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三宅厚志 助教(徳永研)が強磁場フォーラムフロンティア奨励賞を受賞

徳永研究室の三宅厚志 助教が強磁場フォーラムの第3回強磁場フォーラムフロンティア奨励賞を受賞しました。この賞は、日本の研究機関で強磁場に関連した研究において、新しい着想で優れた成果をあげ、強磁場分野の発展に貢献した若手研究者に与えられるものです。12月1日に行われた第16回強磁場フォーラム総会にて賞が授与されました。

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受賞対象となった研究は「磁場に依存しない温度計の開発によるウラン系超伝導体におけるメタ磁性転移と超伝導の研究」です。

三宅氏はパルス磁場下における高速電気容量測定の手法を確立し、その手法を生かして磁場の影響がほとんどないキャパシタンス温度計を開発しました(1)。さらに、この温度計を試料に貼り付けた状態で磁化と試料温度の同時測定を行うことで、試料の磁化を温度と磁場の関数として正確に測定することを可能にしました。

UTe2はスピン三重項の超伝導が実現していると期待されている新しいウラン系超伝導体です。三宅氏は、開発した手法を活用し、UTe2の強磁場物性を研究してきました。そして、ゼロ磁場では常磁性の超伝導体であるUTe2に直方晶のb軸方向に強磁場を印加すると、一次のメタ磁性転移が起こること、メタ磁性転移に向かい有効質量が増大することを見出しました。UTe2ではb軸方向の磁場印加で超伝導転移温度が高くなるリエントラントな振る舞いが観測されており、その起源の解明のために重要な知見です。この成果を発表した論文(2)はJournal of the Physical Society of Japan誌の”Top 10 Cited Article 2020”にも選ばれています。

UTe2では、磁場方向によってメタ磁性転移が超伝導転移を抑制、誘起する特異な超伝導相図を持ちます。同氏は研究をさらに発展させ、磁化と試料温度を同時に測定することでUTe2の熱力学的性質を幅広い温度磁場範囲で調べました。その結果の解析を通じて、メタ磁性転移における電子の有効質量の変化の仕方が磁場印加方向によって変わることを明らかにしました(3)。この成果は、この物質や強磁性超伝導体で報告されている磁場誘起超伝導現象の起源を探る重要な手がかりとして期待されています。

さらなるパルス磁場下の実験手法の発展として、磁化と電気分極、磁化と誘電率の同時測定にも取り組み、効率的、定量的な研究が行えるようになってきました。これらの同時測定技術は共同利用にも提供されており、成果が得られつつあります。

関連論文

  1. A. Miyake et al. “Capacitive detection of magnetostriction, dielectric constant, and magneto-caloric effects in pulsed magnetic fields”, Rev. Sci. Instrum. 91, 105103/1-9 (2020).
  2. A. Miyake et al. “Metamagnetic transition in heavy fermion superconductor UTe2”, J. Phys. Soc. Jpn. 88, 063706/1-5 (2019).
  3. A. Miyake et al., “Enhancement and discontinuity of effective mass through the first-order metamagnetic transition in UTe2”, J. Phys. Soc. Jpn. 90, 103702/1-5 (2021).

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(公開日: 2021年12月10日)