STRONG MAGNETIC FIELD FORUM

強磁場フォーラムについて(設立趣意)

   近年の世界の強磁場科学の進展は目覚ましく、かつては夢のような値であった強磁場が実際の実験に供されるようになり、 その下で多くの重要な研究が進展している。我が国における強磁場科学の歴史は古く、強磁場を用いた物性研究は東北大学金属材料研究所、 物質材料研究機構、物性研究所、大阪大学の4大強磁場施設を中心として、多くの研究者の協力の下に進展し、その成果は強磁場科学の黎明期 から今日まで多年にわたり世界をリードしてきたといってよい。これらの大型施設はそれぞれに魅力ある特色を持ち、各々が相補的にバランスを取りながら発展してきた。東北大学と物質材料研究機構の定常強磁場施設はともに世界第一級の水冷型とハイブリッドマグネットを備え多くの共同利用に供されている。パルス強磁場では物性研究所の電磁濃縮法と一巻きコイル法、大阪大学の非破壊型多層マグネットはともに世界 最高水準にあり、物性研究所では室内世界最高磁場となる622テスラを、大阪大学では実用型非破壊パルスマグネットの世界記録80.8テスラを発生している。さらに我が国では、伝統的に強磁場を必要とする物性科学の多くの分において研究者層がきわめて厚く、強相関電子系、 超伝導、半導体、量子スピン系、低次元伝導体、有機物質、材料科学、化学および生物学などの各分野において多くの優れた研究が進展している。 強磁場は物質の電子状態に大きな影響を及ぼし、極端な量子化状態を実現することから、物性物理学のみならず、広く化学、生物学、天文学、 工学など科学技術のあらゆる分野で新しいサイエンスの端緒を切り開き、また未解決な諸問題の解明に強力な研究手段となることは今日に至る 歴史の物語るところである。昨今の強磁場 技術の進展によってさらに高品位の強磁場への道が切り開かれるにつれ、強磁場科学は今後さらに その重要性を増すと考えられる。

欧米諸国では、近年、強磁場科学への関心が急速に高まり、各種の大型強磁場施設を建設する国家的なプロジェクトが 相次いで立案され、実行に移されている。これらの新しい強磁場施設からは次々と新しい現象が見出され、これらは最近では毎年必ず世界のいずれかの地で開催されている強磁場関連の国際会議で発表され、多大の関心を集めている。

このような情勢に鑑み、今後我が国における強磁場科学の一層の発展を図るためには、ユーザーを含めたすべての強磁場 関係研究者の密接な協力が不可欠となっていることは明らかである。平成11年9月に物性研究所で行われた強磁場研究会においても、国内の研究 体制をより強固なものとするために何らかの研究者の組織化が必要であることが指摘された。これを機に強磁場科学研究者有志は「強磁場 フォーラム準備会」を発足させ、新しい協力体制構築のための議論を重ねてきたが、この度、学術情報の交換、共通の学術的・技術的問題の解決、 若手研究者の育成、人事交流、国内外の関係諸団体との研究連絡、関連研究者の要望発信、強磁場科学の将来構想の構築、一般市民、学生への 啓蒙活動などを目的とした研究連絡組織をつくるべきであるとの結論に達した。その議論を踏まえ、ここに上記の諸活動を目的とした「強磁場 フォーラム(The High Magnetic Field Forum of Japan)」を設立する。