ストロンチウム緑簾石

 

No. IMA2006-055

ストロンチウム緑簾石 / Epidote-(Sr)

CaSrAl2Fe3+Si3O12(OH)

Monoclinic 

Epidote group

高知県香美市穴内鉱山鳳ノ森坑・長川原坑

Minakawa T., Fukushima H., Nishio-Hamane D., Miura H. (2008), JMPS, 103, 400.

私が初めて発見に関わった新鉱物である。肉眼鑑定に慣れた人なら,この鉱物を見て「紅簾石」と即答するだろう。けど慣れってこわいよ。我々もそのつもりで調べ始めたが,なんと結果は新鉱物/ストロンチウム簾石(リョクレンセキ)となる新種であることが明らかとなった。いのにを名前に持つ変な鉱物であるが,名前の付け方が命名規約で決まってしまっているのでいかんともしがたい。

見た目と名前のミスマッチはしばしば思いこみを誘い,せっかくのお宝を見過ごすことがある。ストロンチウム緑簾石を例に挙げてみよう。

愛媛大学に保管してあった古い標本から「穴内鉱山長川原坑,紅簾石,チンゼン斧石」とラベリングされた試料がみつかった。見たところ,確かに「紅簾石」である。しかし,何となく気になって調べてみたところ,なんとこの「紅簾石」は新鉱物:ストロンチウム「緑簾石」そのものであった。そして,この標本にはもう一つのラベルがあり,「標本玉手箱」と書かれていた。「標本玉手箱」は益富地学会館が鉱物趣味の普及の一環として会員に配布している標本である。つまり,新鉱物はそれとは気づかれずに昔にすでに配布されていたことになる。その標本を手に入れた人は,その見た目から疑いもなく紅簾石だと思っただろう。しかし,一度そのように思ってしまうと改めて調べてみるきっかけはなかなか訪れないもので,まさに開けてびっくり玉手箱である。

ストロンチウム緑簾石を見ただけでそれと鑑定するのは難しいが,穴内鉱山産に限っては産状である程度鑑定ができる。鳳ノ森坑のような角れき状集合体中の結晶は組成不均質が大きく,すべてが本鉱ではなく,ストロンチウム紅簾石と複雑に累帯をなしている。一方で,長川原坑のもの,特にチンゼン斧石脈中の放射状集合は,組成が比較的均質で,そのほとんどはストロンチウム緑簾石であった。鳳ノ森坑のものは生成後に変質を受けているのに対し,長川原のものは初生的なのだろう。確実にストロンチウム緑簾石といえる標本を手に入れるためには産状も含めた鑑定が重要である。

 Posted by at 11:19 PM

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