Home >  ニュース > 長尾道弘助手、日本中性子科学会奨励賞を受賞

長尾道弘助手、日本中性子科学会奨励賞を受賞

長尾道弘氏
長尾道弘氏

物性研究所附属中性子科学研究施設の長尾道弘助手が第3回日本中性子科学会奨励賞を受賞されました。日本中性子科学会奨励賞は、中性子科学に関して優秀な研究を発表し、その年齢が当該年の4月1日において35歳に達しない者に対して日本中性子科学会が授与する賞です。

長尾助手はこれまで、小角中性子散乱及び中性子スピンエコー法により、種々のソフトマター系における構造とダイナミクスの観測を行ってきました。特に、これらの手法に圧力を組み合わせる事によって新規な研究領域を開拓して来ました。今回の受賞は「中性子散乱を用いたマイクロエマルションの圧力誘起構造相転移」の研究に対して与えられたものです。マイクロエマルションとは水、油、界面活性剤からなる複合系で、ナノメートルのスケールで様々な自発構造を形成します。この系は非常に身近で日常的な系ですが、自発構造の形成要因は明らかにされておりませんでした。長尾助手は圧力と言うパラメーターに注目し、高性能の圧力装置を開発し、中性子スピンエコー法を用いて、加圧による界面活性剤膜ダイナミクスの変化の様子を世界に先駆けて明らかにしました。この結果は、小角中性子散乱によって観測される圧力誘起構造相転移の起源を良く説明するものである事もわかりました。これらの研究で得られた知見は、温度誘起相転移と圧力誘起相転移の相違を明らかにするものであり、圧力誘起相転移の機構は、従来の温度誘起相転移の機構とは異なるものである事がわかりました。ソフトマター系の構造研究にとって中性子が有効でありかつダイナミクスの観測によって構造形成メカニズムに言及した手法が高く評価され今回の受賞に至りました。

(公開日: 2006年01月06日)