物性研究所 低温液化室
Cryogenic Service Lab. ISSP
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低温技術情報

低温技術関連本の紹介

以下に低温技術に関する本を紹介します。所内に限って貸出しますので、興味のある方は液化室までご連絡ください。

過去に低温液化室から発行した「クライオスタット等低温技術資料」をpdfファイル化しました。低温技術の資料としてお役立て下さい。

フラッシュロスについて

ヘリウム4の飽和蒸気圧曲線状の物性
温度(K) 蒸気圧(MPa) 比体積(リットル/kg)   比エンタルピー(kJ/kG)   蒸発潜熱(kJ/kg) 定圧比熱(kJ/kg/K)        
    液体 気体 液体 気体   液体 気体      
T P V_l V_g h_l h_g L C_l C_g C_l/L ∫C/LdT 1気圧まで下げたときの体積残量
4.1 0.09 7.856 66.84 -5.52 15.523 21.042 4.51 9.099 0.214333    
4.2 0.099 7.971 60.63 -5.036 15.512 20.548 4.88 9.631 0.237493    
4.224 0.101325 8.00128 59.20663     20.416 4.979008   0.243878 0 1
4.3 0.1087 8.1 55.01 -4.521 15.458 19.978 5.322 10.279 0.266393 0.018535 0.969504
4.4 0.119 8.244 49.88 -3.968 15.353 19.321 5.863 11.085 0.303452 0.045174 0.926714
4.5 0.1299 8.407 45.18 -3.374 15.189 18.562 6.545 12.121 0.352602 0.075519 0.879866
4.6 0.1416 8.595 40.084 -2.728 14.952 17.68 7.44 13.509 0.420814 0.110779 0.827796
4.7 0.1539 8.817 36.77 -2.019 14.623 16.642 8.68 15.473 0.521572 0.152861 0.768765
4.8 0.167 9.086 32.92 -1.228 14.174 15.402 10.534 18.475 0.683937 0.205018 0.700074
4.9 0.1808 9.427 29.19 -0.324 13.552 13.875 13.64 23.641 0.983063 0.273412 0.616701
5 0.1954 9.894 25.47 0.762 12.664 11.902 19.937 34.432 1.675097 0.371718 0.508092

熱の出入り及び外部仕事のない過程であるから、エンタルピーが保存される。

はじめの状態:液体M(kg)と気体m(kg)が温度T、圧力Pの状態にあった。
圧力が減少して、
終わりの状態:液体M'(kg)、気体m'(kg)、温度T'、圧力P'になった。

温度Tでの液体。気体の比エンタルピーをH、h温度T'でのそれをH'、h'とすると、
エンタルピーが保存するということは、

H・M+h・m=H'・M'+h'・m'

またヘリウムの総領は変わらないから

M+m=M'+m' この二つの式を解けばいい。

ただし、このように考えられるのは、はじめの状態と終わりの状態のいずれの場合も、
液体と気体がすべて同じ温度になっている場合だけ。
実際は容器の体積が一定だから膨張した気体は容器の外に逃げてしまう。
この時の熱の出入りをどのように扱うかは少し考えなければならない。
最も簡単で、たぶんそんなに間違っていないと思われるのは、
減圧によっておこる蒸発の潜熱は残りの液体を冷やすことだけに使われるという考え方。


このときは、上の式で
はじめの状態:液体M、気体なし
終わりの状態:液体M-dM、気体dM
とすればいい。ただし温度の変化は小さいと考える。
すると
HM=H’・(M-dM)+h’・dM
これを変形すると
dM/M=(H-H’)/(h’-H’)
ここで
h’-H’= L
H-H’=(dH/dT)・dT=C・dT
(Lは蒸発潜熱、Cは液体の等圧比熱
という関係を使うと
dM/M=(C/L)・dT
となる。
これを積分すれば
ΔM/M=∫(C/L)・dT
液体の減少分がわかる。
上の表でその計算をした

例えばP=0.1539MPa(液温4.7K)から大気圧(0.1013MPa)(液温4.22K)まで圧力をさげると、
約15%の液体が気体に変わることになる
ここでもう一つ重要なことは、比重の変化。
ヘリウムの比重はかなり温度変化し、温度が高いと膨らんでいる。
上の計算で求まるのはヘリウムの質量変化であるが、実際に液面計で測るのはむしろ体積。
減圧によって温度が下がると密度が増えるので体積の減少はより大きくなる。
これは比体積の補正をすればいい。
上の例で言えば、4.7Kから4.22Kまでさげたときに85%が液体で残るが
密度が約10%増えるから、液体の体積ははじめの77%にまで減ってしまうことになる。

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