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東邦大学梶田教授のグループと家研究室の共同研究が物理学会論文賞を受賞

田嶋尚也,田村雅史,西尾 豊,梶田晃示(以上,東邦大学物理),家泰弘(物性研)の共同研究の成果である下記の論文が第12回日本物理学会論文賞を受賞しました.
J. Phys. Soc. Jpn. 69, (2000) pp.543-551
Transport Property of an Organic Conductor α-(BEDT-TTF)2I3 under High Pressure - Discovery of a Novel Type of Conductor-

この研究は,有機伝導体α-(BEDT-TTF)2I3の電気抵抗とホール効果を温度・圧力の広い範囲にわたって精密に測定したもので,高圧下金属状態がこれまでに前例のない特異な電子状態にあることを実験的に示したものです.
常圧下のα-(BEDT-TTF)2I3は温度低下とともに135 Kで金属-絶縁体転移を起こしますが,圧力によって絶縁体転移が抑えられ,2 GPaまで圧力を高めると極低温まで金属状態が保たれます.この金属状態は電気抵抗が温度に依らずほぼ一定値を示しますが,これが温度降下とともに急激に増加する易動度と急激に減少するキャリア密度の相殺によって起こっている異常な現象であることが判明しました.その起源は発見後しばらく謎でしたが,最近の理論解析によって,上下二つのコーン型の電子バンドが点で接し,下のバンドが完全に充填されたニュートリノ型粒子の分散関係と等価な分散関係もつ特殊なバンド構造に起因することが解明されました.「ディラック電子」とも呼ばれるこのような電子状態は,近年,単原子層グラファイト(グラフェン)で盛んに議論されているところですが,本論文はバルクな電荷移動型錯体の結晶中でこのような特異な電子状態が実現していることを初めて捉えたもので,非常に注目されており,今後の発展が期待されています.

http://wwwsoc.nii.ac.jp/jps/jps/guide/ronbunsyo/ronbun12-2007.html

(公開日: 2007年09月13日)