2次元場に固定された配向分子の反応

(東大物性研)吉信淳,山下良之,常行真司,赤木和人


1.シリコン(100)(2x1)表面における配向有機分子の反応
Si(100)(2x1)表面の配向分子に関しては、1,4シクロヘキサジエンの分子間相互作用をSTMを用いて詳細に検討した。同じ向きにダイマーサイトに一つとびに吸着した場合は,分子間の斥力を感じることなく吸着する。2個の分子が最近接サイトに同じ向きに傾いて吸着する場合はお互いに反発しあい、分子の高さに上下が生じることなどが分かった。飽和量吸着させた1,4シクロヘキサジエン単層膜への化学反応(塩素分子、1,3ブタジエン、 1,3シクロヘキサジエンなど)を、常温・超高真空下で行なったが、現在のところ明らかな付加反応は観測されなかった。今後反応条件を探索することが必要である。
2.高分解能光電子分光用電子分光器の導入
H12年度の研究費で導入した高分解能電子分光器の調整を済ませ、超高真空実験装置を高エネ研PFに持ち込みデータの収集を行なった(2001年2月)。高分解能内殼光電子分光において、期待していた分解能が得られた.例えば,Si2p領域では,現在世界最高と見なされているスウェーデンのグループと同等かそれ以上の質の高いスペクトルを得ることに成功した.これを武器に配向分子系の界面結合や電子状態の詳細を解明したい.現在、データを解析中である。
3.理論班との共同研究
グループ内の理論家とも頻繁に議論を行なった.具体的には,いくつかのコンフォメーションをとりうるシクロヘキセン/Si(100)(2x1)系の電子状態とSTM像を第1原理計算によって行い,実験と比較した.又,吸着1,4シクロヘキサジエン系への付加反応について,理論的に反応経路とエネルギーを予測した.現在共著論文の準備を進めている。


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