B-7-4 厳密な答え

 

(1)可積分系とベーテ仮説

 1931年ベーテは1次元ハイゼンベルグ模型について厳密に扱うことができることを示した。
この方法は量子力学的波動関数を平面波の一次結合で表すもので、今日ではハバード模型
t-J模型、デルタ関数ポテンシャルで相互作用する粒子系等多数の量子1次元模型で有効な
方法であることがわかっている。一般に基底状態の性質を計算するには線形の積分方程式
を計算するが、有限温度の計算をするには非線型の方程式を計算しなければならない。
 
 

(2) 厳密に分かること

鎖状に大きさ1/2のスピンが並んだ一次元ハイゼンベルグ模型は、厳密に比熱・帯磁率を
計算できる。 別に、1・2次元ではT>0でスピンの向きに長距離に渡る秩序がないことも
厳密に証明できる。従って有限温度において相転移を起こすことは無い。3次元性があって
初めて相転移を起こす。
 

(3) 厳密解の応用

分子磁性体p-NPNNの帯磁率と磁化曲線を厳密解で求めたものと比較した。
このことからp-NPNNのγ相は一次元強磁性体であることが明らかになった。
なお、試料の作製は旧木下研で、測定は石川研で行った。 
 

(4)励起スペクトルの計算

ベーテ仮説の方法は基底状態エネルギーや熱力学関数ばかりでなく、励起スペクトルも
計算できる。図は1次元XXZ模型のスピノン励起とスピン波励起を示したものである。

  (5)強磁性体の磁化曲線

熱力学ベーテ仮説方程式から計算された1次元強磁性体の磁化曲線
一次元強磁性体において縦軸に磁化、横軸に h/T^2をとる。温度が
下がるにつれて一般的なスケーリング 関数に近づく。