Home >  ニュース > 国際超強磁場科学研究施設のグループが一巻きコイル法を用いた高精度な磁化測定開発に成功

国際超強磁場科学研究施設のグループが一巻きコイル法を用いた高精度な磁化測定開発に成功

  物性研究所国際超強磁場科学研究施設の嶽山等を中心とする研究グループは、極低温下で100 T超に至る超強磁場磁化測定技術の再開発に取り組んできました。彼らは、この破壊型コイル装置の磁場発生の特性を徹底的に調査研究し、その結果、パルス発生時間とともに変化する一巻きコイル内の磁場強度の空間分布から最適位置を見いだし、特殊な磁化検知コイルの開発に成功しました。 また同時に、強い衝撃波と大きな誘導電流が伴うため金属が使えないといった厳しいパルス超強磁場環境の中で長時間使用可能な液体ヘリウム低温容器の開発にも成功しました。 これらの開発により液体ヘリウムという極低温で103 Tまでの磁化の絶対値測定を成功させました。 これまで、一巻きコイル法では、コイル破壊に伴う大きなバックグラウンド信号の為に、磁化の微分しか捕らえる事が出来ませんでした。 これは世界の主な強磁場施設で100 Tの強磁場発生に向けた開発競争が行われている状況で、磁化の「絶対値」を100 T超まで正確に測ることに世界に先駆けて成功したと言えます。この研究成果は、三角格子やカゴメ格子磁性体、パイロクロア磁性体、ペロブスカイト型マンガン酸化物などへの適用が考えられ、超強磁場磁化過程を通して磁気物性の解明が期待されます。

  本研究成果は、日本物理学会が発行する英文誌Journal of the Physical Society of Japan (JPSJ)の 2011年12月号に掲載されました。また、この「縦一巻きコイル超強磁場発生装置を用いた100 Tまでの高精度磁化測定法の開発」に関する論文はJSPSのジャーナル編集委員会において、注目論文 ”Papers of Editors’ Choice”(今年の12月号http://jpsj.ipap.jp/ec/index.html )に選ばれました。 また、この論文に関して、JSPSの「News and Comments」で高い評価を頂いております(“H. Nojiri: JPSJ Online?News and Comments [December 9, 2011]” http://jpsj.ipap.jp/index.html)。

掲載論文:
S. Takeyama, R. Sakakura, Y. H. Matsuda, A. Miyata, M. Tokunaga,
“Precise Magnetization Measurements by Parallel Self-Compensated Induction Coils in a Vertical Single-Turn Coil up to 103 T”, J. Phys. Soc. Jpn. 81 (2012) 014702.

(公開日: 2011年12月16日)