な分解能を有することを示したもので、しかも原子間力の素性を物理的観点から初めて観測・議論したものとして、その後の分野の発展に大いに寄与しました。これらの点が高く評価され、江口氏はISSP学術奨励賞を受賞されました。
第4回ISSP柏賞
礒部 正彦 (物質設計評価施設 技術専門職員)
「物質開発による物性研究への貢献」
礒部氏は物質設計評価施設の技術職員として物質開発に携わってきました。物質開発には相図に対する幅広い知識や合成技術、単結晶育成技術など技術職員としての色々なスキルが求められます。礒部氏は、(1)新奇な電荷秩序転移を示すNaV2O5を1996年に見出し、世界的な爆発的研究の端緒を切り開きました。氏の育成した単結晶は世界中の研究者に提供され、国際共同研究が今も展開されています。その後も、(2)1次元磁性体である鉱物輝石(パイロキセン)の中で、最も量子効果が期待されるスピン1/2の物質ATiSi2O6 (A =Li, Na)の合成、(3)3次元フラストレート系スピネル物質中で、最も量子効果が期待されるスピン1/2の物質MgTi2O4の合成、(4)ホランダイト型バナジウム酸化物A2V8O16 (A = K, Rb)の高圧合成などに成功し、様々な新奇な相転移を見出しています。このように、多くの新規物質の開発を通しての物性研究所の研究活動への大きな貢献はISSP柏賞に相応しいものであります。
(公開日: 2007年03月15日)