Home >  ニュース > 小野塚洸太(森研D2)氏、分子科学討論会の分子科学会優秀ポスター賞を受賞

小野塚洸太(森研D2)氏、分子科学討論会の分子科学会優秀ポスター賞を受賞

森研究室D2の小野塚洸太氏が、第15回分子科学討論会の分子科学会優秀ポスター賞を受賞しました。この賞は、第15回分子科学討論会におけるポスター講演において優秀な発表を行った分子科学会会員の学生に対して授与されるものです。

fig受賞対象となった発表は「エチレンジチオチオフェンオリゴマーの鎖長伸長と電荷移動錯体形成」です。

有機伝導体は、軽量、柔軟、溶液プロセスの加工性の高さから、近年注目されている電子材料です。しかし、広く普及している有機伝導体は高分子であるため、固体中での構造情報が乏しく、伝導機構の解明及び、機構に基づいた精密な材料設計が困難でした。最近、こうした問題を解決するために、鎖長や複数の単位構造からなる配列を精密に設計・合成できるオリゴマー型伝導体が着目を集め始めています。森研究室ではこれまでに、導電性高分子の代表例であるドープ型PEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))のオリゴマーモデル単結晶を開発し、構造と伝導性との関係性を明らかにしてきました。[R. Kameyama, T. Fujino*, S. Dekura, M. Kawamura, T. Ozaki, H. Mori* Chem. Eur. J., 27, 6696-6700, (2021).]そのなかで、鎖長を伸長するにつれ、分子内での電子反発を軽減されることで導電性を向上できることがわかってきました。しかし、溶解性の乏しさや酸化への不安定性などの合成的制約が生じることから、長鎖合成には至っていませんでした。

小野塚氏は、オリゴマーの特徴である構造自由度の高さに着目し、複数の単位構造を組み合わせた配列からなる新規長鎖オリゴマーを開発しました。溶解性や高次元性を付与するユニットを組み合わせた配列を新規設計し、これが従前のEDOTオリゴマー塩を6桁も凌駕する高い伝導性を示すことを見出しました。単結晶構造解析と理論計算、伝導性評価を通じて高伝導性発現の機構までも明らかにしています。これらの研究成果は、単結晶性オリゴマー材料が、構造明確性、高精度・高確度な伝導性を示すだけでなく、オリゴマー特有の豊富な分子設計自由度に基づいた多彩な電子物性を発現できることを意味しています。今後さらなる伝導体ライブラリの作製・評価を行うことで、高伝導性・高機能性電子材料開発のための設計指針の確立につながるものと期待されます。

関連ページ

(公開日: 2021年11月16日)