日本から発見された新鉱物たち(その他)

 

取り消されたもの,格下げになったもの,未申請だけど国産新鉱物を主張されているもの,オフィシャルリストで産地が日本だけどほんまか?というもの,日本が領有権を主張している産地からのものなどで,年代順です。
日本が領有権を主張している産地の記述はオフィシャルリストに準拠しており,個人の主張ではありません。

一覧表の鉱物をクリックすればそこへ,写真をクリックすれば保存先のFlickrからフルサイズが見られる。
写真の利用はhamane*へお問い合わせください(*@issp.u-tokyo.ac.jp)。
質問などもそこへ。

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その他一覧(No.1-20)

1. 磁硫鉄鉱 2. 小藤石 3. 雲水峰石 4. 苦土リーベック閃石 5. 中瀬鉱
6. ブセル石 7. 水酸エレスタド石 8. 南石 9. 釣魚島石 10. フッ素ソーダローメ石
11. レニウム鉱 12. ストロンチウムトムソン沸石 13. クドリャブ鉱 14. アブラモフ鉱 15. カドモインド鉱
16. ジナメンスキー鉱 17. XXX 18. XXX 19. XXX 20. XXX
謝辞

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No.1-20 | No.21-40 | No.41-60 | No.61-80 | No.81-100 | No.101-120 | No.121-140 | その他

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No. 1
IMA No./year: 1835

磁硫鉄鉱 Pyrrhotite

Fe7S8

模式地:オフィシャルリストで「Japan」となっているが詳細不明。

原著:Breithaupt J.F.A. (1835) Ueber das verhältniss der formen zu den mischungen krystallisirter körper. Journal für Praktische Chemie, 4, 249-271

Pyrrhotite
愛媛県久万町高殿

少なくともこの原著からはJapanにたどり着かない。模式地Japanとなった経緯も不明だがなんとなく推察してみる。オフィシャルリスト中ではde Villiers and Liles (2010, American Mineralogist, 95, 148)も引用されてる。そしてこの論文で引用されている古い文献で気になるのはMorimoto et al.(1975, Economic Geology, 70, 824)で,Morimotoらは国産の磁硫鉄鉱を使って構造解析を行っている。もしかして,こういう経緯からJapanになったのか?うーん・・。いずれにしてもかなり普遍的な鉱物。

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No.2
IMA No./year: 1939

小藤石 Kotoite

Mg3(BO3)2

模式地:北朝鮮 遂安 笏洞(Hol Kol)鉱山

原著:Watanabe T. (1939) Kotoit, ein neues gesteinsbildendes magnesiumborat, Mineralogische und Petrographische Mittheilungen, 50, 411-463.

Kotoite1
模式地標本

kotoite2
上の標本の薄片写真(クロスニコル) 中央が本鉱

Kotoite3
岩手県宮古市 灰色の部分です。

記載当時は日本領であったが,現在では北朝鮮産の新鉱物として登録されている。

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No. 3
IMA No./year: 1950

雲水峰石 Uduminelite

Ca3Al8(PO4)2O12·2H2O

模式地:福島縣石川郡小鹽江村埋平の東方, 雲水峰の東南山嘴(原文まま)

原著:柴田秀賢(1950) 新鉱物雲水峰石,地質学雑誌,56, 243.

「未入手」

鉱物の信頼度の指標であるIMA Statusは「questionable」。要は存在があやしいぞという鉱物であるが,正式に抹消とはなっていないので鉱物種にはカウントされている。でも日本産鉱物型録からはすでに外されている。原著ではたった10行程度の記述しかなく,ほぼ産状を記すのみ。最後に斜方晶系と上記の化学組成がちょっとだけ書いてある。南部松夫編「福島県鉱物誌」には記述があって(p161),さらに試料を豊富にした研究の継続が必要とされている,と結んである。

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No. 4
IMA No./year: 1957

苦土リーベック閃石 Magnesio-riebeckite

☐Na2(Mg3Fe3+2)Si8O22(OH)2

模式地:徳島県 徳島市 眉山?

原著:Miyashiro A., Iwasaki M. (1957) Magnesioriebeckite in crystalline schists of Bizan in Sikoku, Japan. Journal of the Geological Society of Japan, 63, 698-703.

「未入手」

これは日本産と認識しても良いのか?よくわからない。というのも,オフィシャルリストはWhittaker E.J.W.(1949, Acta crystallographica, 2, 312)も引用しており,こっちのほうが出典が古い。さらにWhittakerらはボリビア産の試料を使って組成分析と構造解析を行っている。一方のMiyahiroらは化学組成分析は行っているが構造解析は無い。なんだか日本に優先権は無いような気がしますが??

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No. 5
IMA No./year: 1960

中瀬鉱 Nakaseite

Pb4Ag3CuSb12S24

模式地:兵庫県 中瀬鉱山

Nakaseite
模式地標本

そもそも新鉱物申請すらされておらず,もちろんオフィシャルリストには掲載されていない。申請してないけどNakaseiteとして書いちゃった記載論文があり(Ito and Muraoka, 1960, Zeitschrift für Kristallographie, 113, 94-98),これを元にして日本では国産新鉱物の扱いを受けている。が,IMAとしては未承認。ということはやっぱり国際的には新鉱物ではない。

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No. 6
IMA No./year: 1970-024

ブセル石? Buserite

Na4Mn14O27·21H2O

模式地:オフィシャルリストで「Japan」ではあるが・・・

原著:Giovanoli R., Feitknecht W., Fischer F. (1971) Über oxidhydroxide des vierwertigen mangans mit schichtengitter. 3. Mitteilung: reduktion von mangan (III) – manganat (IV) mit zimtalkohol, Helvetica Chimica Acta, 54, 1112-1124

「未入手」

和名や産地が判然としない。というよりもこの原著は合成実験の内容。すくなくともこの原著からはJapanにはたどり着かないし,オフィシャルリストのもう一つの引用Burns et al.(1983, American Mineralogist, 68, 972)にもやっぱり産地は書いてない。まあ,想像するに,合成物なんだけど天然にも存在するでしょうってことで昔は承認されたのだと思われる。で,ここからの流れを調べて見た。この合成物に相当する天然物が初めて見つかったのは太平洋海底の鉄マンガンクラストから(Ostwald and Dubrawski, 1987, Neues Jahrbuch für Mineralogie Abhandlungen, 157, 19)。続いて小笠原諸島の海底からも見つかった(Usui et al., 1989, Marine Geology, 86, 41)。それから北海道の湯の瀧温泉から見つかって(Usui and Mita, 1995, Clays and Clay Minerals, 43, 116),これが初めての地上からの試料となった。という流れでこの鉱物がJapan産とされたのではないかと推測しているが,どうだろう? やっぱりこの経緯で国産「新」鉱物を名乗るのは微妙だとは思うが,国産鉱物ではあると思う。IMA Statusは「Approved」,つまりは承認済みの有効な鉱物種。ところが日本産鉱物型録に入ってないんだよな,この鉱物・・

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No. 7
IMA No./year: 1970-026

水酸エレスタド石 Hydroxylellestadite

Ca5(SiO4)1.5(SO4)1.5(OH)

模式地:埼玉県 秩父市 秩父鉱山→アメリカ

原著:Harada K., Nagashima K., Nakao K., Kato A. (1971) Hydroxylellestadite, a new apatite from Chichibu Mine, Saitama Prefecture, Japan. American Mineralogist, 56, 1507-1518

Hydroxylellestadite
秩父鉱山産 白色部 一般的な本鉱の標本。写真ではわかりづらいがうっすらと紫色を帯びている。

いったんは日本産新鉱物として承認されていたが,実はアメリカ産のものが先に報告されていた(McConnell, 1937, American Mineralogist, 22, 977)。McConnellの分析値を見る限りOHタイプ,つまりは本鉱と考えられる。HaradaらももちろんMcConnellは引用していたのだが,なぜかフッ素タイプとして想定・引用していて,それもあってか本鉱はいったんは国産新鉱物として承認された。でもその点を指摘されて結局はアメリカ産ということになった(Pasero et al., 2010, European Journal of Mineralogy, 22, 163)。

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No. 8
IMA No./year: 1982

南石 Minamiite

(Na,Ca,K)Al3(SO4)2(OH)6

模式地:群馬県 奥万座 殺生沢

原著:Ossaka J., Hirabahashi J.-I., Okada K., Kobayashi R., Hayashi T. (1982): Crystal structure of minamiite, a new mineral of the alunite group. American Mineralogist, 67, 114-119

Minamiite
模式地標本

命名規約改定によりNatroalunite-2cと再命名。しかしながらこれはNatroaluniteという鉱物の2c構造型,つまりはポリタイプの扱いで独立種としては取り消し(Bayliss et al., 2010, Mineralogical Magazine, 74, 919)。

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No.9
IMA No./year: 1985-005

釣魚島石 diaoyudaoite

NaAl11O17

模式地:Okinawa Trough, near Diaoyudao Island, a few km northeast of Taiwan

原著:Shen S., Chen L., Li A., Dong T., Huang Q., Xu W. (1986) Diaoyudaoite – a new mineral, Acta Mineralogica Sinica, 6, 224-227

「未入手」

台湾産として登録されているが,日本では魚釣島産となる。また天然の鉱物ではなく産業廃棄物ではないか?という疑いがある(清水他,1996,日本岩石鉱物鉱床学会・日本鉱物学会・資源地質学会秋季連合学術講演会講演要旨集,154)。

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No. 10
IMA No./year: 1996

フッ素ソーダローメ石 Fluornatroroméite

(Na,Ca)2Sb2(O,OH)6F

模式地:福島県 いわき市 御斎所鉱山

ローメ石_御在所2
ローメ石_御在所

Matsubara et al. (1996, Mineralogical Journal, 18, 155-160)で記載されたローメ石は新しいパイロクロア命名規約に従うと新鉱物に相当するというもの。松原さん自身がそれを話して回ってはいるが,オフィシャルリストにフッ素ソーダローメ石は登録されていない。IMAに対して改めて新鉱物申請書を提出する必要があるのかも知れない。
写真の標本は御斎所のいわゆるローメ石とされる標本になる。見た目で黒っぽい結晶(写真上)と透明感のあるブラウン色の結晶(写真下)がある。分析して調べてみたところ、どちらもフッ素ソーダローメ石に該当する化学組成だった。

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No. 11
IMA No./year: 1999-004a

レニウム鉱 Rheniite

ReS2

模式地:Kudriavy volcano (Kudryavyi), Iturup Island, Kuril Islands, Sakhalinskaya Oblast’, Far-Eastern Region, Russia

原著:Znamensky V.S., Korzhinsky M.A., Steinberg G.S., Tkachenko S.I., Yakushev A.I., Laputina I.P., Bryzgalov I.A., Samotoin N.D., Magazina L.O., Kuzmina O.V., Organova N.I., Rassulov V.A., Chaplygin I.V. (2005) Rheniite, ReS2, the natural rhenium disulfide from fumaroles of Kudryavy volcano, lturup Isl., Kurily Islands, Zapiski Rossiiskogo Mineralogicheskogo Obshchetstva 134, 32-40.
ただし最初の発見は1994年:Korzhinsky M.A., Tkachenko S.I., Shmulovich K.I., Taran Y.A., Steinberg G.S. (1994) Discovery of a pure rhenium mineral at Kudriavy volcano. Nature, 369, 51-52.

Rheniite1
Rheniite2
模式地標本 IMAにはロシア産として登録されている。日本で言うところの択捉島の茂世路岳。

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No.12
IMA No./year: 2000-025

ストロンチウムトムソン沸石 Thomsonite-Sr

NaSr2Al5Si5O20·6-7H2O

原著:Pekov I.V., Lovskaya E.V., Turchkova A.G., Chukanov N.V., Zadov A.E., Rastsvetaeva R.K., Kononkova N.N. (2001) Thomsonite-Sr (Sr,Ca)2Na[Al2Si5O20]·6–7H2O, a new zeolite mineral from Khibiny Massif (Kola Peninsula) and thomsonite-Ca—thomsonite-Sr an isomorphous series. Zapiski Vserossijskogo Mineralogicheskogo Obshchestva, 130, 46-55.

模式地:オフィシャルリストでは「Japan」だが原著にその記載は無い。

Thomsonite-Sr
Rasvumchorr Mt, Khibiny Massif, Kola Peninsula, Murmanskaja Oblast’, Northern Region, Russia

原著では産地がRasvumchorr Mt, Khibiny Massif (Kola Peninsula), Russiaとなっており,写真の標本はその産地のモノ。オフィシャルリストでは模式地が「Japan」になっており,これはもしかしたら宮島ら(1999, 日本鉱物学会1999年年会講演, p93)の報告がもとになっているのかもしれない。日本では糸魚川・青海地域産ヒスイから見いだされている。

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No. 13
IMA No./year: 2003-011

クドリャブ鉱 Kudriavite

(Cd,Pb)Bi2S4

模式地:Kudriavy volcano (Kudryavyi), Iturup Island, Kuril Islands, Sakhalinskaya Oblast’, Far-Eastern Region, Russia

原著:Chaplygin I.V., Mozgova N.N., Magazina L.O., Kuznetsova O.Y., Safonov Y.G., Bryzgalov I.A., Makovicky E., Balić-Žunić T. (2005) Kudriavite, (Cd,Pb)Bi2S4, a new mineral species from Kudriavy volcano, Iturup Island, Kurile arc, Russia, The Canadian Mineralogist, 43, 695-701.

Kudriavite_1
模式地標本 IMAではロシア産として登録されている。日本で言うところの択捉島の茂世路岳。分離結晶の標本。

Kudriavite_2
Kamchatka半島Mutnovsky火山 

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No. 14
IMA No./year: 2003-042

アブラモフ鉱 Abramovite

Pb2SnInBiS7

模式地:Kudriavy volcano (Kudryavyi), Iturup Island, Kuril Islands, Sakhalinskaya Oblast’, Far-Eastern Region, Russia

原著:Yudovakaya M.A., Trybkin N.V., Koporulina E.V., Belakovsky D.I., Mokhov A.V., Kuznetsova M.V., Golovanova T.I. (2007) Abramovite, Pb2SnInBiS7 – the new mineral from fumaroles of Kudryavy Volcano (Kurily Islands), Zapiski Rossiiskogo Mineralogicheskogo Obshchetstva, 136, 45-51.

Abramovite
模式地標本 IMAではロシア産として登録されている。日本で言うところの択捉島の茂世路岳。分離結晶の標本。

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No. 15
IMA No./year: 2006-016

カドモインド鉱 Cadmoindite

CdIn2S4

模式地:Kudriavy volcano (Kudryavyi), Iturup Island, Kuril Islands, Sakhalinskaya Oblast’, Far-Eastern Region, Russia

原著:Chaplygin I.V., Mozgova N.N., Bryzgalov I.A., Mokhov A.V. (2004) Cadmoindite, CdIn2S4, a new mineral from Kudriavy volcano, Iturup isle, Kurily islands, Zapiski Vserossijskogo Mineralogicheskogo Obshchestva, 133, 21-27.

Cadmoindite
模式地標本 ブラウン色八面体が本鉱,黄色六角板状はウルツ鉱,黒は本鉱と黄鉄鉱の混じりもの。IMAではロシア産として登録されている。日本で言うところの択捉島の茂世路岳。

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No.16
IMA No./year: 2014-026

ジナメンスキー鉱 Znamenskyite

Pb4In2Bi4S13

模式地:Kudriavy volcano (Kudryavyi), Iturup Island, Kuril Islands, Sakhalinskaya Oblast’, Far-Eastern Region, Russia

the early publication::Chaplygin, I.V., Mozgova, N.N., Bryzgalov, I.A. Belakovsky, D.I., Pervukhina, N.V., Borisov, S.V. and Magarill, S.A. (2014) Znamenskyite, IMA 2014-026, Mineralogical Magazine, 78, 797-804.

znamenskyite2
模式地標本 レニウム鉱を筆頭で記載したZnamensky V.S.に因む。IMAではロシア産として登録されている。日本で言うところの択捉島の茂世路岳。

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No.17

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No.18

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No.19

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No.20

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謝辞

以下の方々から貴重な標本を恵与して頂きました。

この場を借りて御礼申し上げます。ご協力ありがとうございました。

(敬称略) 足立富男,石橋隆,今井裕之,稲葉幸郎,大西政之,Anatoly Kasatkin,小林寿宣,Roy Kristiansen, 久野武,豊遙秋,松林康仁,三浦裕之,三輪俊一,皆川鉄雄,永嶌真理子,西久保勝己,西田勝一,田邊満雄,田中崇裕,福本辰己,山田滋夫,鈴木保光

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 Posted by at 12:46 PM

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