新物質科学研究部門八木研究室ポスドクの佐野亜沙美さんが第25回の井上研究奨励賞を受賞されました。この賞は井上科学振興財団が、自然科学の基礎的研究においてあたらしい領域を開拓する可能性がある優れた博士論文をまとめた研究者に贈呈するものです。受賞対象となった論文は、「含水鉱物δ-AlOOHの高圧下における安定領域と物性」で、東北大学の大谷栄治教授が研究指導にあたられました。
含水鉱物のほとんどは高圧下ですぐ分解してしまいますが、佐野さんの研究によってδ-AlOOHは100万気圧以上まで安定に存在することが明らかにされ、地球深部に水を運ぶ可能性のある鉱物として最近注目を集めています。またδ-AlOOH中の水素結合の様子が圧力によって大きく変化する可能性も明らかにされ、地球科学だけでなく物性科学の分野でも大きな興味を持たれています。物性研ではさらに高圧Ｘ線実験技術などを使って研究を発展させており、これらの業績が高く評価されて今回の受賞となりました。今後はＸ線だけでなく、J-PARCに建設中の高圧中性子実験装置などを駆使して高圧下の水素結合に関する新たな知見を積み上げ、さらに大きく研究を発展されることが期待されています。