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辛研究室と渡部研究室で、世界最高分解能の光電子分光器を開発し、超伝導電子の直接観測に成功

本研究は、東京大学物性研究所が学術創成研究費「新しい研究ネットワークによる電子相関系の研究」の支援を受け、中国の「中国科学アカデミー」との2国間の共同研究によって行われた。日本の持つ光電子分光技術と、日中共同開発のレーザー技術を組み合わせ、全く新しい光電子分光法を開発した。この装置により桁違いの分解能(360マイクロ電子ボルト)を得ることができた。これにより、様々な超伝導機構解明が初めて可能になった。

 分解能が1ミリ電子ボルトを切ることによって、初めて、超伝導ピークとギャップを観 測することができました。赤は転移温度より上の金属相を表していますが、青いスペ クトルは超伝導になったスペクトルで、超伝導ピークや超伝導ギャップがはっきり観 測されました。
<セリウムルテニウムの高分解能光電子分光>
分解能が1ミリ電子ボルトを切ることによって、初めて、超伝導ピークとギャップを観 測することができました。赤は転移温度より上の金属相を表していますが、青いスペ クトルは超伝導になったスペクトルで、超伝導ピークや超伝導ギャップがはっきり観 測されました。
新レーザー光源の日中共同開発
光電効果を起こさせるためには真空紫外領域の擬似連続(準CW)レーザー光が必要であるが、これまで存在しなかった。そのために必要な非線形光学結晶(KBBF)を中国のチェン(Chen)グループが作成した。又、この結晶を基に渡部グループがレーザーを作成した。この新しいレーザー光源は、準CWレーザーとしては世界最高エネルギー(6.994電子ボルト)を達成した新しいタイプのレーザーである。
世界最高分解能
「分解能」とは、いわば、物質の機能性を解明する「写真の解像度」の様なものである。本研究ではこの「写真の解像度」に相当するエネルギー分解能を上げることにより、これまで知られていなかった物質の機能性を明らかにすることである。超伝導電子の状態(超伝導ギャップ)は通常1ミリ電子ボルト以下の小ささであるが、これを観測するためには非常に高い分解能が必要とされ、これまでの光電子分光では観測不可能であった。この分解能の向上を目指して、世界中の科学者がしのぎを削ってきた。本研究では世界最高の360マイクロ電子ボルトと1ミリ電子ボルト以下の分解能に初めて達することができた。
超伝導機構解明
本研究では超伝導電子の状態が全くわかっていなかった超伝導体セリウムルテニウムにおいて、その超伝導電子の直接観測に世界で初めて成功した。その結果、これまでの理論(BCS理論)では単純に説明することのできない超伝導機構を持っていることが明らかになった。この様な現状の理論との相違点をあらゆる超伝導体で、研究を進めることにより、より普遍的な超伝導機構の解明を行うことが可能になった。

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(公開日: 2005年03月14日)