(1)量子ナノ構造分光利用計画の概要 尾嶋 正治(東大工)

 1 nmrad以下の超高輝度放射光を用いた量子ナノ構造の光電子分光法についての利用計画を説明した。具体的には、分解能5万の円偏光アンジュレータ光を自動フォーカス機構付き後置ミラー系で1ミクロン以下に絞り、放出される光電子をエネルギー分析機能付きPEEMによって解析する方式を提案した。我々はSchwarzschild対物レンズ系の実績があるが、位置分解能、時間分解能の点で優れているPEEM方式を採用し、10nm程度の分解能でイメージングを行いたいと考えている。

 研究対象としては、自己組織化、およびナノリソグラフィ加工で形成した10〜20nm程度の半導体/磁性体ナノ構造を対象とし、その電子状態(量子閉じ込め効果)のイメージングを行う。磁性体ではMCD顕微鏡によってダイナミックな磁気物性を解明し、各種の場(歪み、パルス磁場、レーザ光場、電場など)による変化を解明する。さらに、これらのナノ構造が表面反応にどのような影響を与えるかについても時間分解イメージングで解析する。また、原子からクラスター(ピコ構造)、ナノ構造、メソスコピック構造に移る過程における磁気構造変化を解明する。

 なお、現在我々が高エ研PFで進めているS1課題ビームラインの分解能(約3meV@48eV)について報告し、高エネルギー分解能と空間分解能の組み合わせでどんな可能性が広がるかについて議論した。


Monday,10,May,1999

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